冬月シバの一夜の過ち

麻木香豆

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新事実

第四十五話 イヤリング

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 シバの部屋に行き、事前にジュリが用意していた野菜スープと共に駅弁を食べる。

 普段買わない弁当だが地元で買えたのかと思うと一気にプレミアム感が駄々下がりなシバ。
「こんな派手なイヤリング……そういえば合宿前の時も似たようなのつけてたな」
「学校では使えなかったが飲み会とか放課後帰る時にそれに付け替えてたのはみたことがあったんだ」
「あとお前と彩子先生が飲んだ時とか」
「!!!」
 湊音は顔を真っ赤にする。ジュリはもぐもぐと弁当を食べている。

「私は知ってるから隠さなくてもいいわよ。それにそれは女性に人気のブランドものだから落とした時は顔真っ青だったかもねー」
「そんなに高いのか?」
「あなたたちは一般的な有名ブランドとかしか知らないでしょ。ああいうブランドをあげれば女の子は喜ぶ、それは間違っててよ。こっちの方が価値もあって喜ばれる。何せ一点ものだから」

 ジュリは自分の髪の毛をかき上げると似たようなイヤリングを二人に見せつけた。

「給料一月分飛ぶわね」
「うわ、そんなにするものを……女ってわかんないな」

 湊音がまじまじとみている。彼はかなり疎そうなのはわかる。
「まぁ彩子先生が買ったのか、買ってもらったのかわからないけどね」
 だがシバは違った。

「いや、こりゃ買ってもらったな」
「えっ……」
「彩子先生のがここにある……大島さんの身近な人でこれと似たようなデザインのものを身につけていた人物がもう1人」
 ジュリが反応した。湊音は分からなかったようだ。

「……湊音先生、覚えてない? 合宿の日にみんな送り出してくれたじゃない」
「そうですね。彩子先生はまたあれと似たようなのを身につけていた」
「あれも同じブランド。きっと無くしたからと大島先生に買ってもらったのよ……じゃなくて!」
「えぇ……大島先生……ん? あっ!!!!」

 湊音はわかったようで相変わらずオロオロ。シバも頷いた。

「そう、大島三葉。彩子先生からこのブランドを教えてもらい彩子さんに買ってもらったのと同時に三葉さんへのプレゼントとして同じブランドのものを買った。男ってもんはまっすぐだもんでな、特に剣道一筋の男である大島はな。ひねりもなしに妻と愛人、同じブランドのもの……まぁ相当無理しただろうなぁ」
「給料ぶっ飛ぶとか言ってましたけど……大島先生、彩子さんと体の関係があったなんて。まぁ他の男性教諭に手をつけてたから時間の問題だと思ってたし、ずっと彩子さんに距離を置いてましたから……」

 あくまでもこの話はシバの推理だろうが3人の中で推理はまだ進む。

「でもこうやってベッドの下にイヤリングがあったのは……この給料吹っ飛ぶやつだからえねぇ。彩子さん自信が買ってたら必死に探すだろうけども新しいものを持ってるってことはやっぱり買ってもらったから……」

 ジュリはこの手の話が好きらしい。前のめりになる。

「勝手に落ちてしまったんじゃなくって、彩子さんが下に落としたのだろうか。それしか考えられないんだけどなぁ」
 湊音は恩師の不倫に正直ショックを受けているようだ。

「きっと彩子さんは埒が開かなくなってイヤリングをわざと落として無くした! と騒いで……奥さんと別れないのなら新しいイヤリングを買ってちょうだいって脅したんじゃないのか?」

 生前の大島を知らないシバはそう推理すると、3人同時に

「恐ろしい……」
 と口にした。

「お前らも気をつけろよ……」
 シバは過去の修羅場を思い出した。

「シバ、お前が言うとかなりリアルなんだけど」
「そうそう……だってもう修羅場が起こってもおかしくない? このメンバーって」
 ジュリが湊音の肩をポンと叩いた。

「え、その。修羅場ってなんのことだよ」
 湊音もシバのことをじっと見る。
「まぁ僕は理事長とは修羅場は起こしたくないので」
「だからなぁ」

 2人は不敵な笑みを浮かべられシバは困惑する。水をガバッと飲み込んだ。と、その時であった。

 プルルルルルルル

 湊音のスマホが鳴った。
「何だろ、こんな時間に……」
 するとシバもスマホを見ると瀧本から着信が何回もあった。電車に乗っている時にマナーモードにしっぱなしであった。だがつい先程の着信のようだった。
「たくー相変わらず鬼電なんだから、瀧本さん。お土産買ってこればよかったかなぁ」
 と電話をかける。ジュリも学校からの転送電話が鳴ったようだ。


「えっ」
「はい……はい、今すぐ向かいます!」
「マジかよ……」
 3人は顔を合わせた。

「……部員たちが病院に!」

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