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疑惑編

第六話

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 そんなことがあったのにもかかわらず、懲りずに寧人は古田との逢瀬を重ねる。
 営業先にはちゃんと回って仕事をしながらも、二人は鬼のように業務をこなして捻出した時間で営業車でイチャイチャする。

 その中で古田の過去が少しずつ露わになる。
「初めてはね、塾の先生だったの。十個上……あっ、寧人とおんなじ」
 世の中には変態教師がいるものだと寧人は呆れる。とか言いつつも古田の柔らかいお尻を弄ると彼はニャンニャンと甘える。
 寧人はどうして古田はプレイの時は猫のように甘えるのだろうかと。
 ドSで罵るのは仕事の時だけで、完全に寧人に、心も身体も許してしまっているようだ。

「親が迎えに来れなくて、だったら先生が送って行ってあげるとか言われてさ……着いたところが公園の駐車場。可愛い可愛いって何度も言われてね、いやな顔するとしかめっつらされて、可愛い声を出したら喜んでくれたの。先生……。リンをね、たくさんたくさん可愛がってくれたの、車の中で……」
「リン……?」
 古田は頷いた。もう目がトロントしている。あの、キツネ目はない。

「ねぇ、寧人。リンって呼んで。呼んで欲しかったの……」
「り、リン……」
 いつも古田さん、だったのにいきなり「リン」と呼ぶのには抵抗あった寧人。

「……嬉しいっ」
と涙をポロポロと古田は流すのだ。寧人はこれはヤバいと思い体を離した。
「寧人?」
「リン……じゃなくて古田さんっ、カウンセリング受けましょう。て、ずっと引きこもりだった僕に言われるのもあれですけど……あなたが過去に先生にされた事は犯罪です!」

 古田は目を丸くする。
「違う、違う」
「ダメだっ! 古田ぁっ……さん」
「寧人っ……」
「ダメです……でも、何か辛いことあったらいつでも僕を抱きしめていいですよ」
 寧人は古田をしっかり抱きしめた。する時を思ったか

「ねぇ、セックスしない僕に対してマンネリ感じてる?」
「へ?」
「……古田さんも、入れて欲しいんだよね」
「そう、入れて欲しいのに寧人はいつまで経っても入れてくれない」
「なんで入れて欲しいの?」
 古田はその質問に固まった。が、すぐ答えた。

「愛されてる、て感じるの」
「こう、抱きしめるだけではダメなのか」
 寧人は強くさらに抱きしめる。古田はまた固まる。

「ねえ、こないだも相手がいるって言ってたじゃない……」
「言いましたっけ」
「それに今も、『古田さんも』って言ってたよね」
「あっ……」
「図星だ。だあれ? どんな人……」
 相手がまさか日頃ビデオチャットを仕事でする取引先の一護だなんて口が裂けても言えない。

「その人ともセックスしてないんだよね、童貞君だから」
「う、うん……てかマンネリって言われてて」
「確かに、僕も不満は感じてた」
「古田さんも?」
 寧人はさらにショックを受ける。二人にも言われると流石に……。

「じゃあ今度、いいところ連れて行ってあげる。マンネリ解消するかもしれない」
「う、うん……いくいく!」
「じゃあイチャイチャの続き、しよ」
 と古田は寧人の唇を吸う。寧人は自分がマンネリなのか、と頭の中にぐるぐる巡らせる。



◆◆◆
「いやー、今日も色々回っててね。汗かいちゃったよ」
 また言い訳を言わなくていいのに口を出してしまう。

「お疲れ様、寧人。ちょっと今から色物洗うから寧人の服はここに入れて」
 と一護はカゴを差し出す。寧人は素早くネットに入れたシャツなどをカゴに入れた。

「風呂入るね」
「お先にどうぞ」
 寧人が入ったのを確認して一護は洗濯物の匂いを嗅ぐ。明らかに精液の匂いと他の男の汗の匂い。
 風呂場から寧人の鼻歌が聞こえる。
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