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第二章

第十八話

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 たくさんあり過ぎるぞやり残したこととかさ、目の前でうーんとうなされながらも書いていく。
 倫典は笑った、なにがおかしい。
「やっぱり中身は大島先生だ」
「ん?」
「左手で書くところと、すっごく悩んで書く時は右手を頬に当てて唸っているところ」
 ……! 無意識にやっている癖だった。三葉とは違って左利きであるのはそうだが、そういう癖があったのか、俺は。

 とりあえずやり残したことを書いてみるか。

 三葉を抱きしめたい
 キスがしたい
 抱きたい

「……」
 変な目線を感じたのは気のせいではなかった。いや、これは俺の本能でもあり事故を起こしてから一年半以上抱いていないんだぞ。
「これだと三葉さんの体の中に居させるのは大変危険だ。てか俺の体にいつ乗り移られても困る……」
「そっか、お前に乗り移れたらできるってわけか」
「や、やめてくだ……って三葉さんとそのような関係にはなりたいけど僕の意識がない状態で体を使われるのは絶対に嫌ですから」
「くそっ」
「三葉さんの中にいる状態でその汚い言葉を出さない出ください。てかなんで僕に乗り移らなかったんですか」
「お前にはなぜか乗り移れなかった。今のところスケキヨと三葉しか試していない。お前にも同じ要領で試したがダメだったからこないだのデートは三葉に入ったんだ」
「下手したら大島先生を抱いていたかもしれないのか、僕は……」
 倫典は顔を顰めた。

 確かによく考えたら自分の肉体でない体で三葉を抱いても嫌である。でも俺の肉体はとっくの昔に焼かれて骨になってしまってる。仏壇の骨壷の中にな。
 骨壷……。
「大島先生、どうしました?」
「そういえば仏壇はあるが墓は建てないのか」
 俺は美守を起こさないように仏壇の前に行く。写真写りの悪い遺影……そうだこの写真じゃないやつで遺影を作りたいも入れておこう。
 その遺影の横に骨壷がある。墓は土地すら買ってない。死んだらってまだ先のことの話であまり深く考えていなかったし、入るとしたら実家の親やじっちゃんばっちゃんが入っている墓なのだろうがもう4人も入れたらパンパンだろ。
 それに三葉ももし死んだとしたらそこに入るのか? それはそれで可哀想だしな、あんなボロ田舎のお手入れされていない墓。でも結婚する前に一回手を合わせたっきりだ。そこに入るべきなのか。ううむ。

「そうか、大島先生の骨がここにあるから大島さんの魂は仏壇にいたんですよ。だから……」
「その話はいい……そんなオカルトな話は」
「でも絶対ありますよ。骨にも魂が宿ると思います」
 力説する倫典。お前はそういうものを信じているんだな。まぁ悪くはないけど。

「まぁこんなところが他の家族からは浮いた存在なんですけどね。医学書よりも空想の話とかSFとかそういうのばっかりで……医者だったら現実見ろって言われるけど、人が死んだ後の世界って考えないんだよね。死んだらもうなにもできないから、医者って」
 ……まぁ確かにな。不妊治療だって俺が事故にあった時だっていろんなお医者さんたちが手を差し伸べてくれた。だが死んでしまったら彼らたちはなにもできない。それが現実だ。

「なぜ三葉は墓に俺を入れないのか」
「やっぱり三葉さんは大島先生のことが心に残ってるんだ。そばにいたいんだろうな…
 だから僕にはあまり深く入り込んでくれないし、もう1人の人は僕より少し年上だけどちゃんと一族の代表だし……」
 倫典は少しいじけてる。……俺のそばにいたいのか、三葉。お前の体の中にいるぞ。自然と俺は三葉の腕で彼女の体を抱きしめていた。

 そしてさっきの部屋に戻ってやり残したリストを書き始めた。
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