上 下
40 / 56
2021

デザートを食べながら

しおりを挟む
『二人ともありがとうな。子供たちもバクバク食べてる。もう少ししたら明里帰ってくる』

李仁はシバから来たメールを読み上げる。二人は自分たち分に取り分けたご飯を食べ、片付けをしている。
「一緒にシバの荷物も持っていけばよかったかなー」
「まぁ明日取りに来るでしょ」
「ほんと作戦うまくいく?」
「いかないと困る……」

食器洗い機に次々と入れていき、入らないものは湊音が洗って李仁が布巾で拭いている。
「ミナくんはやっぱりシバのことは忘れられない?」
「……」
「夢語ってた中でシバの名前出たし」
「ごめん、怒ってるよね」
「別に」
李仁は少し機嫌が悪い。車の中では使えるものは使えと言ってたり、昨日はシバと李仁の二人はキスをしていたのだが。

「まぁシバが剣道場にいる限り無理だろうけどね」
「ごめんね、李仁」
「何度も謝らない、私も蒸し返したの悪かった……」
「……」
「もう終わったからデザート食べましょ」
李仁はしまった……と湊音の表情を見てそう思う。

二人は会話をしないままデザートを食べている。李仁は湊音を気にしながら。
早めに食べ終わり、スマホで調べ物をする。子ども食堂のことである。

「……本気にならなくてもいいんだよ? 子ども食堂」
「えっ」
湊音は画面を見ずにそう言った。

「李仁がいないと出来ないなんてダメだよな……まだ剣道教室続けて無理ないように働くよ」
「……諦めるの?」
「やっぱ無理だよ。絶対また多くの人に迷惑かける」
湊音はデザートにあまり手をつけていない。

「……わたしは子ども食堂、いいと思った」
「李仁……」 
「ミナくんのそばにいられるじゃない、ずっと……無理だったら無理でまた二人で頑張ればいいのよ」
「……頑張るか」
李仁はスマホを置き両手を後ろに伸ばす。

「なーんだ、せっかくミナくんなんか未来のことを語って……調子良くなったのかなーーって思ったけどねぇー」
「ごめんね、期待させちゃっ……」
湊音の頬を李仁が手で挟む。

「はーい、またごめんなさいって。今度またごめんなさいって言ったらこのままキスする」
「んぐぐー、言っても言わなくてもキスするでしょ?」
「ご名答ーっ」
李仁はそのままキスをした。チュッチュと何度も。

二人は笑ってふざけあう。李仁が湊音からスイーツを奪って食べようとする。
「もうまだ食べてないー」
「食べてないじゃん」
「……ん? また雨降ってきた?」
湊音は雨の音で気づいた。少しの雨音であったが。

と同時にインターフォンが鳴る。
「あ、私がモニター見てくる」
李仁がモニターを見に行った。湊音はリビングの窓から外を見る。少しずつ強くなる雨。

「ミナくん!」
「どうしたの、李仁?」

「……シバが帰ってきた」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

倫理観のないとある世界のとある一組

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:4

まさか彼女が

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:18

ドエロティック 悪役令嬢物語

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:13

[R18]最悪の一人かくれんぼ

ライト文芸 / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:1

憎い男に囚われ抵抗できない私はただ甘く啼かされる

恋愛 / 完結 24h.ポイント:134pt お気に入り:32

処理中です...