33 / 50
第三章
第32話
しおりを挟む
朝が来た。目の前で妻が寝取られるというよくある成人誌の漫画のジャンルの一つを死んでから経験するとは思わなかった。
おまけに明かりをつけたままで鮮明にくっきりと見ることになり、無修正のアダルトビデオを見せつけられている状態だった。
未亡人の妻と、自分の教え子という複雑な関係性が何ともいえない。
ああ、もう成仏したい。スケキヨも残ることなく成仏しちまったし、なんで俺は成仏できないんだ。
やり残したこと書いたけどもういいよ、手放すからこのまま成仏させてくれ。
結局あれから二人は日を跨ぐまで重なり合い、その後シャワーを浴びに行って寝室に行ってからまた行為をしていたようだ。お陰で俺は一睡もしてない。
あ、三葉……。ネックレスしてるな。かと言って乗り移る気力もない。朝のお供え、そして掃除。
入れ替わりに倫典がやってきた。三葉が奥の台所に行ったのを確認して俺の仏壇の前に座った。奴には俺の姿は見えないだろう。絶望し切ってやつれている俺の顔なんて見えないだろう。
「昨晩はすいませんでした。僕の中でものすごく嫉妬心というか、なんというか手放したくない……僕のものだって見せつけてしまって」
……。
「高橋くん、明後日の朝に仕事前に来るよう連絡しました。結構無理矢理だったけど。そうすればそのまま高校に行ける。一応いきなり会うのはあれだから今晩少し会うけどね」
色々とありがとう、というしかないのか。他の誰かに手を借りないとできないからな。
あの時もそうだった。事故で入院した時。下半身は全く動かず移動も車椅子、トイレや風呂も看護師さんに手伝ってもらわなければならなかった。
だけど俺はなんでも自分でやってやる! という気持ちが強くて本当にできないことは仕方なくだが、やれることを少しずつ増やそうと焦ったんだよな。
借りるときは本当に借りなくては、力を。そうじゃないとまたヘマ起こして、やりきれずに成仏なんてできない。このチャンスはもう二度とないかもしれないのだから。
……でもやはり昨日の倫典と三葉のことはかなりしんどくのしかかっている。
スケキヨが今いないから少しここから抜け出すってのも無理だな。
「倫典さん……昨日の写真はどうすればいいの? プリントアウトしたけど」
三葉……相変わらず君は綺麗だ。他の男に抱かれている君も綺麗だったよ……。
「あ、なんかいい写真だなぁと思って。これも遺影にして見たらどうかな」
「いいの見つけてくれてありがとう。なかなか見つからなくて適当に選んじゃったけどこれはやめとく」
えっ、嫌だよ今のより全然いいじゃん。
「だってこの写真、すごくかっこいいんだから。写真縦に飾っておくね……照れてカッコつけちゃってる和樹さんもカッコいい」
……三葉。その横で微笑むお前も綺麗だ。でも照れ隠しってのはバレていたか。
「わかったよ、言っとくよ」
「言っとく?」
「あ……なんでもない」
おいおい、倫典。気をつけろよ。でも俺が倫典とかに乗り移れたら普通に会話できる可能性を三葉に知ってもらいたい……。
「今日明日は家に戻る。明後日朝、大島先生の部下連れてここにくる」
「わかった……また連絡してね」
なんだよ、またキスして。この二人はっ、あんだけくっついてたくせに……って俺もそうか。またいつでも会えるのに、名残惜しいこともたくさんあったなぁ。
恋人になりたてってこんな風だったか? ああ。
おとなげないな、俺は。幸せになって欲しいんだろ? 三葉には。なんだかウジウジしてる俺が情けないな。
高校行けたら竹刀振り回してストレス発散するしかないなぁ。今まで俺よりも体格小さいものにしか乗り移ってないから高橋だったら……細いが身長は俺よりもある。バスケもやっていたらしいから筋肉量はいいだろう、それに少し俺より若い。さてどう動かすか、この手足を。今からワクワクしてきた。
そういえば三葉は今日は休みなのか。スケキヨがいないから様子が見に行けないんだけどな。……その間にあと何をやり残したか思い出す。若菜から電話はまだ来ない。早く電話したい。姿を見たい。
あとはお金……相手の懐事情よりもこっちの方もしっかりしておかないとなぁ。俺のへそくり、小銭貯金も使って欲しい。
あぁーっ、次から次へとやりたいことが増えちゃってるじゃんかよ。これだといつまで経っても成仏できない。これもある意味苦行か? 俺は何かしたのか? 天国じゃなくて地獄のような気もする。
スケキヨもあのばあちゃんもスッて消えちゃったし、俺だけこんなにもだらだらこの世に残るのもしんどい。なんでこんなことさせるんだ。
そうだ、この骨を早く……墓に埋めてくれたらいいんだろうな。あぁ、墓問題も……。どこに建てるか、だろ?
あーいま考えたら次々と出てくるだけだ。考えるのをやめよう。
……。
ダメだ、大人しくできない。って三葉、きてくれ……。
パリん……
「キャァっ」
三葉?? なんだ今のガラスの割れたような音も……。ドタドタって聞こえたが、お前の嫌いな虫とかいたか。何が起きたんだ?
おまけに明かりをつけたままで鮮明にくっきりと見ることになり、無修正のアダルトビデオを見せつけられている状態だった。
未亡人の妻と、自分の教え子という複雑な関係性が何ともいえない。
ああ、もう成仏したい。スケキヨも残ることなく成仏しちまったし、なんで俺は成仏できないんだ。
やり残したこと書いたけどもういいよ、手放すからこのまま成仏させてくれ。
結局あれから二人は日を跨ぐまで重なり合い、その後シャワーを浴びに行って寝室に行ってからまた行為をしていたようだ。お陰で俺は一睡もしてない。
あ、三葉……。ネックレスしてるな。かと言って乗り移る気力もない。朝のお供え、そして掃除。
入れ替わりに倫典がやってきた。三葉が奥の台所に行ったのを確認して俺の仏壇の前に座った。奴には俺の姿は見えないだろう。絶望し切ってやつれている俺の顔なんて見えないだろう。
「昨晩はすいませんでした。僕の中でものすごく嫉妬心というか、なんというか手放したくない……僕のものだって見せつけてしまって」
……。
「高橋くん、明後日の朝に仕事前に来るよう連絡しました。結構無理矢理だったけど。そうすればそのまま高校に行ける。一応いきなり会うのはあれだから今晩少し会うけどね」
色々とありがとう、というしかないのか。他の誰かに手を借りないとできないからな。
あの時もそうだった。事故で入院した時。下半身は全く動かず移動も車椅子、トイレや風呂も看護師さんに手伝ってもらわなければならなかった。
だけど俺はなんでも自分でやってやる! という気持ちが強くて本当にできないことは仕方なくだが、やれることを少しずつ増やそうと焦ったんだよな。
借りるときは本当に借りなくては、力を。そうじゃないとまたヘマ起こして、やりきれずに成仏なんてできない。このチャンスはもう二度とないかもしれないのだから。
……でもやはり昨日の倫典と三葉のことはかなりしんどくのしかかっている。
スケキヨが今いないから少しここから抜け出すってのも無理だな。
「倫典さん……昨日の写真はどうすればいいの? プリントアウトしたけど」
三葉……相変わらず君は綺麗だ。他の男に抱かれている君も綺麗だったよ……。
「あ、なんかいい写真だなぁと思って。これも遺影にして見たらどうかな」
「いいの見つけてくれてありがとう。なかなか見つからなくて適当に選んじゃったけどこれはやめとく」
えっ、嫌だよ今のより全然いいじゃん。
「だってこの写真、すごくかっこいいんだから。写真縦に飾っておくね……照れてカッコつけちゃってる和樹さんもカッコいい」
……三葉。その横で微笑むお前も綺麗だ。でも照れ隠しってのはバレていたか。
「わかったよ、言っとくよ」
「言っとく?」
「あ……なんでもない」
おいおい、倫典。気をつけろよ。でも俺が倫典とかに乗り移れたら普通に会話できる可能性を三葉に知ってもらいたい……。
「今日明日は家に戻る。明後日朝、大島先生の部下連れてここにくる」
「わかった……また連絡してね」
なんだよ、またキスして。この二人はっ、あんだけくっついてたくせに……って俺もそうか。またいつでも会えるのに、名残惜しいこともたくさんあったなぁ。
恋人になりたてってこんな風だったか? ああ。
おとなげないな、俺は。幸せになって欲しいんだろ? 三葉には。なんだかウジウジしてる俺が情けないな。
高校行けたら竹刀振り回してストレス発散するしかないなぁ。今まで俺よりも体格小さいものにしか乗り移ってないから高橋だったら……細いが身長は俺よりもある。バスケもやっていたらしいから筋肉量はいいだろう、それに少し俺より若い。さてどう動かすか、この手足を。今からワクワクしてきた。
そういえば三葉は今日は休みなのか。スケキヨがいないから様子が見に行けないんだけどな。……その間にあと何をやり残したか思い出す。若菜から電話はまだ来ない。早く電話したい。姿を見たい。
あとはお金……相手の懐事情よりもこっちの方もしっかりしておかないとなぁ。俺のへそくり、小銭貯金も使って欲しい。
あぁーっ、次から次へとやりたいことが増えちゃってるじゃんかよ。これだといつまで経っても成仏できない。これもある意味苦行か? 俺は何かしたのか? 天国じゃなくて地獄のような気もする。
スケキヨもあのばあちゃんもスッて消えちゃったし、俺だけこんなにもだらだらこの世に残るのもしんどい。なんでこんなことさせるんだ。
そうだ、この骨を早く……墓に埋めてくれたらいいんだろうな。あぁ、墓問題も……。どこに建てるか、だろ?
あーいま考えたら次々と出てくるだけだ。考えるのをやめよう。
……。
ダメだ、大人しくできない。って三葉、きてくれ……。
パリん……
「キャァっ」
三葉?? なんだ今のガラスの割れたような音も……。ドタドタって聞こえたが、お前の嫌いな虫とかいたか。何が起きたんだ?
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
黄昏は悲しき堕天使達のシュプール
Mr.M
青春
『ほろ苦い青春と淡い初恋の思い出は・・
黄昏色に染まる校庭で沈みゆく太陽と共に
儚くも露と消えていく』
ある朝、
目を覚ますとそこは二十年前の世界だった。
小学校六年生に戻った俺を取り巻く
懐かしい顔ぶれ。
優しい先生。
いじめっ子のグループ。
クラスで一番美しい少女。
そして。
密かに想い続けていた初恋の少女。
この世界は嘘と欺瞞に満ちている。
愛を語るには幼過ぎる少女達と
愛を語るには汚れ過ぎた大人。
少女は天使の様な微笑みで嘘を吐き、
大人は平然と他人を騙す。
ある時、
俺は隣のクラスの一人の少女の名前を思い出した。
そしてそれは大きな謎と後悔を俺に残した。
夕日に少女の涙が落ちる時、
俺は彼女達の笑顔と
失われた真実を
取り戻すことができるのだろうか。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
南町奉行所お耳役貞永正太郎の捕物帳
勇内一人
歴史・時代
第9回歴史・時代小説大賞奨励賞受賞作品に2024年6月1日より新章「材木商桧木屋お七の訴え」を追加しています(続きではなく途中からなので、わかりづらいかもしれません)
南町奉行所吟味方与力の貞永平一郎の一人息子、正太郎はお多福風邪にかかり両耳の聴覚を失ってしまう。父の跡目を継げない彼は吟味方書物役見習いとして南町奉行所に勤めている。ある時から聞こえない正太郎の耳が死者の声を拾うようになる。それは犯人や証言に不服がある場合、殺された本人が異議を唱える声だった。声を頼りに事件を再捜査すると、思わぬ真実が発覚していく。やがて、平一郎が喧嘩の巻き添えで殺され、正太郎の耳に亡き父の声が届く。
表紙はパブリックドメインQ 著作権フリー絵画:小原古邨 「月と蝙蝠」を使用しております。
2024年10月17日〜エブリスタにも公開を始めました。
ねこの戸籍
沼津平成
現代文学
路地裏にある野良猫の群れ。そのなかでカニカンは数少ないのご主人様がいる猫。カニカンとその仲間たちの愉快な冒険は、語らないと損をしてしまうようで、くすぐったいのです。新時代の現代ネコ文学、待望の作品化。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる