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新事実
第四十六話 最悪
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シバと湊音は呼び出された市の病院に駆けつけた。ジュリは学校に残っている。
「俺あとあのカツだけだったのに」
とシバは弁当の未練をタクシーの中で言い、湊音はシバの脇腹を小突く。
「わかってるよ、冗談だよ。好きなものを後で食べる性格が裏目に出た」
「ほら、そんなこと言うなよ。にしても……」
湊音は手が震えている。シバがしっかり握りタクシーから降りた。
病院に入り受付で案内をしてもらい慌てて病室へ。
湊音は見覚えのある人たちを見つけた。
「宮野くん! 高畑くん!」
宮野、高畑の両親がいた。泣いている者もいれば湊音たちの顔を見て目を見開いて怒りをあらわにした。
それは宮野の父親だった。すぐに湊音に掴みかかる。さすが特殊機動隊と剣道部主将の息子たちの親ともあってか体格が良く湊音は身動きが取れない。
実の所母親の方が北海道の元警察官で剣道をしていたというのもあるのだが宮野の父も力は上である。
「すいません……僕ら顧問たちが最後までご両親のもとに返していれば」
「てっきり私たちはそうかと思っていえでまってたんですよ、なのに!」
宮野の父を必死に抑えるのが宮野の母というのもすごいところなのだが。
「やめて、お父さん! 僕がいけないんだ」
と出てきたのは宮野だった。松葉杖をつき左足首は湿布と絆創膏、頭と左手に包帯を巻いている。顔も殴られて腫れていた。
とても痛々しい、と湊音は宮野に謝る。
「先生たちは悪くないよ、さっきから言ってるじゃん」
「うるさい。確かにお前たちも寄り道したのはあかんが先生もちゃんとそこは……」
湊音たちは思い出した。宮野と高畑以外は家付近の駅で降り、残った2人と共に駅で親を待とうと湊音は言ったのだが宮野たちは親がすぐそこのところで待ってますという言葉を信じて解散したのである。
「……少しコンビニで合宿お疲れ様ってアイスを買いに行こうと思って。そしたらそのコンビニであの事件の逮捕されたグループの奴らに絡まれて」
同じく包帯を腕に巻いた高畑もやってきてそういうとシバが彼に近づいた。
「何やってんだ! 最後の最後まで気を抜くな! 合宿は家に帰ってまでが合宿だろうが、このドアホ! この腕、つかいものにならんだろ、なんのための合宿だった?!」
「ごめんなさい、ごめんなさい」
シバは湊音に抑えられる。すごい形相だ。高畑の親は
「確かに息子も悪かったですし一番は危害を与えた不良たちですが……先生たちも最後まで親御さんのもとに受け渡す、それを怠ったから……」
「なんだよ、子供のこと棚に上げて。お前の息子が寄り道しなければよ!」
「逆ギレか? そうそ、息子から聞きましたよ。元警察でヤンキーぽい男が顧問になったって」
高畑の父がそういうとシバは高畑を睨む。湊音は落ち着け、と言うが高畑をものすごく睨む。高畑は顔を下げた。
「てめぇ、そんなふうに影で言ってたのかよ……」
「警察で元日本一とは聴きましたがその言葉遣い、いくらなんでも問題ではないのでしょうか。他にも叩けばいくらか問題点は出るかもしれませんね。上の息子もこの部でお世話になってたけどやはり大島先生がいないと室も下がってしまうのですね。確かに息子の行為もいけませんが……こんな問題のある顧問がいるのは不安ですわ」
宮野の母もそう言う。
湊音は大島がいないだけでと言う言葉を聞いてガクンと首を垂れた。
「やっぱ僕では……ダメなんだ」
「湊音。そんなこと言われて気を落とすな。十分ここまで立て直したじゃないか。お前のない分は俺が補って、その反対も……」
「シバ、やっぱり無理だよ」
「湊音……」
すると宮野が泣き出し、高畑もブワッと泣いた。
「ごめんなさい、先生っ……」
「せんせぇっ……せんせぇ……」
どうやら今回ひき逃げ事件の解決と同時に強姦事件も解決したわけで、そのせいで解散になった不良たちが腹いせに湊音たちの学校の生徒を狙っていたそうだ。
宮野は全治二ヶ月、高畑は全治半年。主将と副将の二人を予選大会前に失ったことになる。
まだ一年でエースの三浦と合宿で頭角を表した藤井はいるのだが力及ばず予選落ちになってしまった。
そう、約束通りにはいかなかったためジュリもそこは譲れず廃部を決定せざるおえなかった。
もちろん暴力沙汰は加害者たちが悪いが、部員が寄り道したことや顧問たちの責任問題、経費捻出のためにクイズ部の教師を脅したことも明るみになり重ねに重ねてのことである。
しかし湊音や大島の妻、三葉の尽力もあってか隣の剣道部と合併する形になり廃部は免れたが本校での剣道部は事実上廃部である。
湊音もそしてシバも顧問から降ろされることになった。
「俺あとあのカツだけだったのに」
とシバは弁当の未練をタクシーの中で言い、湊音はシバの脇腹を小突く。
「わかってるよ、冗談だよ。好きなものを後で食べる性格が裏目に出た」
「ほら、そんなこと言うなよ。にしても……」
湊音は手が震えている。シバがしっかり握りタクシーから降りた。
病院に入り受付で案内をしてもらい慌てて病室へ。
湊音は見覚えのある人たちを見つけた。
「宮野くん! 高畑くん!」
宮野、高畑の両親がいた。泣いている者もいれば湊音たちの顔を見て目を見開いて怒りをあらわにした。
それは宮野の父親だった。すぐに湊音に掴みかかる。さすが特殊機動隊と剣道部主将の息子たちの親ともあってか体格が良く湊音は身動きが取れない。
実の所母親の方が北海道の元警察官で剣道をしていたというのもあるのだが宮野の父も力は上である。
「すいません……僕ら顧問たちが最後までご両親のもとに返していれば」
「てっきり私たちはそうかと思っていえでまってたんですよ、なのに!」
宮野の父を必死に抑えるのが宮野の母というのもすごいところなのだが。
「やめて、お父さん! 僕がいけないんだ」
と出てきたのは宮野だった。松葉杖をつき左足首は湿布と絆創膏、頭と左手に包帯を巻いている。顔も殴られて腫れていた。
とても痛々しい、と湊音は宮野に謝る。
「先生たちは悪くないよ、さっきから言ってるじゃん」
「うるさい。確かにお前たちも寄り道したのはあかんが先生もちゃんとそこは……」
湊音たちは思い出した。宮野と高畑以外は家付近の駅で降り、残った2人と共に駅で親を待とうと湊音は言ったのだが宮野たちは親がすぐそこのところで待ってますという言葉を信じて解散したのである。
「……少しコンビニで合宿お疲れ様ってアイスを買いに行こうと思って。そしたらそのコンビニであの事件の逮捕されたグループの奴らに絡まれて」
同じく包帯を腕に巻いた高畑もやってきてそういうとシバが彼に近づいた。
「何やってんだ! 最後の最後まで気を抜くな! 合宿は家に帰ってまでが合宿だろうが、このドアホ! この腕、つかいものにならんだろ、なんのための合宿だった?!」
「ごめんなさい、ごめんなさい」
シバは湊音に抑えられる。すごい形相だ。高畑の親は
「確かに息子も悪かったですし一番は危害を与えた不良たちですが……先生たちも最後まで親御さんのもとに受け渡す、それを怠ったから……」
「なんだよ、子供のこと棚に上げて。お前の息子が寄り道しなければよ!」
「逆ギレか? そうそ、息子から聞きましたよ。元警察でヤンキーぽい男が顧問になったって」
高畑の父がそういうとシバは高畑を睨む。湊音は落ち着け、と言うが高畑をものすごく睨む。高畑は顔を下げた。
「てめぇ、そんなふうに影で言ってたのかよ……」
「警察で元日本一とは聴きましたがその言葉遣い、いくらなんでも問題ではないのでしょうか。他にも叩けばいくらか問題点は出るかもしれませんね。上の息子もこの部でお世話になってたけどやはり大島先生がいないと室も下がってしまうのですね。確かに息子の行為もいけませんが……こんな問題のある顧問がいるのは不安ですわ」
宮野の母もそう言う。
湊音は大島がいないだけでと言う言葉を聞いてガクンと首を垂れた。
「やっぱ僕では……ダメなんだ」
「湊音。そんなこと言われて気を落とすな。十分ここまで立て直したじゃないか。お前のない分は俺が補って、その反対も……」
「シバ、やっぱり無理だよ」
「湊音……」
すると宮野が泣き出し、高畑もブワッと泣いた。
「ごめんなさい、先生っ……」
「せんせぇっ……せんせぇ……」
どうやら今回ひき逃げ事件の解決と同時に強姦事件も解決したわけで、そのせいで解散になった不良たちが腹いせに湊音たちの学校の生徒を狙っていたそうだ。
宮野は全治二ヶ月、高畑は全治半年。主将と副将の二人を予選大会前に失ったことになる。
まだ一年でエースの三浦と合宿で頭角を表した藤井はいるのだが力及ばず予選落ちになってしまった。
そう、約束通りにはいかなかったためジュリもそこは譲れず廃部を決定せざるおえなかった。
もちろん暴力沙汰は加害者たちが悪いが、部員が寄り道したことや顧問たちの責任問題、経費捻出のためにクイズ部の教師を脅したことも明るみになり重ねに重ねてのことである。
しかし湊音や大島の妻、三葉の尽力もあってか隣の剣道部と合併する形になり廃部は免れたが本校での剣道部は事実上廃部である。
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