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2021
一日目の夜
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「たく、遅いなぁ……シバのことだしお隣さんと揉めてなきゃいいけど」
一方湊音は二人のいちゃつきを知らず部屋で待っている。落ち着くことができず、夜ご飯の準備に取り掛かることにした。
もともとビーフシチューの予定でシバを泊めることにあたり、普段は一箱は多すぎるので半量である2人前×1.5で作っているが、大食いのシバのことを考えるとそれ以上必要かと考えてしまう湊音。
「まぁ余っても明日の朝も食べればいいか」
と、一箱まるごと使うことを決めたようだ。
具材は昼の時に李仁が要領よく切っておいてあったのであとは煮込むだけである。
「ブロッコリーでかさ増しするか」
ザクザクとブロッコリーを切って皿によけておき、シチュー鍋に具材と水を加えて煮込む。
と、その時にスマホに着信があった。湊音はエプロンで手を拭いて着信に出る。美守からだった。
「おう、美守。今日もお疲れ」
『うん。今日は李仁さんも来てくれたね。あのさ、ちょっと今いい?』
「いいぞ、どした」
『……あのね』
最近美守は新しい父親のことを気遣ってか美守と会う回数を減らしているが、電話をするようになった。
内容はたわいもない話で、学校での出来事や剣道のこと。
湊音はシチューの火加減を見ながら話を聞いてやる。高校教師をやってたこともあり、聞くのは得意である。
前よりも美守の話の仕方がうまくなったと心なしか感じるようだ。
20分ほど話した後、ちょうどシチューも弱火にした。
「じゃあそろそろ」
『……うん』
すこし名残惜しそうに美守はうなずく。
「また気軽に電話しろ。あとさ」
『なぁに』
「シバ……先生のこと、どう思う?」
ふと湊音は聞いてみた。
『ん? かっこいいと思う! 好きだよ。どうして聞いたの?』
即答で帰ってきてびっくりする湊音。子供に人気なのは本当のようである。
「いや、聞いただけ」
と、バイバイと言って電話を切った。
「にしても二人、本当に遅すぎる……」
シチューの煮込み時間で気を紛らわそうとしたが美守からの電話が救いだった。
すると二人が帰ってきた後が玄関先からした。先に台所に来たのは李仁だった。
彼は袋を持っていた。中からビール、おつまみ、刺身を出してきた。
「シバが奢ってくれた。家に居させてもらうわけだしって」
しかしそのシバは台所に来ない。
「シバ、トイレだって」
湊音は李仁からビールを受け取る。その時だった。
「ミナくん、どうした?」
湊音は李仁を見て少し固まってたが、そう言われてハッとして笑顔になった。
「ううん、洋風に刺身って大丈夫?」
「いいんじゃない? あいつが食べたいって言うから」
「だよねー」
と冷蔵庫に刺身を入れる。
湊音は一瞬李仁の服から感じとった匂い……。シバの吸っているタバコと、シバの香水。
「……」
一方湊音は二人のいちゃつきを知らず部屋で待っている。落ち着くことができず、夜ご飯の準備に取り掛かることにした。
もともとビーフシチューの予定でシバを泊めることにあたり、普段は一箱は多すぎるので半量である2人前×1.5で作っているが、大食いのシバのことを考えるとそれ以上必要かと考えてしまう湊音。
「まぁ余っても明日の朝も食べればいいか」
と、一箱まるごと使うことを決めたようだ。
具材は昼の時に李仁が要領よく切っておいてあったのであとは煮込むだけである。
「ブロッコリーでかさ増しするか」
ザクザクとブロッコリーを切って皿によけておき、シチュー鍋に具材と水を加えて煮込む。
と、その時にスマホに着信があった。湊音はエプロンで手を拭いて着信に出る。美守からだった。
「おう、美守。今日もお疲れ」
『うん。今日は李仁さんも来てくれたね。あのさ、ちょっと今いい?』
「いいぞ、どした」
『……あのね』
最近美守は新しい父親のことを気遣ってか美守と会う回数を減らしているが、電話をするようになった。
内容はたわいもない話で、学校での出来事や剣道のこと。
湊音はシチューの火加減を見ながら話を聞いてやる。高校教師をやってたこともあり、聞くのは得意である。
前よりも美守の話の仕方がうまくなったと心なしか感じるようだ。
20分ほど話した後、ちょうどシチューも弱火にした。
「じゃあそろそろ」
『……うん』
すこし名残惜しそうに美守はうなずく。
「また気軽に電話しろ。あとさ」
『なぁに』
「シバ……先生のこと、どう思う?」
ふと湊音は聞いてみた。
『ん? かっこいいと思う! 好きだよ。どうして聞いたの?』
即答で帰ってきてびっくりする湊音。子供に人気なのは本当のようである。
「いや、聞いただけ」
と、バイバイと言って電話を切った。
「にしても二人、本当に遅すぎる……」
シチューの煮込み時間で気を紛らわそうとしたが美守からの電話が救いだった。
すると二人が帰ってきた後が玄関先からした。先に台所に来たのは李仁だった。
彼は袋を持っていた。中からビール、おつまみ、刺身を出してきた。
「シバが奢ってくれた。家に居させてもらうわけだしって」
しかしそのシバは台所に来ない。
「シバ、トイレだって」
湊音は李仁からビールを受け取る。その時だった。
「ミナくん、どうした?」
湊音は李仁を見て少し固まってたが、そう言われてハッとして笑顔になった。
「ううん、洋風に刺身って大丈夫?」
「いいんじゃない? あいつが食べたいって言うから」
「だよねー」
と冷蔵庫に刺身を入れる。
湊音は一瞬李仁の服から感じとった匂い……。シバの吸っているタバコと、シバの香水。
「……」
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