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第二章

第21話

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 2人で倉田亨という男と三葉のメール履歴を読む。もう見てはいけないとかそんな倫理的なものは無視である。すまん、ほんとに。でもどんな会話をしているのか。どんな顔して俺以外の男と会っているのか、それが気になるんだ。

 俺以外の男……。
「大島先生、だから三葉さんの体の中にいる時はそんな険しい顔はやめてください」
「すまん、つい」
 彼女も俺も目が良くて良かったが、死ぬ前くらいは老眼があったからついその癖なのかじっと見てしまった。


「まぁそうたいした会話はしていないな」
「倉田はお前にみたいに若造じゃないからな。40の男で女を口説きまくるメールをしてたらチャラすぎる」
 確かにそんなにメールの回数は少ないが初めてメールしたと言うのはここ数ヶ月が最初か。中身は……
『今日はお会いできてよかったです』
『またお話しいたいです』
『今度また……』
  
 俺は倫典からスマホを取り上げた。やっぱ見るのはいかん。だめだ。
「僕もなんか見るの辛くなってきました。……じゃあ三葉さんになりきって倉田にメールしましょう」
「だな」
 なんだ、この一体感。いや俺はまだ倫典の方を持ってないぞ。

「それにこうやってお前がこの家に上がるためにも三葉泊まったり親密になることも必要だ……んんん」
 言っておきながら親密って……心中複雑だ。
「そうですよね。まだ嫌われてはいないと思うんで……頑張ります」
 何を頑張るのかわからないのだが、味方が多いのは助かる。
 あと美守……もう今日だけか? 子供だから無理させたくはないが俺を今のところみえる唯一の人間だ。

 それよりも先に倉田亨にメールだ。……三葉からグイグイメールしたら……気があると思われてしまう。
 まぁそうでもしないと呼び込むことができない。

「大島先生は……やっぱ僕じゃ不安ですか」
「えっ……不安というか、不安しかない。今のお前だと」
「ですよねぇ……」

 うなだれる倫典の横でメールを打つ。

 ミャオ
 あくびをしながらスケキヨが起きて、それと同時に美守も起きた。
「あ、お兄さんもおじさんもまだいるね」
 目を擦りながらまだ寝起きでぼーっとしてるな。

「一応俺はおじさんじゃなくて『大島さん』で、このお兄さんは『倫典』……じゃなくて『ともくん』な」
「ともくんって……まぁその方が言いやすいかな」
 美守は頷いた。心は開いてくれてるようだな。あまり小さい子供とは接することはしないが……。

「でもおじ……大島さん。そろそろ三葉さんからでたほうがいいよ」
 そうだよな、でも倉田からのメールを待ちたいのだが。
「じゃあ僕もいたら三葉さんびっくりしちゃうから帰るね。メールも消す」
 倫典、ありがとうな。すると美守が小さいリュックからガサガサと何か出した。

 子供用のスマホだ!!

「はい、これにトモくんの番号入れてー」
 今の子供ってやつは……。

「それに結婚式の打ち合わせがこれから何回もあるみたいだよ。三葉さんが預かるってさ」
 まじか、それは。倫典は横で急いで番号を入力して荷物を持って帰っていった。

 三葉に入ったままの俺は美守とふたりきりになった。
 何故か美守はニコニコしてた。俺たちにも子供が生まれてたらこんなかわいい子がいたのだろうか。

「じつはね、寝たふりしてたから全部聞いてたよ。僕も協力する!」
 寝たふり! かなりの時間寝てたのに? でもそれなら話は早い。

 するとまだ美守はニコニコしている。なんかやはり意味深。

「だから本当にママの結婚、辞めさせてね!」
 念に念を押されてしまったな……。んー、そうだ。美守に乗り移れるのか?

 !!!


 だめだった。
「……まずはなんで三葉とスケキヨにしか乗り移れないのか、それがわからないとなぁ」
「今僕に乗り移って何か悪いことしようとしたでしょ……」
 美守はぷくっと頬を膨らませる。表情豊かだな、子供って。

 そいや……仏壇への戻り方は? 前は眠気が来て気づいたら仏壇に戻っていたのだが。

「普通に仏壇に戻れー! でいいんじゃないの?」
「あ、そうか? じゃあやるか。……またここに来てくれよな」
「うん」

 三葉、身体貸してくれてありがとうな。よし。仏壇に戻れっ!!!
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