7 / 50
第一章
第六話
しおりを挟む
俺はしばらく三葉のまま放心状態であった。倫典……。そうだあいつだ。
俺は高校教師を二十年近くやっていた。自慢では無いが卒業生はほぼ覚えている。名前と顔が一致する、中には親の顔、きょうだいの顔を知ってるものもいる。
特に担任で受け持った生徒、そして俺が顧問を務めていた剣道部の部員、そしてとても手がかかった生徒のことなんて特に。
そうだ、倫典。大森倫典。この町で一番大きな病院、フォレスティアグループ新緑会「緑の丘病院」の院長の次男坊、大森倫典だ。
家族全員医者だが倫典は残念ならが勉強はできなかった。今は同列会社の製薬グループで営業マンとして働いているというのは聞いた。
まぁ愛嬌と、末っ子気質もあって世渡り上手で乗り切っていたから営業マンではゴマスリでもしてうまくやり切っているのだろう、悪い噂は聞かないからな。
でもお調子者で成績はほとんど赤点、これをあの医者家系の親たちにどう話をすればいいのか悩んだものだ。案の定親たちは彼のことは見捨てていたようだが、あいつはヘラヘラ笑ってなんとか卒業していった。
にしても何故、倫典と三葉? あぁ、そうか。三葉は今、養護教員だが教職の免許を取るために教育実習で学校にきていた。
俺と三葉の出会いもそこだった。でもあの時倫典は生徒、三葉は大学生。俺は教師。あの頃から三葉は美しく、他の女性にないセクシーさで女子大生とは思えないくらい大人の女性を感じた。
正直いうと飲みに誘ったがやんわりとあしらわれた、そんな尻軽な女ではないのだ。そして数年後に婚活パーティで偶然再会した彼女はますます大人の色気を纏った女性に成長していった。
あぁ、そんな彼女がなぜ倫典とメールを交換し、そして明日会うという約束をしたんだ?
何故に、何故に。葬式にはきてくれたのは覚えている。その前に事故に会った時も見舞いに来てくれたもんな、倫典。入院した病院が彼の親の病院だったし。
葬式のとき泣いてた。俺大したことをしてなかったのになぁ。
まだスマホの中を見るか? 2人は家以外であってたってことだよな。もちろん俺の生前はあってたわけではないだろうが……製薬会社の人間だから三葉が勤めていた学校の取引先だったとか、ああああああ、この2人の関係は?
でも三葉さんって書いてあったしまだ親密ではないのであろう。混乱している。俺、珍しく。ただでさえ久しぶりのこの世界、乗り移りできたことでも混乱しているのに。
落ち着け、俺。ほら座布団に座っているスケキヨなんか心配そうにこっち見ているぞ。スケキヨが心配するほどなのか。それが伝わるのか。そういえば俺がイライラしてる時や剣道大会前日のハラハラしている時はスケキヨは察して近づいて来て落ち着かせるように擦り寄ってきたもんだ。
スケキヨはこっちを見て起き上がり、俺のところに近づいてきた。そして体をする寄せる。そうだ、そうだ。これだ、懐かしいな。わかるのか、体は俺じゃなくて三葉なのに。スケキヨ。
ピロン
またきた、メールの着信。そしてやはり倫典から。俺は震える手でメールを開いた。
『三葉さん、まさかこの間の件はまだひきづってはいないよね?』
この間の件? なんなんだ、この間の……なんかいきなり目眩が、いや睡魔……。
俺は高校教師を二十年近くやっていた。自慢では無いが卒業生はほぼ覚えている。名前と顔が一致する、中には親の顔、きょうだいの顔を知ってるものもいる。
特に担任で受け持った生徒、そして俺が顧問を務めていた剣道部の部員、そしてとても手がかかった生徒のことなんて特に。
そうだ、倫典。大森倫典。この町で一番大きな病院、フォレスティアグループ新緑会「緑の丘病院」の院長の次男坊、大森倫典だ。
家族全員医者だが倫典は残念ならが勉強はできなかった。今は同列会社の製薬グループで営業マンとして働いているというのは聞いた。
まぁ愛嬌と、末っ子気質もあって世渡り上手で乗り切っていたから営業マンではゴマスリでもしてうまくやり切っているのだろう、悪い噂は聞かないからな。
でもお調子者で成績はほとんど赤点、これをあの医者家系の親たちにどう話をすればいいのか悩んだものだ。案の定親たちは彼のことは見捨てていたようだが、あいつはヘラヘラ笑ってなんとか卒業していった。
にしても何故、倫典と三葉? あぁ、そうか。三葉は今、養護教員だが教職の免許を取るために教育実習で学校にきていた。
俺と三葉の出会いもそこだった。でもあの時倫典は生徒、三葉は大学生。俺は教師。あの頃から三葉は美しく、他の女性にないセクシーさで女子大生とは思えないくらい大人の女性を感じた。
正直いうと飲みに誘ったがやんわりとあしらわれた、そんな尻軽な女ではないのだ。そして数年後に婚活パーティで偶然再会した彼女はますます大人の色気を纏った女性に成長していった。
あぁ、そんな彼女がなぜ倫典とメールを交換し、そして明日会うという約束をしたんだ?
何故に、何故に。葬式にはきてくれたのは覚えている。その前に事故に会った時も見舞いに来てくれたもんな、倫典。入院した病院が彼の親の病院だったし。
葬式のとき泣いてた。俺大したことをしてなかったのになぁ。
まだスマホの中を見るか? 2人は家以外であってたってことだよな。もちろん俺の生前はあってたわけではないだろうが……製薬会社の人間だから三葉が勤めていた学校の取引先だったとか、ああああああ、この2人の関係は?
でも三葉さんって書いてあったしまだ親密ではないのであろう。混乱している。俺、珍しく。ただでさえ久しぶりのこの世界、乗り移りできたことでも混乱しているのに。
落ち着け、俺。ほら座布団に座っているスケキヨなんか心配そうにこっち見ているぞ。スケキヨが心配するほどなのか。それが伝わるのか。そういえば俺がイライラしてる時や剣道大会前日のハラハラしている時はスケキヨは察して近づいて来て落ち着かせるように擦り寄ってきたもんだ。
スケキヨはこっちを見て起き上がり、俺のところに近づいてきた。そして体をする寄せる。そうだ、そうだ。これだ、懐かしいな。わかるのか、体は俺じゃなくて三葉なのに。スケキヨ。
ピロン
またきた、メールの着信。そしてやはり倫典から。俺は震える手でメールを開いた。
『三葉さん、まさかこの間の件はまだひきづってはいないよね?』
この間の件? なんなんだ、この間の……なんかいきなり目眩が、いや睡魔……。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。



ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる