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老いを遅らせるグミ
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「私、この美しさをずっと保ちたいの」
今は若いけれど、14歳は永遠じゃない。20歳くらいまでならばいいかもしれないけれど、25才を過ぎたらお肌の曲がり角で、あとはどんどん歳を取るだけ。そんなこと、嫌だ。でも、不老なんて普通不可能だ。美琴は中学二年生だが、恐ろしいほどの美意識を持っている。歳を取って老化していくことが許せない、そう思っていた。しわしわの手や顔になること。しみだらけの肌になることが本当に嫌だった。美琴は強い美意識を持って、たそがれどきに手を合わせてねがった。
「いらっしゃい」
「ここは何のお店?」
美琴は驚いて店内をゆっくり見て回った。美琴は突然現れたお店に驚きを隠せない。美琴は情報にうといほうなので、うわさや都市伝説には詳しくなかった。
「君のなりたいを手に入れることができる不思議なお店、夕陽屋さ」
夕陽が丁寧にエスコートしながら店内を案内する。
「私は美琴。14歳よ。若い姿のままでいたいの。不老を望んでいるの」
「君のまわりが歳を取っても、君だけ若くてもいいのか?」
「永遠の14歳っていいと思わない?」
「段差になっているから、そこ、気をつけて。不老になっても不死じゃないけれど、大丈夫?」
いつになく夕陽は親切だ。
「優しいのね。不死は望まない。不老だけでいいの」
「意外とかしこいな。不死ってどんなに痛い状況や苦しい状況でもずっと生きなければいけないから、生き地獄ほど苦しいものはないんだよ」
「前に漫画で見たことがあるけれど、バラバラになっても生きるとか、そういう生き方はしたくないから」
「このグミがおすすめだよ。1個10円だよ。これを食べたら老化がおそくなるといわれている美容エキスが入っているんだ。不老の実からとった特別なエキスだよ。味は、そうだなぁ……オレンジに似ているかもしれないよ」
「きれいなグミだね。老化がおそくなるの?」
グミの裏側の説明を読もうとしたが、美琴には字が小さすぎて読めないようだった。
「全く歳をとらないわけではないんだけどね。かなり今の状態を保つことができるよ。これ以上しわもしみもしばらくは増えることはないし、白髪もしばらくは増えることはないさ」
「何を言っているの? しみもしわも白髪も私にはまだまだ先のはなしじゃない?」
少し間を置いて、夕陽は答える。
「そうかな?」
夕陽は否定も肯定もすることもなく、美琴に優しいまなざしを向けた。
歳を重ねることは急に老けるというわけではないので、今日明日ですぐにわかるものではなかったが、美琴は一切成長しなくなっていた。身長も顔立ちも変わらない。これは、とても愉快な事実だ。美琴は女としての一番大切な美貌を手に入れたとその時は満足していた。
♢♦♢♦♢
美琴が帰宅すると夕陽と白い綿の妖精のふわわが話し始めた。
「本当に14歳のままだったら、20歳になっても、見た目が若すぎてお酒を出してもらえないかもしれないし、成人という区切りの20歳以上じゃなければ駄目なこともたくさんあるのにな」
真っ白なふわわに、夕方の光が優しくふりそそぐ。
「美琴という女性は自分の姿を若いと思い込んでいるみたいだよね。本当はしみもしわもある老眼の80歳のおばあちゃんなのに、14歳だと思い込んでいたふぁ」
ふわわが夕陽を見上げながら会話をはじめる。
「夕陽屋は平等であるお店だからね。80歳から成長を遅くしたんだ。俺は昔、ばあちゃん子だったんだよな。だから、ほっとけなくてな。認知症だとしても、希望はちゃんとかなえるよ、それが仕事だから」
仕事をまじめにこなす夕陽は今日もプロの仕事人だ。そして、ふわわはあくびをした。
今は若いけれど、14歳は永遠じゃない。20歳くらいまでならばいいかもしれないけれど、25才を過ぎたらお肌の曲がり角で、あとはどんどん歳を取るだけ。そんなこと、嫌だ。でも、不老なんて普通不可能だ。美琴は中学二年生だが、恐ろしいほどの美意識を持っている。歳を取って老化していくことが許せない、そう思っていた。しわしわの手や顔になること。しみだらけの肌になることが本当に嫌だった。美琴は強い美意識を持って、たそがれどきに手を合わせてねがった。
「いらっしゃい」
「ここは何のお店?」
美琴は驚いて店内をゆっくり見て回った。美琴は突然現れたお店に驚きを隠せない。美琴は情報にうといほうなので、うわさや都市伝説には詳しくなかった。
「君のなりたいを手に入れることができる不思議なお店、夕陽屋さ」
夕陽が丁寧にエスコートしながら店内を案内する。
「私は美琴。14歳よ。若い姿のままでいたいの。不老を望んでいるの」
「君のまわりが歳を取っても、君だけ若くてもいいのか?」
「永遠の14歳っていいと思わない?」
「段差になっているから、そこ、気をつけて。不老になっても不死じゃないけれど、大丈夫?」
いつになく夕陽は親切だ。
「優しいのね。不死は望まない。不老だけでいいの」
「意外とかしこいな。不死ってどんなに痛い状況や苦しい状況でもずっと生きなければいけないから、生き地獄ほど苦しいものはないんだよ」
「前に漫画で見たことがあるけれど、バラバラになっても生きるとか、そういう生き方はしたくないから」
「このグミがおすすめだよ。1個10円だよ。これを食べたら老化がおそくなるといわれている美容エキスが入っているんだ。不老の実からとった特別なエキスだよ。味は、そうだなぁ……オレンジに似ているかもしれないよ」
「きれいなグミだね。老化がおそくなるの?」
グミの裏側の説明を読もうとしたが、美琴には字が小さすぎて読めないようだった。
「全く歳をとらないわけではないんだけどね。かなり今の状態を保つことができるよ。これ以上しわもしみもしばらくは増えることはないし、白髪もしばらくは増えることはないさ」
「何を言っているの? しみもしわも白髪も私にはまだまだ先のはなしじゃない?」
少し間を置いて、夕陽は答える。
「そうかな?」
夕陽は否定も肯定もすることもなく、美琴に優しいまなざしを向けた。
歳を重ねることは急に老けるというわけではないので、今日明日ですぐにわかるものではなかったが、美琴は一切成長しなくなっていた。身長も顔立ちも変わらない。これは、とても愉快な事実だ。美琴は女としての一番大切な美貌を手に入れたとその時は満足していた。
♢♦♢♦♢
美琴が帰宅すると夕陽と白い綿の妖精のふわわが話し始めた。
「本当に14歳のままだったら、20歳になっても、見た目が若すぎてお酒を出してもらえないかもしれないし、成人という区切りの20歳以上じゃなければ駄目なこともたくさんあるのにな」
真っ白なふわわに、夕方の光が優しくふりそそぐ。
「美琴という女性は自分の姿を若いと思い込んでいるみたいだよね。本当はしみもしわもある老眼の80歳のおばあちゃんなのに、14歳だと思い込んでいたふぁ」
ふわわが夕陽を見上げながら会話をはじめる。
「夕陽屋は平等であるお店だからね。80歳から成長を遅くしたんだ。俺は昔、ばあちゃん子だったんだよな。だから、ほっとけなくてな。認知症だとしても、希望はちゃんとかなえるよ、それが仕事だから」
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