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第四十八話 報告後に
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「理事長が旅立つ前にご報告できて嬉しいです。みんなには新しい理事長にまずご報告してから、体育祭おわったころにと」
「それはそれはおめでとう。前からおつきあいしてる……」
ジュリはシバを見る。シバは目線を逸らした。
「はい。そうです……結婚と言っても同性婚は日本ではできないので自治体独自のパートナーシップ協定ですが」
「なるほどね。そうきたのね。最近できた制度だし……にしても急だったわね」
湊音はシバの方を見ない。
「……彼が覚悟してくれたんです。こんな僕だけど一緒にいたいって。支えていきたいって。その時にこの制度の話を聞いて。夏休み中、彼が気晴らしにって旅行連れてってくれてその時に……プロポーズされました」
「まぁ、お熱いこと。おめでとう」
「ありがとう、ございます……親御さんはどうだったの? お父様……槻山委員長は」
「最初は反対されました。でも彼の説得、そういうのうまいんですよ、彼」
湊音は少しにやけた。
「惚気ちゃって」
「すいません……父も母も彼が説得してくれて。なんとか認めてくれました」
「まぁ、理解のあるご家庭。さすが槻山委員長……とても柔軟な考えをしてらっしゃる。春の総会でも同性愛のことに関しても興味を持っていたのは息子であるあなたの存在もあったのかしら。本当おめでとう」
ジュリは湊音の手を握る。
「て、離婚届出した人間が祝福するだなんて縁起悪いわねー」
「いやいや……僕もバツイチですし、仲間入り……なーんちゃって」
ジュリの顔は固まった。湊音はアワアワとする。
「まあここにいる3人全員女と結婚して子供作って失敗した野郎しかいない、こんな偶然あるか?」
とシバが割って入る。
「あら、そうね。ほほほほほ……て、シバも祝福しなさいよ。湊音先生に。私は先に着替えてくる」
と湊音の手を振り解き去っていく。
「……ジュリの地雷踏んだな、湊音」
「こういうところがだめなんだよなぁ」
シバはまだ祝福する気持ちになれない。汗まみれのTシャツを脱ぎ肌着だけになり何も言わず剣道室まで歩く。
部活動はもちろんやっていないし体育の授業も今の時期は剣道をやってないため数週間開いてなかったがシバが定期的に掃除や草抜きや換気をしていた。
「せっかく畳変えたばかりなのになー。あっちの高校に畳持ってってもらうか?」
「ううん、そんなことはしない」
意外と早い回答にシバはびっくりした。
「我が校では廃部になっちゃったけど絶対にここに剣道部を戻そうと思っている。女子生徒で剣道をやりたい子が数人いたんだ……だから来年の春までにはここで剣道ができるように目指してる」
「まじか? あんなに弱気になっていたおまえが」
とふと気づくと湊音の左手薬指に何か光るものが。シバはガッと掴むと指輪であった。
「……いつまでも弱気でいられないよね。あの事件はショックだったけどさ。高畑は一生懸命リハビリしてるし、宮野も他の部員たちに指導してるようだし……あ、たぶん夏休み中にシバが宮野くんにお兄さんと会わせてくれたのが大きかったと思う」
「ああ、そういえば……」
シバは瀧本に相談して宮野と彼の兄を面会させたそうだ。宮野の兄も心配して会いたかったようだ。
「立ち会えなかったけどかなりお兄さんに怒られたようで気が引き締まったらしい。でも時間オーバーするくらい話をしたらしい。宮野が最後の試合になる春大会に間に合うよう学校に話をしたいと思う」
湊音の目は真剣そのものだった。それはシバと出会ったころよりも強いものでシバは見たことのない顔つきであった。
これはシバと出会って一緒に剣道部をやってきたからか、それとも結婚するからか。
「だからシバも一緒に協力して欲しいんだ」
と湊音はシバの手を掴む。
シバの手はマメは減り爪の中には土や細かな石が入ってる。
「お、おう……」
シバは呆気にとられる。そして抱きつかれた。
「おいおいおいおい……新婚さんっ」
シバは体を離すが湊音は首を横に振る。
「……そうだったね。僕結婚するけどシバとはいつまでも良い関係でいたい」
「良い関係って……」
シバはまただ、と。自分が好きになった相手は時が来ると相手ができたり遠くに離れることになるのだがまだ好きでいたいと相手はシバと縁を切ろうとしないのだ。
「シバ、まだ正式には結婚してないの。……抱いて」
「……!!!」
湊音はこんなに大胆だったか? とシバは唾を飲み込んだ。
そういえばあの夜も
「シバ、もっと抱いて……」
と上目遣いで言われた時にシバはピークに達して湊音を押し倒し朝まで愛しあったことを。
その時と同じ上目遣いだ。
「バカか、湊音……いつまでも良い関係でいるよ」
と畳の上で湊音を押し倒し、キスをした。湊音も舌を入れ音を立てて吸い付くように久しぶりにキスをする。
「シバ……すごい汗臭い……それが好き……いつもその匂いで僕を抱いてくれた」
「この柑橘系のお前の匂いがたまらんだよ。これがあの夜を思い出させる……」
「シバぁっ」
「湊音!!!!」
シバはここが剣道室であることを思い出したがまぁいいかと湊音を愛した。
過去に愛した李仁、その殻を重ねて愛し、そばに付き添って愛を育んでくれたジュリ……だがシバはやっぱり湊音だ、湊音の代わりはいない……。
「それはそれはおめでとう。前からおつきあいしてる……」
ジュリはシバを見る。シバは目線を逸らした。
「はい。そうです……結婚と言っても同性婚は日本ではできないので自治体独自のパートナーシップ協定ですが」
「なるほどね。そうきたのね。最近できた制度だし……にしても急だったわね」
湊音はシバの方を見ない。
「……彼が覚悟してくれたんです。こんな僕だけど一緒にいたいって。支えていきたいって。その時にこの制度の話を聞いて。夏休み中、彼が気晴らしにって旅行連れてってくれてその時に……プロポーズされました」
「まぁ、お熱いこと。おめでとう」
「ありがとう、ございます……親御さんはどうだったの? お父様……槻山委員長は」
「最初は反対されました。でも彼の説得、そういうのうまいんですよ、彼」
湊音は少しにやけた。
「惚気ちゃって」
「すいません……父も母も彼が説得してくれて。なんとか認めてくれました」
「まぁ、理解のあるご家庭。さすが槻山委員長……とても柔軟な考えをしてらっしゃる。春の総会でも同性愛のことに関しても興味を持っていたのは息子であるあなたの存在もあったのかしら。本当おめでとう」
ジュリは湊音の手を握る。
「て、離婚届出した人間が祝福するだなんて縁起悪いわねー」
「いやいや……僕もバツイチですし、仲間入り……なーんちゃって」
ジュリの顔は固まった。湊音はアワアワとする。
「まあここにいる3人全員女と結婚して子供作って失敗した野郎しかいない、こんな偶然あるか?」
とシバが割って入る。
「あら、そうね。ほほほほほ……て、シバも祝福しなさいよ。湊音先生に。私は先に着替えてくる」
と湊音の手を振り解き去っていく。
「……ジュリの地雷踏んだな、湊音」
「こういうところがだめなんだよなぁ」
シバはまだ祝福する気持ちになれない。汗まみれのTシャツを脱ぎ肌着だけになり何も言わず剣道室まで歩く。
部活動はもちろんやっていないし体育の授業も今の時期は剣道をやってないため数週間開いてなかったがシバが定期的に掃除や草抜きや換気をしていた。
「せっかく畳変えたばかりなのになー。あっちの高校に畳持ってってもらうか?」
「ううん、そんなことはしない」
意外と早い回答にシバはびっくりした。
「我が校では廃部になっちゃったけど絶対にここに剣道部を戻そうと思っている。女子生徒で剣道をやりたい子が数人いたんだ……だから来年の春までにはここで剣道ができるように目指してる」
「まじか? あんなに弱気になっていたおまえが」
とふと気づくと湊音の左手薬指に何か光るものが。シバはガッと掴むと指輪であった。
「……いつまでも弱気でいられないよね。あの事件はショックだったけどさ。高畑は一生懸命リハビリしてるし、宮野も他の部員たちに指導してるようだし……あ、たぶん夏休み中にシバが宮野くんにお兄さんと会わせてくれたのが大きかったと思う」
「ああ、そういえば……」
シバは瀧本に相談して宮野と彼の兄を面会させたそうだ。宮野の兄も心配して会いたかったようだ。
「立ち会えなかったけどかなりお兄さんに怒られたようで気が引き締まったらしい。でも時間オーバーするくらい話をしたらしい。宮野が最後の試合になる春大会に間に合うよう学校に話をしたいと思う」
湊音の目は真剣そのものだった。それはシバと出会ったころよりも強いものでシバは見たことのない顔つきであった。
これはシバと出会って一緒に剣道部をやってきたからか、それとも結婚するからか。
「だからシバも一緒に協力して欲しいんだ」
と湊音はシバの手を掴む。
シバの手はマメは減り爪の中には土や細かな石が入ってる。
「お、おう……」
シバは呆気にとられる。そして抱きつかれた。
「おいおいおいおい……新婚さんっ」
シバは体を離すが湊音は首を横に振る。
「……そうだったね。僕結婚するけどシバとはいつまでも良い関係でいたい」
「良い関係って……」
シバはまただ、と。自分が好きになった相手は時が来ると相手ができたり遠くに離れることになるのだがまだ好きでいたいと相手はシバと縁を切ろうとしないのだ。
「シバ、まだ正式には結婚してないの。……抱いて」
「……!!!」
湊音はこんなに大胆だったか? とシバは唾を飲み込んだ。
そういえばあの夜も
「シバ、もっと抱いて……」
と上目遣いで言われた時にシバはピークに達して湊音を押し倒し朝まで愛しあったことを。
その時と同じ上目遣いだ。
「バカか、湊音……いつまでも良い関係でいるよ」
と畳の上で湊音を押し倒し、キスをした。湊音も舌を入れ音を立てて吸い付くように久しぶりにキスをする。
「シバ……すごい汗臭い……それが好き……いつもその匂いで僕を抱いてくれた」
「この柑橘系のお前の匂いがたまらんだよ。これがあの夜を思い出させる……」
「シバぁっ」
「湊音!!!!」
シバはここが剣道室であることを思い出したがまぁいいかと湊音を愛した。
過去に愛した李仁、その殻を重ねて愛し、そばに付き添って愛を育んでくれたジュリ……だがシバはやっぱり湊音だ、湊音の代わりはいない……。
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