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第三章
第26話
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「じゃあ出かけよっか……」
俺はスケキヨの中に入り、三葉に抱き抱えられている。倫典は少し戸惑う顔をする。彼の車に乗って病院へ。
「なんか気づいたらこんな格好しててさ。普段着ない服だけど確かにスケキヨの毛がついちゃうし、いいよね」
「ま、まぁ……」
俺は出かける前に三葉に乗り移って俺が昔着ていたスエットを出して彼女のジーンズと合わせて着替えをしてからスケキヨに乗り移った。この方がいい、露出が少ない。靴もスニーカーにした。
「カジュアルな三葉さんもいいね」
「そう? これ和樹さんのだけどオーバーサイズも流行ってるし。とも君がいいっていうなら……」
「とも君?!」
「え、だめ? 私もそう言いたいな」
「う、うん。いいよ。なんだかドキッとしちゃった」
「うふふふ」
おいお前ら。後ろに4歳児、そして俺がいるっていうのにいちゃつきやがって。ん、後部座席から笑い声がする。
「美守君、どうしたの?」
「とも君も三葉さんもラブラブだなぁって」
ほら! 4歳児にそう思われてるぞ。倫典も三葉にとも君て言われただけで照れてるし。鼻の下伸ばすな、安全運転しろよな!
そして20分くらいで着いた。どうやら俺が事故で入院した頃にオープンしたばかりだから新しいし、ペットショップにしては広くて売り場以外にもペット美容室やホテルもある。犬猫以外にもウサギや鳥、ハムスターに熱帯魚や爬虫類など小さな動物園だな、こりゃ。三葉とこういうところにデートしても楽しいだろうなぁ。
「とも君、見て見て!」
動物に戯れている姿をみてるとやっぱり子供なんだなぁって。美守はモルモットと触れ合うコーナーに並んでウキウキしている。
子供がいたら休みになったら毎回ここに連れて行かれるんだろうか。周りは親子連れが目立つ。三葉はどう思っているのだろうか。俺は今スケキヨとして三葉に抱っこされていてその表情は見えない。
隣には倫典がいる。2人が美守を見ている。もうどこから見てもこの2人は夫婦のようにしか見えないだろう。
「美守君、いい笑顔ね」
「そうだね。動物が好きなのかなぁ」
「……美帆子と話したけどさ。ちょっと彼女悩んでるみたい」
「え、マリッジブルーじゃないの?」
ヘラヘラ話を聞くんじゃない。デリカシーが無さすぎる。ほら三葉が声詰まらせているぞ。少しそう言えば玄関での話が長いように感じもしたが。
「今日義理の親とも見に行くらしいんだけどさ、ほとんどあっち主導で決めていくからって愚痴ってた」
「ええーなんで親が入ってくるワケ? って多分うちの親も介入してくるだろうけど僕はそうはさせないからね」
「そうなの? とも君、今度ご家族の方とお話ししましょう。まずは仲直りしないと。いい大人同士だし、あなたもしっかり働いているじゃない」
「嫌だよ。あいつらは僕を見捨てたくせにあーだこーだ言ってくる。僕は仕事できないのに裏から手を回して周りの人を気遣わせてさ、僕の実力じゃない……今の立場は」
「見捨てるワケないいわ、自分の子供を。心配しているのよ、あなたのことを」
「……」
そうだな、倫典の親との関係もなんとかしてあげないとな。あ、美守がモルモット触って嬉しそうに微笑んでいる。
2人も気づいて手を振ると美守も喜んで手をふり返した。
「じゃあ私、受付行ってくるから。美守君よろしくね」
「あぁ。わかった」
倫典の表情が暗い。さっきのヘラヘラの顔が親のことを話したらこれだ。ってことで俺は三葉に抱え込まれて併設の動物病院に行く。
さすが土日も空いていることもあって受付も待合も混んでいる。いろんな動物もいるもんで隣に座ったチワワと目が合う。
ガルルルルルと唸ってるぞ。怖い。
「すいませんねぇ、うちのクリームちゃんは人見知りで猫ちゃん見ると興奮しちゃうのかしら」
「いえ、席移動します……」
「いいのよぉ~それにしても素敵なお嬢さんで。こんな真っ白で目の周りが黒い猫。初めて見たわ。なんだかあのホラードラマに出てくるスケキヨにそっくりね」
チワワを抱えたご婦人はとても声が大きく柔軟剤の匂いがきついが彼女のおっしゃる通り、スケキヨの由来はそれである。
三葉は愛想笑いしている、こういう高圧的なおばさんは苦手で近所付き合いも適当に流してそそくさと逃げる癖があるからな。
「大島スケキヨさん~」
おい、猫の名前で呼ばれるのか! ま、まぁ家族一員だしさ。でも今さっき出たスケキヨトークしたばかりで三葉は居た堪れない気持ちであろう。
「あら、やっぱりスケキヨ。かわいいわねぇ。ここの先生は優しい人だから。安心してちょうだい」
最後まであつかますぎるおばさんだな。俺はきっと睨むとチワワのクリームはきゅううううんと声を出して黙った。
「クリームちゃん、どうしたのかしらぁ~」
診察室に入ると真新しい診察室でとても広く、先生は大型のブルドッグみたいな顔をしている。って表現の仕方がひどい気もするが。
さて、そろそろ猫視点でもやめて三葉に乗り移るか。
「えーっと今日はどうされましたか」
「先日猫好きの知り合いにこの子が病気かもしれないって言われまして」
「ふむ。確かにちょっと痩せている気もしないかな……じゃあ診察台に乗せてね」
「食べ物もキャットフードよりも喉越しのいいゼリーばかり食べるんです」
「それは心配ですよね……どれどれ」
よし、三葉に乗り移って……。ん? 看護師さんのナース服がピンク色で可愛いぞ。顔もスタイルもめっちゃいいじゃないか。
「はい、スケキヨ君。首輪外すからね」
あっ。
その看護師さんに見惚れていたら一気に目の前が真っ暗になった。
俺はスケキヨの中に入り、三葉に抱き抱えられている。倫典は少し戸惑う顔をする。彼の車に乗って病院へ。
「なんか気づいたらこんな格好しててさ。普段着ない服だけど確かにスケキヨの毛がついちゃうし、いいよね」
「ま、まぁ……」
俺は出かける前に三葉に乗り移って俺が昔着ていたスエットを出して彼女のジーンズと合わせて着替えをしてからスケキヨに乗り移った。この方がいい、露出が少ない。靴もスニーカーにした。
「カジュアルな三葉さんもいいね」
「そう? これ和樹さんのだけどオーバーサイズも流行ってるし。とも君がいいっていうなら……」
「とも君?!」
「え、だめ? 私もそう言いたいな」
「う、うん。いいよ。なんだかドキッとしちゃった」
「うふふふ」
おいお前ら。後ろに4歳児、そして俺がいるっていうのにいちゃつきやがって。ん、後部座席から笑い声がする。
「美守君、どうしたの?」
「とも君も三葉さんもラブラブだなぁって」
ほら! 4歳児にそう思われてるぞ。倫典も三葉にとも君て言われただけで照れてるし。鼻の下伸ばすな、安全運転しろよな!
そして20分くらいで着いた。どうやら俺が事故で入院した頃にオープンしたばかりだから新しいし、ペットショップにしては広くて売り場以外にもペット美容室やホテルもある。犬猫以外にもウサギや鳥、ハムスターに熱帯魚や爬虫類など小さな動物園だな、こりゃ。三葉とこういうところにデートしても楽しいだろうなぁ。
「とも君、見て見て!」
動物に戯れている姿をみてるとやっぱり子供なんだなぁって。美守はモルモットと触れ合うコーナーに並んでウキウキしている。
子供がいたら休みになったら毎回ここに連れて行かれるんだろうか。周りは親子連れが目立つ。三葉はどう思っているのだろうか。俺は今スケキヨとして三葉に抱っこされていてその表情は見えない。
隣には倫典がいる。2人が美守を見ている。もうどこから見てもこの2人は夫婦のようにしか見えないだろう。
「美守君、いい笑顔ね」
「そうだね。動物が好きなのかなぁ」
「……美帆子と話したけどさ。ちょっと彼女悩んでるみたい」
「え、マリッジブルーじゃないの?」
ヘラヘラ話を聞くんじゃない。デリカシーが無さすぎる。ほら三葉が声詰まらせているぞ。少しそう言えば玄関での話が長いように感じもしたが。
「今日義理の親とも見に行くらしいんだけどさ、ほとんどあっち主導で決めていくからって愚痴ってた」
「ええーなんで親が入ってくるワケ? って多分うちの親も介入してくるだろうけど僕はそうはさせないからね」
「そうなの? とも君、今度ご家族の方とお話ししましょう。まずは仲直りしないと。いい大人同士だし、あなたもしっかり働いているじゃない」
「嫌だよ。あいつらは僕を見捨てたくせにあーだこーだ言ってくる。僕は仕事できないのに裏から手を回して周りの人を気遣わせてさ、僕の実力じゃない……今の立場は」
「見捨てるワケないいわ、自分の子供を。心配しているのよ、あなたのことを」
「……」
そうだな、倫典の親との関係もなんとかしてあげないとな。あ、美守がモルモット触って嬉しそうに微笑んでいる。
2人も気づいて手を振ると美守も喜んで手をふり返した。
「じゃあ私、受付行ってくるから。美守君よろしくね」
「あぁ。わかった」
倫典の表情が暗い。さっきのヘラヘラの顔が親のことを話したらこれだ。ってことで俺は三葉に抱え込まれて併設の動物病院に行く。
さすが土日も空いていることもあって受付も待合も混んでいる。いろんな動物もいるもんで隣に座ったチワワと目が合う。
ガルルルルルと唸ってるぞ。怖い。
「すいませんねぇ、うちのクリームちゃんは人見知りで猫ちゃん見ると興奮しちゃうのかしら」
「いえ、席移動します……」
「いいのよぉ~それにしても素敵なお嬢さんで。こんな真っ白で目の周りが黒い猫。初めて見たわ。なんだかあのホラードラマに出てくるスケキヨにそっくりね」
チワワを抱えたご婦人はとても声が大きく柔軟剤の匂いがきついが彼女のおっしゃる通り、スケキヨの由来はそれである。
三葉は愛想笑いしている、こういう高圧的なおばさんは苦手で近所付き合いも適当に流してそそくさと逃げる癖があるからな。
「大島スケキヨさん~」
おい、猫の名前で呼ばれるのか! ま、まぁ家族一員だしさ。でも今さっき出たスケキヨトークしたばかりで三葉は居た堪れない気持ちであろう。
「あら、やっぱりスケキヨ。かわいいわねぇ。ここの先生は優しい人だから。安心してちょうだい」
最後まであつかますぎるおばさんだな。俺はきっと睨むとチワワのクリームはきゅううううんと声を出して黙った。
「クリームちゃん、どうしたのかしらぁ~」
診察室に入ると真新しい診察室でとても広く、先生は大型のブルドッグみたいな顔をしている。って表現の仕方がひどい気もするが。
さて、そろそろ猫視点でもやめて三葉に乗り移るか。
「えーっと今日はどうされましたか」
「先日猫好きの知り合いにこの子が病気かもしれないって言われまして」
「ふむ。確かにちょっと痩せている気もしないかな……じゃあ診察台に乗せてね」
「食べ物もキャットフードよりも喉越しのいいゼリーばかり食べるんです」
「それは心配ですよね……どれどれ」
よし、三葉に乗り移って……。ん? 看護師さんのナース服がピンク色で可愛いぞ。顔もスタイルもめっちゃいいじゃないか。
「はい、スケキヨ君。首輪外すからね」
あっ。
その看護師さんに見惚れていたら一気に目の前が真っ暗になった。
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