32 / 48
【大きなカブとひき肉の煮物】②
しおりを挟む
「まじでうまい、この煮つけ。おふくろの味みたいな感じだよな。って俺はおふくろがいないんだけどさ。この店、来たいと思って来れる店じゃないんだろ?」
「わかりますか?」
意外と話はうまく進むかもしれないと少し皆が期待した。
「入り口に過去や未来にいけるドリンクありますなんて書いてある店、普通じゃないだろ」
「そうです、時の国の住人が開店した不思議なレストランなのです」
「でも俺、音楽活動するんで、ここで働くことは無理だぞ」
「ここで働くのではなく、時の国の夜の王の仕事をしてみないかとスカウトしています」
「なんで俺? というか夜の王ってなんだよ?」
驚いた夜叉が聞いてくる。
「あなたには特別な力が宿っているからです。時をつかさどる仕事を時の国でしないかとお誘いしています」
「マジか、俺はたしかに特別な人間だってことは自覚しているけどな」
中二病のような発言をするが、たしかにこの男は特別な力があるようなので彼を否定するところではない。
「でも、その力は時の国でないと生かせません。我々の国の王の一人になって仕事をしてみませんか?」
「ヘッドハンティングってやつか? でも、俺には音楽があるしな」
「うだうだうるさいわね。音楽活動をしながらでも構わないから、手伝いをできるかどうかの確認よ。とりあえず能力的には候補だから、今後のあなたの態度を観察して決定するけどね」
まひるがいらいらしたらしく、いつの間にか18歳の姿に戻っていた。
「あれ? 小学生だったのに、急に色っぽいねーちゃんに変身してるのか?」
夜叉が驚いて重心を後ろにしたので、椅子から落ちそうになった。少々まぬけなところがあるらしい。
「いっしょに仕事をするかどうか、考えておきなさい。内容は説明するし、見学だけすることも可能よ。最近、一時入国制度を新設したから」
何言ってるのかわからない、という顔をしていたが、目の前の色気のあるまひるに心を奪われた夜叉が
「ねーちゃんと一緒に働けるならば、俺、夜の王ってやつを考えてやってもいいぞ」
なぜか上から目線の承諾だった。
「来たいと思ったときに僕たちを心の中でよんでください」
「候補じゃなくなったら、和食も食べられないってことか?」
「そうなりますね」
「ねーちゃんにも会えないってことか?」
「やっぱりこいつ却下だわ」
腰に手を当てながら、まひるが怒りをあらわにする。
「俺、命令されると胸がきゅんとするっていうか……ねーちゃんみたいな人、すげー好きだ」
「私は、ねーちゃんじゃなくて、まひる。普段は10歳やっているけれど、本当は18歳なのよ」
「いいな、そういうところも大好き。ギャップ萌えみたいな感じでさ」
まひるとアサトさんは前途多難なこの男を見つめながらため息をついた。
「ねーちゃんのことは割とタイプだけどさ、やっぱりこの国で音楽を成し遂げることが俺の使命ってやつだと思うんだよな。全国のファンも待っているしな」
「音楽は売れ続けるとは限りませんよ。不安定でも先行きが不安ではないのですか? 未来を見たくないのですか?」
「未来はたくさんあるんだろ。成功する未来もあれば失敗する未来もある。正解なんてないんだろ?」
馬鹿そうな顔をしているのに、正論を述べるあたりがやっぱり王の資格を持つ器ということだろうか? 少し納得する。
「あなたの言う通りです」
「じゃあ俺は音楽をやり続けるよ。成功しようが失敗しようがかまわねぇ」
「では、時の国の王の一人になることは拒否するということでしょうか?」
「残念だけど、王になったら片手間で音楽活動なんてできね-だろ」
「あなたは日本人の中でも能力が高いので、是非我々が困った時には力をかしてください。今日の料理代は無料にします。王にならなくてもあなたの力は時の国では役立つと思います」
「まあ、音楽が一番だけどさ、ねーちゃんに会えるならば手伝う程度ならば考えてやってもいいぞ。もう一杯かぶの煮つけおかわり。白飯もつけてくれよ」
「あなた、本当にずうずうしいわね。神経太いタイプよね。遠慮という言葉を知らないというか……」
まひるがあきれ顔だ。
「では、日本のお米にみりんを少々入れておいた白米があるので、召し上がっていってください」
「おう、気が利くじゃねーか。みりんなんて入れてうまいのか?」
「つやを出すためにみりんを入れています。調理酒を入れるときもあります。一工夫ですよ」
あつあつで、つやつやの白米を間の前に香りを堪能する夜叉は米粒にキスをして「いただきます」というと、あっという間に平らげたようだ。
「ごちそうさん」食す時間はわずかだったと思う。
食欲旺盛な若い男性らしいが、痩せている体を見ると大食いには見えないし、普段はあまり食べていないのかもしれない。痩せの大食いというやつなのかもしれない。かと言って、黒羽ほどの豪快さはないが。
「わかりますか?」
意外と話はうまく進むかもしれないと少し皆が期待した。
「入り口に過去や未来にいけるドリンクありますなんて書いてある店、普通じゃないだろ」
「そうです、時の国の住人が開店した不思議なレストランなのです」
「でも俺、音楽活動するんで、ここで働くことは無理だぞ」
「ここで働くのではなく、時の国の夜の王の仕事をしてみないかとスカウトしています」
「なんで俺? というか夜の王ってなんだよ?」
驚いた夜叉が聞いてくる。
「あなたには特別な力が宿っているからです。時をつかさどる仕事を時の国でしないかとお誘いしています」
「マジか、俺はたしかに特別な人間だってことは自覚しているけどな」
中二病のような発言をするが、たしかにこの男は特別な力があるようなので彼を否定するところではない。
「でも、その力は時の国でないと生かせません。我々の国の王の一人になって仕事をしてみませんか?」
「ヘッドハンティングってやつか? でも、俺には音楽があるしな」
「うだうだうるさいわね。音楽活動をしながらでも構わないから、手伝いをできるかどうかの確認よ。とりあえず能力的には候補だから、今後のあなたの態度を観察して決定するけどね」
まひるがいらいらしたらしく、いつの間にか18歳の姿に戻っていた。
「あれ? 小学生だったのに、急に色っぽいねーちゃんに変身してるのか?」
夜叉が驚いて重心を後ろにしたので、椅子から落ちそうになった。少々まぬけなところがあるらしい。
「いっしょに仕事をするかどうか、考えておきなさい。内容は説明するし、見学だけすることも可能よ。最近、一時入国制度を新設したから」
何言ってるのかわからない、という顔をしていたが、目の前の色気のあるまひるに心を奪われた夜叉が
「ねーちゃんと一緒に働けるならば、俺、夜の王ってやつを考えてやってもいいぞ」
なぜか上から目線の承諾だった。
「来たいと思ったときに僕たちを心の中でよんでください」
「候補じゃなくなったら、和食も食べられないってことか?」
「そうなりますね」
「ねーちゃんにも会えないってことか?」
「やっぱりこいつ却下だわ」
腰に手を当てながら、まひるが怒りをあらわにする。
「俺、命令されると胸がきゅんとするっていうか……ねーちゃんみたいな人、すげー好きだ」
「私は、ねーちゃんじゃなくて、まひる。普段は10歳やっているけれど、本当は18歳なのよ」
「いいな、そういうところも大好き。ギャップ萌えみたいな感じでさ」
まひるとアサトさんは前途多難なこの男を見つめながらため息をついた。
「ねーちゃんのことは割とタイプだけどさ、やっぱりこの国で音楽を成し遂げることが俺の使命ってやつだと思うんだよな。全国のファンも待っているしな」
「音楽は売れ続けるとは限りませんよ。不安定でも先行きが不安ではないのですか? 未来を見たくないのですか?」
「未来はたくさんあるんだろ。成功する未来もあれば失敗する未来もある。正解なんてないんだろ?」
馬鹿そうな顔をしているのに、正論を述べるあたりがやっぱり王の資格を持つ器ということだろうか? 少し納得する。
「あなたの言う通りです」
「じゃあ俺は音楽をやり続けるよ。成功しようが失敗しようがかまわねぇ」
「では、時の国の王の一人になることは拒否するということでしょうか?」
「残念だけど、王になったら片手間で音楽活動なんてできね-だろ」
「あなたは日本人の中でも能力が高いので、是非我々が困った時には力をかしてください。今日の料理代は無料にします。王にならなくてもあなたの力は時の国では役立つと思います」
「まあ、音楽が一番だけどさ、ねーちゃんに会えるならば手伝う程度ならば考えてやってもいいぞ。もう一杯かぶの煮つけおかわり。白飯もつけてくれよ」
「あなた、本当にずうずうしいわね。神経太いタイプよね。遠慮という言葉を知らないというか……」
まひるがあきれ顔だ。
「では、日本のお米にみりんを少々入れておいた白米があるので、召し上がっていってください」
「おう、気が利くじゃねーか。みりんなんて入れてうまいのか?」
「つやを出すためにみりんを入れています。調理酒を入れるときもあります。一工夫ですよ」
あつあつで、つやつやの白米を間の前に香りを堪能する夜叉は米粒にキスをして「いただきます」というと、あっという間に平らげたようだ。
「ごちそうさん」食す時間はわずかだったと思う。
食欲旺盛な若い男性らしいが、痩せている体を見ると大食いには見えないし、普段はあまり食べていないのかもしれない。痩せの大食いというやつなのかもしれない。かと言って、黒羽ほどの豪快さはないが。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
【完結】豆狸の宿
砂月ちゃん
児童書・童話
皆さんは【豆狸】という狸の妖怪を知っていますか?
これはある地方に伝わる、ちょっと変わった【豆狸】の昔話を元にしたものです。
一応、完結しました。
偶に【おまけの話】を入れる予定です。
本当は【豆狸】と書いて、【まめだ】と読みます。
姉妹作【ウチで雇ってるバイトがタヌキって、誰か信じる?】の連載始めました。
宜しくお願いします❗️
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
宇宙人は恋をする!
山碕田鶴
児童書・童話
私が呼んでいると勘違いして現れて、部屋でアイスを食べている宇宙人・銀太郎(仮名)。
全身銀色でツルツルなのがキモチワルイ。どうせなら、大大大好きなアイドルの滝川蓮君そっくりだったら良かったのに。……え? 変身できるの?
中学一年生・川上葵とナゾの宇宙人との、家族ぐるみのおつきあい。これは、国家機密です⁉
(表紙絵:山碕田鶴/人物色塗りして下さった「ごんざぶろう」様に感謝)
【第2回きずな児童書大賞】奨励賞を受賞しました。ありがとうございます。
生まれ変わりは嫌われ者
青ムギ
BL
無数の矢が俺の体に突き刺さる。
「ケイラ…っ!!」
王子(グレン)の悲痛な声に胸が痛む。口から大量の血が噴きその場に倒れ込む。意識が朦朧とする中、王子に最後の別れを告げる。
「グレン……。愛してる。」
「あぁ。俺も愛してるケイラ。」
壊れ物を大切に包み込むような動作のキス。
━━━━━━━━━━━━━━━
あの時のグレン王子はとても優しく、名前を持たなかった俺にかっこいい名前をつけてくれた。いっぱい話しをしてくれた。一緒に寝たりもした。
なのにー、
運命というのは時に残酷なものだ。
俺は王子を……グレンを愛しているのに、貴方は俺を嫌い他の人を見ている。
一途に慕い続けてきたこの気持ちは諦めきれない。
★表紙のイラストは、Picrew様の[見上げる男子]ぐんま様からお借りしました。ありがとうございます!
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】
紫紺(紗子)
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※番外編を公開しました(10/21)
生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
※4月18日、完結しました。ありがとうございました。
黄金のサメは悪夢を照らす
黒猫和輝
児童書・童話
深い深い暗黒の海の底に一匹のサメがいました。
サメはとても賢く、とても弱いサメでした。
哀れに思った海の神様はサメを祝福されました。
けれど、祝福されたサメは人間達から追われました。
遠い遠い海の果てに一人のマーメイドがいました。
マーメイドは人間を助けたので孤独になりました。
哀れに思った海の神様はマーメイドに贈り物をしました。
けれど、マーメイドはひとりぼっちでした。
これは、サメと人魚と人間が広い海で出会った物語です。
月にのぼった野ねずみの一家~シャルル・ド・ラングシリーズ2
ねこうさぎしゃ
児童書・童話
野ねずみの一家の主婦・コレットはある日、白昼に浮かぶ白い月の中に亡き息子ギィの姿を見つけ仰天する。これは奇跡だと確信し、夫アルマンとギィの双子の弟ジェラルドと共にギィに会いにいく旅に出かける。だが白い月はとても遠くて途中眠っている間に夜になり、白い月は消えてしまう。そんな時、人間のテリトリーであるはずの公園で優雅にティータイムを楽しむ一匹の猫を見つける。その猫はタキシードを着てシルクハットを被り、金の石のついたステッキを持った不思議な猫だった……出逢った者たちを幸せに導く不思議な猫・シャルル・ド・ラングの物語第二弾。
【完結】宝石★王子(ジュエル・プリンス) ~イケメン水晶と事件解決!?~
みなづきよつば
児童書・童話
キラキラきらめく、美しい宝石たちが……
ニンゲンの姿になって登場!?
しかも、宝石たちはいろんな能力をもってるみたいで……?
宝石好き&異能力好きの方、必見です!!
※※※
本日(2024/08/24)完結しました!
よかったら、あとがきは近況ボードをご覧ください。
***
第2回きずな児童書大賞へのエントリー作品です。
投票よろしくお願いします!
***
<あらすじ>
小学五年生の少女、ヒカリはワケあってひとり暮らし中。
ある日、ヒカリのもっていたペンダントの水晶が、
ニンゲンの姿になっちゃった!
水晶の精霊、クリスと名乗る少年いわく、
宝石王子(ジュエル・プリンス)という宝石たちが目覚め、悪さをしだすらしい。
それをとめるために、ヒカリはクリスと協力することになって……?
***
ご意見・ご感想お待ちしてます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる