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一旦停止

ミナくん、病む

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「もう休みましょう、なんなら辞めましょう」
病院にて主治医がそう言い切った。
今までこう強く言うことはなかったのだがと付き添いの李仁は危機感を感じた。
虚ろな目をする湊音。
ここ最近ハイとローを繰り返す湊音。三四年前の頃に比べればと思っていたし、周りから見ても
普通にしか見えない。

「しかも薬の減りが早いです、少し。李仁さんに隠れて頓服飲んだのでしょうね、規定量超えた……」
湊音は頷いて泣き出した。

高校教師を辞め市役所職員、そしてそれも辞めて慣れない飲食店で働くこと……それもだが過去のトラウマや加齢もあって
湊音の精神状態は限界に達していたようだ。

李仁はそばにいたのに気づいてやれなかったのかと悔やむ。



家に帰り、湊音は一人で寝たいと部屋に閉じこもってしまった。一応店主は李仁でもあり、働き手はなんとかなるとはいえしばらくは湊音へのサポートも必要になる。

彼自身もリビングで一人になると力がガクッと抜けて涙がどっと流れる。

そこに電話が来た。ジュリであった。ジュリは店の運営も手伝ってもらっている。病院に行くとはいってはいたが連絡をするのを忘れていた。
『どうだった、湊音は』
「……だめだって」
『だめ……あんたもじゃない』
嗚咽をあげて李仁は泣き出す。もう耐えきれなかったのだ。
『今すぐ行くわ』
「いいっ……いいの、大丈夫っ」
『大丈夫じゃない!!! 行くわ、待ってなさいよ!!!』


ジュリからの電話が切れても李仁はスマホを握ったまま泣いた。
10年一緒に連れ添ってきて湊音の心の揺れ動きをそばで見ていた彼は持ち前の明るさで湊音を支えていた。しかしそれも無理をしていると気づきながらもごまかしながら。

電話が切れてから直ぐしてジュリが着き、李仁は泣きながら玄関を開けた。
「李仁……」
「ジュリっ」
李仁はジュリにすがりつき泣きじゃくった。玄関先で大きな声で。ジュリは彼の背中を擦ってゆっくりリビングに移動して座らせた。


それを湊音は部屋から見ていた。あそこまで感情的に泣いている李仁は見たことはない。


湊音は飲んだ新しい安定剤を飲んでまた眠気が出てしまいまた部屋に戻って寝ることにした。






そして次の日。
ジュリはもういなかったが良い香りがリビングに残っている。湊音は台所にいた李仁に声をかける。
「おはよう、ミナくん」
いつもどおりの優しい顔の李仁。
「おはよう、李仁。いい香りだね」
「アロマを炊いてハーブティーもそれに合わせたの」
「ジュリが持ってきてくれたの」
李仁はハッとしながらも頷いた。
「そうそう、色々持ってきてくれてね」
「って今日李仁、仕事じゃないの」
「ジュリが変わりに出るって。久しぶりにメインでやらせてって。一週間急遽お休みに」
「……急遽過ぎる」
湊音はハーブティーを飲んだ。

「とりあえず、一緒に休みましょう」
「そうだね……でも書類」

李仁は首を横に振った。
「まずは一休み」



本当は昨晩ジュリが李仁が背負い過ぎだといい、李仁と湊音を少し離れたほうがいいと言ったのだが……。

「調子よかったらこのあたり散歩しよう」
「うん、まずはご飯食べてからー!」
今朝の湊音は調子が良さそうだ、李仁はホッとして一緒に朝ご飯を食べ始めた。



そして1週間後、湊音は仕事をやめた。
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