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2021

本屋にて

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 李仁は久しぶりの現場での職務。髪の毛は本部勤めの時のかっちり固めた髪型では無くてワックスでふわふわと遊ばせた髪型にして私服の上にエプロン姿。
 アルバイト時代と変わらぬようなラフな感じで接客をする。その方が仕事もしやすいらしい。かつて長い間働いていた場所。ゲイバーやホストなど世間一般でいう夜の仕事で派手な格好をしてこういうところに働かせてもらうのがなかなかできなかったがこの本屋だけは違った。ど金髪でやや長髪の容姿であった李仁、それは関係なく見てくれた現店長のことは今でも尊敬と感謝しかない。
もし店長に会ってなかったら今こうして本部の人間として社員になっていなかったのだろう。

 本屋の入っているモール自体も閉店するともあり客数も少し多くなったが本屋はあまり変わらずいつものように賑わっている。

 湊音とシバは李仁が作業しているところにいく。
「ミナくんそのパンフレット……」
「明里にもらったんだ。……子ども食堂のことで色々と調べたいことあって」
「あら、ようやく動き出したのね」
「……まぁね」
「元カノに押された形なのねー、ふぅん」
「ってなるのかなぁ。シバの前でいうのもあれだけどなぁ」
 湊音はシバの方を見るとシバは何ともない顔をしてるが彼の先に視線を感じた。
 その奥にいたのは李仁の部下の麻衣。彼女も本部から来ていた。
 湊音が彼女に会釈する。
 すると彼女は不意打ちだったためびっくりして慌てて会釈し、去っていった。 

「きっとあの子、李仁の事好きだよ」
 湊音がそういうと李仁は笑った。
「他の人から見てもわかる? わかりやすい子よね……」
「だって僕が来るたび遠くからこっち見てるんだもん」
「……だからボディタッチ多いのね、ミナくん。て、シバは?」
 気づけばシバはいない。さっきまでいたようだが。

「あのさ思ったけど」
「なぁに、李仁」
「……私の思い違いかもしれないけどさ。シバは明里ちゃんとうまくいってない」
 そういうと湊音は頷いた。

「うん、僕もそう思ってた」
「子どもの面倒を見てくれるただの気前のいいお兄さん的存在よね、シバは」
「二人の間にも関係なさそうだし」
「二人に関係があったら私たちのこと相手にしないだろうし……昨日も激しかったもん」
「そもそも同棲はとっくにしてるはずよねー」
 二人は見つめあって頷き、笑った。


 その頃シバはというと……。
「ねぇ、前から気になってたんだけどさ」
「は、はい……」
 奥の方で作業をしている麻衣の横に行き話しかけていた。

 そしてその後、シバはちょこちょこ朝帰りが増え、とうとう数週間後、シバは李仁と湊音の部屋から出て行くことになり、長く続くかと思った男3人暮らしもあっけなく終わってしまったのであった。

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