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第二章

第十六話

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 しばし15分ほど。美守は寝ている。倫典は信じられないような目をしている。そうだよな、見た目は三葉。中には俺がいるんだもんな。美守みたいにみえるわけでもない限り倫典の前にはミツバしかいない。
 それよりも仕事はいいのか? 長居しすぎではないのか。全く話せないままである。

「なんか変だと思ったんだよね、昨日」
「……そうなのか」
 ようやく口を開き、苦笑いする倫典。気づいてはいたのか。
「だってこないだのデートの時にやたらと質問攻めしてくるし、歩き方も変だったし」
「……」
「てか質問責めした時、三葉さんに話したことがある内容がいくつかあったんだ」
 三葉はある程度聞いていたのか? 倫典の現状を知った上であってはいたのか。

「三葉さんは僕が実家から勘当されていても気にしないって言ってくれてはいたんだって僕は今誰に話しかけているんだろ、三葉さんなのか? それとも本当に大島さんがそこにいるのか」
 やっぱり信じられないよな。

「信じられない。いつから三葉さんの中に? きっとこれは夢だ、夢にしておこう」
 倫典、開き直りすぎではないか。
「昨日のデート直前に三葉の中に入った」
「じゃあその前は?」
「スケキヨの中にいた」
「は? 猫ちゃんに……そんなの嘘だ、やっぱり今この世に起きてることは夢だ。仕事が嫌で現実逃避のために営業に行くって言って営業車で外に出て昼寝をしている、その中の夢だ」
 ズル休みしていたのか!!! そうかとは思っていたけどな。倫典はヘラヘラしていた。昇進したけどもやっぱり仕事はうまくいってないじゃないか。にしてもなにをどう言えば俺がこの中にいるってわかってもらえるのだろうか。そもそもこのまま倫典の夢の中の出来事で終わらせるか? ううむ、三葉のことが心配だから知ってもらったほうがいいし、なぜ俺がこうなったかもわかるだろうから知ってもらったほうがいいか。
「……大森倫典、フォレストグループの社長の三男坊として生まれるが親戚の中で唯一医者にならなかった」
「そんなことは誰だって知っているよ」
 ……そ、そうだよな。

「一番の仲良しは槻山湊音。高校一年の時に2人して金髪に染めて俺が怒ってやって華々しい高校生デビューは失敗した」
 そうだ、そんなこともあったさ。

「それも大島さんが三葉さんに話して聞いたんでしょ……」
 少し過去の話をすると倫典は少し反応した。だがダメか。うーむ。何かあるか。……。

 !!! そうだ、あのエピソード!

「高校2年生の時のキャンプ合宿で同じクラスの杉原かなえを呼び出したが振られた」
 ほら、倫典はびっくりしているぞ。ふふふ。

「1人で外の河原で泣いていて、そこをたまたま通りかかった俺が声をかけ、どれだけ杉原さんを好きだったかをお前は語り、俺は慰め……」
「あぁあぁぁああああああっもういい! そうです、三葉さんの中にいるのは大島さんです! 信じます! すいません」
 倫典は頭を下げた。確かに2人きりであの時語った話でもあるからな。流石に三葉に話すエピソーでもないからな。

「大島さぁあああああん!」
 ど、どうした倫典! いきなり泣きついてきて。てかどさくさ紛れに三葉の体にすり寄っているような気もしないが。

「僕、絶対もう1人の男の人に三葉さん取られちゃってまた振られちゃうかもしれないっ」
 なんて情けない泣き顔だ。
「知っているのか、その男を」
 倫典は大きく頷いた。取られる……のか。

「なんとかしてよー大島さぁん!!!」
 えぇ、お前もかっ!
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