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第二章
第十話
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やはりもうダメだ。こんなヒールに高い靴で歩くのは。いくら三葉の肉体でも歩くことはできなかった。店の前のベンチに座り、ふくらはぎを触る。
「三葉さん体調悪そうだな。貧血かな」
「ちょ、ちょっとね」
そこまで無駄な気遣いはいらん、やはり倫典に乗り移りたかった。
「じゃあここで少しお話ししましょうか。まだランチにしては早いですし」
「そうね、ケーキも食べてきたから喫茶店もあれだしね」
倫典は横に座ってきた。なんだろうか、心拍数が高まってるぞ。おい、なぜなんだ。うーん、だったらこれをチャンスと思って倫典のことを色々聞いてみるのもいいかもしれない。
「倫典……くん、なんでこうも優しくしてくれるの?」
「え、いやその……当たり前だろ。女性には優しく。高校の時にはもう教わっていた。まぁ大多数の男子生徒はふーんって感じだったけどさ、女性に優しく、他人には優しく。そうであれ……大島先生が言ってましたよ」
え、俺はそんなこと……言った気もするが。そんなことを覚えていたのか。
「でもその方がモテるぞって言ったら聞き流してたみんなが反応してたけどね、単純でしょ」
……そうだよな。男は単純だ。
そうだ、これを機に俺が気になってた倫典のことを聞き出すのはどうだろうか。
もしもだ、もしも2人がいい感じになって付き合う、そして結婚することになったら……三葉が悲しまないように幸せにしてくれる相手じゃなきゃだめだ。
倫典は不安要素が多すぎる。まだ少しは大人になったわけだ。色々と聞こうじゃないか。
……。横に座った倫典がたじろぐ。少し胸の谷間が見えるのであろう。目線に困ってる。
「み、三葉さん?」
「倫典くん、聞きたいことあるの」
「な、なんですかっ……なんでも聞いてください!」
「……今貯金いくらある?」
「はいっ?!」
「痛ぁ……」
夕方前、俺はまた仏壇にいるがリビングの方から三葉の声が聞こえてきた。肉体は借りたのだが、ふくらはぎは痛いようだ。
まさか三葉はいつもこういう痛みを我慢してまでヒールを履いていたのか? おしゃれのために。
様子を見たくて俺の前に来たスケキヨに乗り移った。すまないな。視点は変わってスタスタと三葉の元に行くとスウェット姿の彼女、短パンで足元に湿布を貼っている。……こんな姿見たことなかったなぁ。
「スケキヨー、なんかお出かけの記憶がなくてさ……気づいたら夕方になって家にいたのよ。足がすごく痛いからすごく歩いたのかしら……いたた」
俺はスリスリと擦り寄ると三葉は頭を撫でてくれた。湿布臭いが。
あれからベンチで話をし、たくさん質問してそのあと喫茶店でスパゲティ食べて、夕方前に解散になった。
あー久しぶりのあの喫茶店でのスパゲティは美味しくて大盛りたのんで平らげてしまった。つい。三葉であることを忘れて。失態失態。
しかもさらにやらかしたのは、食後に頼んだ飲み物……三葉はコーヒーが飲めないのによんでしまって
「三葉さん、コーヒー飲めるようになったんですか?」
って倫典に指摘されてしまった。しかもブラック……。
とりあえず聞きたいことは聞けたしな。まあいいとして、倫典はちゃんと三葉を家に帰してくれたし……だが。
プルルル
三葉のスマホに着信が。さっきはメールの着信音だったから倫典だったと思うが、今度は電話のようだ。
「もしもし、美帆子ー。わかってる、わかってる。明日のことでしょ。え、違う?」
美帆子か。明日のこととは? 三葉はスマホをスピーカーモードにしてスマホをスタンドに立てかけて両手をフリーにしてふくらはぎを揉みながら話し始めた。
そんなことしてるのか、電話中に。スピーカーモードのおかげで美帆子の声も聞こえてどんな会話かわかっていいんだけどな。
『今日の倫典くんとのデートよ。どこ行ったの』
「え、モールに行ったよ」
美帆子はなんで倫典とのこと知っているんだ、なんかまるで女子同士の会話を盗み聞きしているようだな。
『え、そんだけ?』
「そんだけって、そんだけよ」
『何それ、つまんない。キスはしたの』
「するわけもないじゃん。あんまし覚えてないけど」
『覚えてないって、しらばっくれて。何かしたんでしょー』
「してないし、てかしてないと思う」
『したんじゃないのー』
なんだか女子高生の会話みたいだが、こうやって俺のことも話されていたかと思ったら……。
2人の無邪気な会話は続くが三葉は足の裏を揉み始めた。俺はスケキヨに乗り移ったことをいいことに三葉にすりすりしてそばに寄り添うと笑いかけてくれた。
『どうなのよ、倫典くんは』
「どうって言われてもさぁ」
『若くてー、大病院の御曹司だけど今は離れて生活してて……幸先不安だけど優しいし、垂れ目で可愛い』
まぁ確かにそうだな。でもなあ……。
「まあそうなんだけどさ」
三葉は手を止めた。何を考えてるんだ?
『あーやっぱりあの人のこと気になってるんだ』
「え、そんな! そんなことは」
あの人? 三葉も動揺してるぞ。
『それもあるかも』
「ほら~」
誰なんだ、あの人って。
『ちょいと挙動不審だけど背も高くてすらっとしてて、彼も倉田グループの御曹司だし……』
倉田グループ……?! あの大手葬儀会社兼地元の大きな寺を構えるところじゃねぇかっ。
「まあそうなんだけどさ、まだそこまで話はしてないし。彼は僧侶でもあるし……わたしより少し年下でバツイチ、別で暮らしているけど成人した子供もいるって……」
バツイチ……三葉もバツイチになるのか? いやバツじゃないだろ。
『40で子供20過ぎってかなりやんちゃよね、あの挙動不審なかんじだけどさ。でも安定を求めるなら倉田さん、癒しを求めるなら倫典くんって感じかな』
安定か癒しか……究極の選択なのか? 女は何を求めるのか、気になる。
「うーん……」
『まあどっちにしろ大島さんとは別のタイプだし迷うよね』
「確かに! それなのー」
!!!! 俺には安定も癒しもなかったのか! 2人笑ってるしヨォ、くそ。この女子トークは終わらないのかぁ? 俺は三葉にすりすりしても相手にされず一時間以上続いた。
その中には俺の話題はほぼなくて男たちの話もなく、たわいもない話。こんなので楽しいのか。
そしてわかったことは明日、この家にあの美守が来るってことだ。俺がみえるあの子が。
「三葉さん体調悪そうだな。貧血かな」
「ちょ、ちょっとね」
そこまで無駄な気遣いはいらん、やはり倫典に乗り移りたかった。
「じゃあここで少しお話ししましょうか。まだランチにしては早いですし」
「そうね、ケーキも食べてきたから喫茶店もあれだしね」
倫典は横に座ってきた。なんだろうか、心拍数が高まってるぞ。おい、なぜなんだ。うーん、だったらこれをチャンスと思って倫典のことを色々聞いてみるのもいいかもしれない。
「倫典……くん、なんでこうも優しくしてくれるの?」
「え、いやその……当たり前だろ。女性には優しく。高校の時にはもう教わっていた。まぁ大多数の男子生徒はふーんって感じだったけどさ、女性に優しく、他人には優しく。そうであれ……大島先生が言ってましたよ」
え、俺はそんなこと……言った気もするが。そんなことを覚えていたのか。
「でもその方がモテるぞって言ったら聞き流してたみんなが反応してたけどね、単純でしょ」
……そうだよな。男は単純だ。
そうだ、これを機に俺が気になってた倫典のことを聞き出すのはどうだろうか。
もしもだ、もしも2人がいい感じになって付き合う、そして結婚することになったら……三葉が悲しまないように幸せにしてくれる相手じゃなきゃだめだ。
倫典は不安要素が多すぎる。まだ少しは大人になったわけだ。色々と聞こうじゃないか。
……。横に座った倫典がたじろぐ。少し胸の谷間が見えるのであろう。目線に困ってる。
「み、三葉さん?」
「倫典くん、聞きたいことあるの」
「な、なんですかっ……なんでも聞いてください!」
「……今貯金いくらある?」
「はいっ?!」
「痛ぁ……」
夕方前、俺はまた仏壇にいるがリビングの方から三葉の声が聞こえてきた。肉体は借りたのだが、ふくらはぎは痛いようだ。
まさか三葉はいつもこういう痛みを我慢してまでヒールを履いていたのか? おしゃれのために。
様子を見たくて俺の前に来たスケキヨに乗り移った。すまないな。視点は変わってスタスタと三葉の元に行くとスウェット姿の彼女、短パンで足元に湿布を貼っている。……こんな姿見たことなかったなぁ。
「スケキヨー、なんかお出かけの記憶がなくてさ……気づいたら夕方になって家にいたのよ。足がすごく痛いからすごく歩いたのかしら……いたた」
俺はスリスリと擦り寄ると三葉は頭を撫でてくれた。湿布臭いが。
あれからベンチで話をし、たくさん質問してそのあと喫茶店でスパゲティ食べて、夕方前に解散になった。
あー久しぶりのあの喫茶店でのスパゲティは美味しくて大盛りたのんで平らげてしまった。つい。三葉であることを忘れて。失態失態。
しかもさらにやらかしたのは、食後に頼んだ飲み物……三葉はコーヒーが飲めないのによんでしまって
「三葉さん、コーヒー飲めるようになったんですか?」
って倫典に指摘されてしまった。しかもブラック……。
とりあえず聞きたいことは聞けたしな。まあいいとして、倫典はちゃんと三葉を家に帰してくれたし……だが。
プルルル
三葉のスマホに着信が。さっきはメールの着信音だったから倫典だったと思うが、今度は電話のようだ。
「もしもし、美帆子ー。わかってる、わかってる。明日のことでしょ。え、違う?」
美帆子か。明日のこととは? 三葉はスマホをスピーカーモードにしてスマホをスタンドに立てかけて両手をフリーにしてふくらはぎを揉みながら話し始めた。
そんなことしてるのか、電話中に。スピーカーモードのおかげで美帆子の声も聞こえてどんな会話かわかっていいんだけどな。
『今日の倫典くんとのデートよ。どこ行ったの』
「え、モールに行ったよ」
美帆子はなんで倫典とのこと知っているんだ、なんかまるで女子同士の会話を盗み聞きしているようだな。
『え、そんだけ?』
「そんだけって、そんだけよ」
『何それ、つまんない。キスはしたの』
「するわけもないじゃん。あんまし覚えてないけど」
『覚えてないって、しらばっくれて。何かしたんでしょー』
「してないし、てかしてないと思う」
『したんじゃないのー』
なんだか女子高生の会話みたいだが、こうやって俺のことも話されていたかと思ったら……。
2人の無邪気な会話は続くが三葉は足の裏を揉み始めた。俺はスケキヨに乗り移ったことをいいことに三葉にすりすりしてそばに寄り添うと笑いかけてくれた。
『どうなのよ、倫典くんは』
「どうって言われてもさぁ」
『若くてー、大病院の御曹司だけど今は離れて生活してて……幸先不安だけど優しいし、垂れ目で可愛い』
まぁ確かにそうだな。でもなあ……。
「まあそうなんだけどさ」
三葉は手を止めた。何を考えてるんだ?
『あーやっぱりあの人のこと気になってるんだ』
「え、そんな! そんなことは」
あの人? 三葉も動揺してるぞ。
『それもあるかも』
「ほら~」
誰なんだ、あの人って。
『ちょいと挙動不審だけど背も高くてすらっとしてて、彼も倉田グループの御曹司だし……』
倉田グループ……?! あの大手葬儀会社兼地元の大きな寺を構えるところじゃねぇかっ。
「まあそうなんだけどさ、まだそこまで話はしてないし。彼は僧侶でもあるし……わたしより少し年下でバツイチ、別で暮らしているけど成人した子供もいるって……」
バツイチ……三葉もバツイチになるのか? いやバツじゃないだろ。
『40で子供20過ぎってかなりやんちゃよね、あの挙動不審なかんじだけどさ。でも安定を求めるなら倉田さん、癒しを求めるなら倫典くんって感じかな』
安定か癒しか……究極の選択なのか? 女は何を求めるのか、気になる。
「うーん……」
『まあどっちにしろ大島さんとは別のタイプだし迷うよね』
「確かに! それなのー」
!!!! 俺には安定も癒しもなかったのか! 2人笑ってるしヨォ、くそ。この女子トークは終わらないのかぁ? 俺は三葉にすりすりしても相手にされず一時間以上続いた。
その中には俺の話題はほぼなくて男たちの話もなく、たわいもない話。こんなので楽しいのか。
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