47 / 53
新事実
第四十四話 帰宅からの……
しおりを挟む
気づくとシバは寝ていた。こんなにすっきりと目が覚めるのはなかなか無い。左肩には温もり。湊音だ。頭を乗せてる。手も繋がれて……。
「うわぁ!」
膝掛けが足元に落ちていた。それに気づいた後に何か視線を感じて手を思い切り振り払ってシバは立ち上がって湊音は座席に倒れ込んでウゲッという声と共に目が覚めた。
その視線の先には宮野。
「お、おまえ……見たか?」
「見たとかどうとかの前にもう行きますよ。もう名古屋に着きました」
「えっ、ま、ま、マジか?」
湊音もそれを聞いて慌てて起き出して眼鏡をかけ直して膝掛けを持ってあわあわしているが寝ぼけているようである。
「忘れ物はないか! はよ行くぞ!」
「他のみんなは?」
「もう外にいます! 大きな荷物は先に運んでますから早く!!!」
シバは宮野にグッジョブ! と思いながらも貴重品、チケットを持って3人は慌てて新幹線の外に出た。
人の多い中、生徒たちが慌てて出てきた3人を囲む。
「はぁ……間に合った」
湊音は寝ぼけてたのかまだ何が何だかのようだったがシバが頬を軽く叩く。シバはそれよりも膝掛けが足元に落ち、繋がれた手を宮野に見られてしまったかと思うと恥ずかしい限りである。宮野を見るが何も言わない。そんな彼にこっそり耳打ちする。
「……お、お前。あれはな、その黙っとけよ」
「何ですか」
「とぼけんじゃないよ、見ただろ……」
「何を」
「あぁぁ……湊音と、湊音先生と手を繋いでたことだよ」
「……あぁ」
宮野は思い出したかのように頷く。
「別に、それが?」
「それが? じゃないだろ」
「いや、もうみんな承知ですから」
シバは部員たちの顔を見る。
「もうわかってますから、お二人の関係は」
「なっ……」
湊音はン? って顔をする。
「でも湊音先生にとっては浮気になるんですかねぇ……僕らは2人のことはとやかく何も言いません」
「あははは……」
すると宮野がニコッと笑った。シバはその不敵な笑みをどこかで見た気がする。そうだ、彼の兄も同じような顔をしていた。
その表情の時は何かシバの何かを握った時の顔だ。
「……もう夜ご飯の時間だなぁーって思いましてね」
「えっ、その……」
部員たちの方を見ると彼らも不敵な笑みを浮かべた。
「わかったぁああああ!!!! 名古屋で晩御飯奢る!!!!」
「ヤッタァ!」
シバは参った。
流石に夜も遅かったので名古屋駅構内で美味しそうな駅弁を1人ずつ配って帰ることになった。
地元の駅に着くとジュリが待っていた。
「お帰りなさい、みんな」
「ジュリ……」
生徒たちもジュリに挨拶してそれから散り散りに帰っていった。
「どうだった、お二人とも。お疲れ様。こんなに手にマメを作って。痛そうだわぁ」
「これくらいどうたってことないです。とても有意義な三日間になりました。この度はありがとうございました」
湊音は深々と頭を下げた。しかしジュリはじっと2人を見ている。シバが冷や汗が出る。
「2人も色々と有意義に過ごせたんじゃない?」
「……そ、そのお」
「首元にキスマーク!」
シバも湊音も慌て首元を見る。
「ふふふ」
ジュリは笑う。してやられたりである。
「まぁ詳しい話はその弁当を食べながら……ねっ」
「え、弁当……二個しか」
「二個……ねぇ」
目線の先には駅の売店。名古屋で買ったはずの同じ高級弁当がなぜかここでも売っている。
「え……」
ジュリも不敵な笑みを浮かべる。シバと湊音は見つめあって苦笑いするのであった。
「まぁあとそのお弁当がさらに美味しくなるお話もしてあげるから……湊音先生もシバくんの部屋に来なさい」
「あ、僕もですか」
「あなたも帰るつもりだった!?」
湊音はジュリの視線にたじろぐ。
「はい、理事長……。でもその、美味しくなる話って何ですか」
「そ、そうだよ。その美味しくなる話ってさ、なんだ?」
ジュリはカバンから何かを取り出す為ゴソゴソし出した。
「それは……」
「覚えてる? このイヤリング」
シバが以前自分のベッドの下に落ちていたものである。
「てかビニール袋に入れて警察かよ」
「こんないいもの無くしたらやばいでしょ」
湊音はそれをじっと見ている。そして手に取った。
「湊音、どうした」
「そのさ、これ……」
口籠もっている湊音。
「……湊音先生ならこの持ち主わかるでしょ」
ジュリが湊音に近づくと頷いた。
「……彩子先生のだよ」
「え?」
湊音は頷いた。
「うわぁ!」
膝掛けが足元に落ちていた。それに気づいた後に何か視線を感じて手を思い切り振り払ってシバは立ち上がって湊音は座席に倒れ込んでウゲッという声と共に目が覚めた。
その視線の先には宮野。
「お、おまえ……見たか?」
「見たとかどうとかの前にもう行きますよ。もう名古屋に着きました」
「えっ、ま、ま、マジか?」
湊音もそれを聞いて慌てて起き出して眼鏡をかけ直して膝掛けを持ってあわあわしているが寝ぼけているようである。
「忘れ物はないか! はよ行くぞ!」
「他のみんなは?」
「もう外にいます! 大きな荷物は先に運んでますから早く!!!」
シバは宮野にグッジョブ! と思いながらも貴重品、チケットを持って3人は慌てて新幹線の外に出た。
人の多い中、生徒たちが慌てて出てきた3人を囲む。
「はぁ……間に合った」
湊音は寝ぼけてたのかまだ何が何だかのようだったがシバが頬を軽く叩く。シバはそれよりも膝掛けが足元に落ち、繋がれた手を宮野に見られてしまったかと思うと恥ずかしい限りである。宮野を見るが何も言わない。そんな彼にこっそり耳打ちする。
「……お、お前。あれはな、その黙っとけよ」
「何ですか」
「とぼけんじゃないよ、見ただろ……」
「何を」
「あぁぁ……湊音と、湊音先生と手を繋いでたことだよ」
「……あぁ」
宮野は思い出したかのように頷く。
「別に、それが?」
「それが? じゃないだろ」
「いや、もうみんな承知ですから」
シバは部員たちの顔を見る。
「もうわかってますから、お二人の関係は」
「なっ……」
湊音はン? って顔をする。
「でも湊音先生にとっては浮気になるんですかねぇ……僕らは2人のことはとやかく何も言いません」
「あははは……」
すると宮野がニコッと笑った。シバはその不敵な笑みをどこかで見た気がする。そうだ、彼の兄も同じような顔をしていた。
その表情の時は何かシバの何かを握った時の顔だ。
「……もう夜ご飯の時間だなぁーって思いましてね」
「えっ、その……」
部員たちの方を見ると彼らも不敵な笑みを浮かべた。
「わかったぁああああ!!!! 名古屋で晩御飯奢る!!!!」
「ヤッタァ!」
シバは参った。
流石に夜も遅かったので名古屋駅構内で美味しそうな駅弁を1人ずつ配って帰ることになった。
地元の駅に着くとジュリが待っていた。
「お帰りなさい、みんな」
「ジュリ……」
生徒たちもジュリに挨拶してそれから散り散りに帰っていった。
「どうだった、お二人とも。お疲れ様。こんなに手にマメを作って。痛そうだわぁ」
「これくらいどうたってことないです。とても有意義な三日間になりました。この度はありがとうございました」
湊音は深々と頭を下げた。しかしジュリはじっと2人を見ている。シバが冷や汗が出る。
「2人も色々と有意義に過ごせたんじゃない?」
「……そ、そのお」
「首元にキスマーク!」
シバも湊音も慌て首元を見る。
「ふふふ」
ジュリは笑う。してやられたりである。
「まぁ詳しい話はその弁当を食べながら……ねっ」
「え、弁当……二個しか」
「二個……ねぇ」
目線の先には駅の売店。名古屋で買ったはずの同じ高級弁当がなぜかここでも売っている。
「え……」
ジュリも不敵な笑みを浮かべる。シバと湊音は見つめあって苦笑いするのであった。
「まぁあとそのお弁当がさらに美味しくなるお話もしてあげるから……湊音先生もシバくんの部屋に来なさい」
「あ、僕もですか」
「あなたも帰るつもりだった!?」
湊音はジュリの視線にたじろぐ。
「はい、理事長……。でもその、美味しくなる話って何ですか」
「そ、そうだよ。その美味しくなる話ってさ、なんだ?」
ジュリはカバンから何かを取り出す為ゴソゴソし出した。
「それは……」
「覚えてる? このイヤリング」
シバが以前自分のベッドの下に落ちていたものである。
「てかビニール袋に入れて警察かよ」
「こんないいもの無くしたらやばいでしょ」
湊音はそれをじっと見ている。そして手に取った。
「湊音、どうした」
「そのさ、これ……」
口籠もっている湊音。
「……湊音先生ならこの持ち主わかるでしょ」
ジュリが湊音に近づくと頷いた。
「……彩子先生のだよ」
「え?」
湊音は頷いた。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
産卵おじさんと大食いおじさんのなんでもない日常
丸井まー(旧:まー)
BL
余剰な魔力を卵として毎朝産むおじさんと大食らいのおじさんの二人のなんでもない日常。
飄々とした魔導具技師✕厳つい警邏学校の教官。
※ムーンライトノベルズさんでも公開しております。全15話。
年上の恋人は優しい上司
木野葉ゆる
BL
小さな賃貸専門の不動産屋さんに勤める俺の恋人は、年上で優しい上司。
仕事のこととか、日常のこととか、デートのこととか、日記代わりに綴るSS連作。
基本は受け視点(一人称)です。
一日一花BL企画 参加作品も含まれています。
表紙は松下リサ様(@risa_m1012)に描いて頂きました!!ありがとうございます!!!!
完結済みにいたしました。
6月13日、同人誌を発売しました。
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──
守護霊は吸血鬼❤
凪子
BL
ごく普通の男子高校生・楠木聖(くすのき・ひじり)は、紅い月の夜に不思議な声に導かれ、祠(ほこら)の封印を解いてしまう。
目の前に現れた青年は、驚く聖にこう告げた。「自分は吸血鬼だ」――と。
冷酷な美貌の吸血鬼はヴァンと名乗り、二百年前の「血の契約」に基づき、いかなるときも好きなだけ聖の血を吸うことができると宣言した。
憑りつかれたままでは、殺されてしまう……!何とかして、この恐ろしい吸血鬼を祓ってしまわないと。
クラスメイトの笹倉由宇(ささくら・ゆう)、除霊師の月代遥(つきしろ・はるか)の協力を得て、聖はヴァンを追い払おうとするが……?
ツンデレ男子高校生と、ドS吸血鬼の物語。
有能社長秘書のマンションでテレワークすることになった平社員の俺
高菜あやめ
BL
【マイペース美形社長秘書×平凡新人営業マン】会社の方針で社員全員リモートワークを義務付けられたが、中途入社二年目の営業・野宮は困っていた。なぜならアパートのインターネットは遅すぎて仕事にならないから。なんとか出社を許可して欲しいと上司に直談判したら、社長の呼び出しをくらってしまい、なりゆきで社長秘書・入江のマンションに居候することに。少し冷たそうでマイペースな入江と、ちょっとビビりな野宮はうまく同居できるだろうか? のんびりほのぼのテレワークしてるリーマンのラブコメディです
寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる