2人で歩めば(李仁と湊音2024)

麻木香豆

文字の大きさ
上 下
30 / 36
滋賀旅行

第十六話 旅の終わり

しおりを挟む
 大津港近くのお土産屋さんで地元産のビールやお菓子、漬物をはじめとするお土産、雑貨なども買い大満足の2人。

「さて、帰るまでが旅行ですからね」
 と李仁はぐびっと栄養ドリンクを飲んだ。
「うん、安全運転でお願いしますね」
「はーい」







 出発直後に湊音は爆睡。李仁は途中で助手席を倒して横にしてやった。
 早々に寝てしまった彼に対して李仁は特に嫌な感情は無い。
 湊音が少しでも気持ちが楽になれたんだと。ひどい時は夜も寝付けず時に泣き喚く時もあった。
 旅の道中ではSEXをして後スンッと寝静まってくれた。
 旅が終わってからしばらくは大丈夫なはず……と思いながらも。


 行きと同じくノンストップで行くつもりであったが途中、ジュリから電話がかかってきたため近くのインターで休憩がてら立ち寄り車の外で電話をした。
 もしもふと湊音が起きた時にいなかったらパニックを起こされたら困るからだが流石に車内で電話をすることはできない李仁なりの配慮だ。

『はぁーい、帰宅してる? それとも道中?』
 陽気なジュリ、相変わらずである。

「道中。あんたから電話かかってきたからパーキングにねいるの。ミナくんは寝てる」
『あら、そう。でも湊音……元気そうに見えたけど旅行中だったからかしら』
「まぁね。でも疲れちゃったのもあって寝てるけどさ。シバはいるの?」
『シバも寝てるー。今週一週間はここにいるし。あ、週末に長良川の花火大会あるから見にきてよー』

 ジュリたちの家は長良川花火大会の会場すぐ近くの高級マンションに住んでいるのだ。
 シバが警察学校でしばらくの間学生たちと共に寮生活をしながら働いているため普段は一人暮らしをジュリはしている。
「そうね、一回も新居行ってなかったし」
『シバもその日は帰ってくるしー、ベッドもキングサイズだから、ねっ』

 その「ねっ」に何か裏があるというのはわかっている李仁。
「はいはい、まぁミナくんの調子見てだけど予定入れておくわ……あとさぁ」
『あと?』

 李仁は聞きたいことがあったのだ。
「なんで清水くんの店で……会うことにしたのさ」

 ジュリからの返事がない。
「……私の元カレよ、清水くん」

 そう、李仁は湊音に嘘をついていた。清水は李仁の元カレである。

『左耳のインダストリアル……の彼だったわよね』
 2つのピアスホールを1つのロングバーベルで繋いでいたもので、今はもう塞がっているがかなりのインパクト強めのピアスであった。
 李仁は付き合うたびにピアスの穴を増やすのだが……。
「一回別れてまた付き合ったから二箇所穴空いて繋げたやつだからねぇ。でもすぐ別れたけどさ……」
『別れたのも清水くんのお父さんが倒れたから……下の兄弟を育てるために夜の仕事辞めて地元に戻ったんでしょ』
「まぁね……それを知ったのもその後だったから」
『ふん、すぐ違う男見つけてバーテンの資金出してもらってたくせに』
「そ、それは……んー、そのー!」
 ここまで取り乱す李仁はなかなか無い。湊音に見られたらとふと車内見るとまだ寝ていた。
「……でも清水くんが私の道を変えてくれた、だから今こうしていられてるのは事実よ」
『そうね、私も彼に李仁とはいい仕事のパートナーになるから可愛がってもらえって言われたのよね……』
「あら、そうだったの? ……長い付き合いになるわね、夜のあの街の中で一番長い……」

 とふと李仁は空を仰ぐ。色々あった、過去のこと。夜の街でしか生きていけなかったあの時を。

 すると窓ガラスを叩く音。
 湊音が起きたようだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

目標、それは

mahiro
BL
画面には、大好きな彼が今日も輝いている。それだけで幸せな気分になれるものだ。 今日も今日とて彼が歌っている曲を聴きながら大学に向かえば、友人から彼のライブがあるから一緒に行かないかと誘われ……?

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

心からの愛してる

マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。 全寮制男子校 嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります ※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください

【完結】俺はずっと、おまえのお嫁さんになりたかったんだ。

ペガサスサクラ
BL
※あらすじ、後半の内容にやや二章のネタバレを含みます。 幼なじみの悠也に、恋心を抱くことに罪悪感を持ち続ける楓。 逃げるように東京の大学に行き、田舎故郷に二度と帰るつもりもなかったが、大学三年の夏休みに母親からの電話をきっかけに帰省することになる。 見慣れた駅のホームには、悠也が待っていた。あの頃と変わらない無邪気な笑顔のままー。 何年もずっと連絡をとらずにいた自分を笑って許す悠也に、楓は戸惑いながらも、そばにいたい、という気持ちを抑えられず一緒に過ごすようになる。もう少し今だけ、この夏が終わったら今度こそ悠也のもとを去るのだと言い聞かせながら。 しかしある夜、悠也が、「ずっと親友だ」と自分に無邪気に伝えてくることに耐えきれなくなった楓は…。 お互いを大切に思いながらも、「すき」の色が違うこととうまく向き合えない、不器用な少年二人の物語。 主人公楓目線の、片思いBL。 プラトニックラブ。 いいね、感想大変励みになっています!読んでくださって本当にありがとうございます。 2024.11.27 無事本編完結しました。感謝。 最終章投稿後、第四章 3.5話を追記しています。 (この回は箸休めのようなものなので、読まなくても次の章に差し支えはないです。) 番外編は、2人の高校時代のお話。

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

離したくない、離して欲しくない

mahiro
BL
自宅と家の往復を繰り返していた所に飲み会の誘いが入った。 久しぶりに友達や学生の頃の先輩方とも会いたかったが、その日も仕事が夜中まで入っていたため断った。 そんなある日、社内で女性社員が芸能人が来ると話しているのを耳にした。 テレビなんて観ていないからどうせ名前を聞いたところで誰か分からないだろ、と思いあまり気にしなかった。 翌日の夜、外での仕事を終えて社内に戻って来るといつものように誰もいなかった。 そんな所に『すみません』と言う声が聞こえた。

大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!

みづき(藤吉めぐみ)
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。 そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。 初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが…… 架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。

処理中です...