桜舞う季節まで 推しと死ぬまでにしたいこと

「神様、死ぬ前にどうか私のねがいを聞いてください。どうか、どうか――推しを助けてからあの世に逝かせてください」
 水沢美羽は願った。
 卒業式の日から中学三年の春先にタイムリープした美羽は推しである元子役俳優の久世流希亜(くぜるきあ)に接触する。
「私は、卒業式の日に死ぬんだ。それまで、あなたの時間を毎日一時間だけ私に売ってくれない? 推し活をしたいの」
 と提案する。
 流希亜は子役時代、有名女優である母親が不倫をして、父親がその相手を刺したことで泥沼離婚を経験する。
 子供の頃はそのことでいじめに遭った。引っ越した先で優しくしてくれたのが雨下美和だった。
 美和は中学三年の時に学校で自殺をした。
 流希亜は幼なじみが自分のせいで自殺したことで、中学校に居場所がなくなっていた。
 亡くなった雨下美和のラインに既読がつかないことをわかりながらも何回もメッセージを送っていた。
 お金で繋がりたくないと思った流希亜。
「じゃあ、美和の代わりにラインの返信をしてほしい」
 二人だけの秘密ができた。まるでウソの恋人。ウソ恋が始まる。
 美羽は母子家庭でいつもアザがあった。美羽のことを助けたいと思うようになる。
 
 
 世界を終わらせることは簡単なことなのかもしれない。
 終わらせないことのほうが難しいのかもしれない。
 少し待てば世界が変わって見えるかもしれない。

 今までの自分から卒業しよう。
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