novelmber2022(仮)

麻木香豆

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もしも

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「荷物無いね。強盗にでもあったんか」
男は慎重に運転しているようだ。こんな細やかな気遣いは武臣にはなかった、と自分を蹴って捨てた男と比較してしまうアスミ。

「……あの、お名前聞いていいですか」
「聞く必要なんてあるん?」
「聞いておきたいです」
「そか」
男は鼻で笑った。なぜ笑うのかわからなかった。

「まず君は」
「アスミ。音羽アスミ」
「アスミ……ちゃんでいいかな? 年下っぽいし」
「はい」
「高校生やったらここまで連れてきた大人は逮捕されるやろ、だから大学生かな」
アスミは童顔な故に高校生に間違わられる。何度か大学の午後からの授業で駅の校内にいたら補導されたことがあった。
だからその後髪の毛を染め化粧もした。そしてら武臣と出会った。
それでも高校生がメイクしてるだけと武臣に笑われたことも思い出した。

「やっぱり高校生に見えますか」
「大学生か高校生か迷ったけどね。もしも高校生やったら僕も途中警察の検問に引っ掛かったら捕まってしまうやろ」
そんな理由か、とアスミはふふっと小さく笑った。

「笑った、ようやく」
「……で、あなたは」
男はアスミを見ず言った。

「26歳、フリーター、兼山大佑。ダイでいいよ」
「ダイさん」
「ダイでええって」
「……ダイ、なんであそこに来たの」
「あ、抜けた。ここからわかる」
とダイはアスミの返答をせず右にハンドルを切るとアスミも見覚えのある景色だ、と照明の多い通りにホッとした。
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