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第三十五話 昨晩はいかがでしたか?
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次の日の放課後の部活動。
少し眠いシバ。元々ショートスリーパーだから良いものの朝から業者の代わりにやっていたのもある。
それもこれも遠征代の足しになるようにと剣道部員も休み時間総動員してやっていた。
部員たちは疲れを知らず剣道の稽古に明け暮れる。しかしシバは疲れ方の具合から彼らよりも一回り以上年齢が違うということを実感する。
顧問室でシバはグターンとソファーに飛び込む。
「シバ先生、お疲れのようで」
シバの代わりに稽古をつけていた湊音。かなり汗だくだ。久しぶりに一人で部員たちの相手をしたからだ。
「いや、そちらこそ。俺は昨日ゴキゴキのバキバキにされて反対に疲れた」
湊音は胴着を脱ぎボクサーパンツ一枚になる。
「ジュリさんですよね。僕たちも前してもらったことあるんですよ」
「えっ! あの性感マッサージ?!」
シバは飛び起きるがやはり重点的にやられた腰が痛い。
「バカか。整体師探してたら資格持ってるとか言ってたからやってもらったけど後からそういう仕事もしてたって聞いてびっくりした」
「気持ちよかったか?」
シバは普通だったらこの流れで湊音の身体を弄り嫌がられても無理やり触り続けられキスして身体中の匂いを嗅がれて押し倒されるパターンだろうが元気は全くない。
湊音も湊音でそういう展開を期待してるかと思いきやそうでもなさそうだが。
彼はやたらと柔らかい表情をしている。流石にそれにはシバは気づいた。
「……なんかお前、あったか?」
湊音は少しびっくりした表情をしたがそのあとすぐ少し微笑み頷いた。
「わかっちゃいますかね。はずかしい」
と言いながらも話したい、それが表情に滲み出ている。わかりやすい人間である。
「実はね、久しぶりに昨日……恋人に会ったんだ」
「えっ」
シバはそういえば湊音に恋人がいるということを忘れていた。男であることも知っていたがしばらくは互いに忙しくて会えなく、その間にシバという男が割入って愛を育んでいた。
「お、おう……それはいいことだな。会って……その……やったのか」
相変わらずデリカシーのない質問だが湊音は頬を赤くして頷いた。思えばここに来てから湊音がこんな柔らかな表情は見たことがなかった。
「まぁね。久しぶりだったしね」
「でもお前、その同性との愛が戸惑うとかなんたら言ってただろ……それはどうなったんだ?」
「……んー、なんだか素直になれたって言うかさ」
「え?」
「シバとも関係持ってからかなぁ。シバは同性愛者ってわけじゃなくて人をただ欲望のまま愛するって感じがさぁ……」
シバは??? という顔をする。
「欲望のままって言われても否めないけども」
「だから僕も……欲望のまま愛せばいい、相手が異性じゃなくても好きなら好き、セックスしたかったら方法は違うけどすれば良い……そう思ったら恋人のことを素直に愛せたんだ」
「はぁ……」
「彼もすごく喜んでくれて。シバのおかげだよ。ありがとう」
自分はただ湊音の言う通りセックスしたかったらしただけであってそんなことを伝えるためではなかったのだが……。
それとシバの中で今は自分の身近にいて関係を持っているのはジュリと湊音だけであってヒステリックでお世話焼きのジュリに比べたら二人きりだと甘えん坊になり従順になる湊音の方がしっくりきていたところだから恋人のことを聞くと複雑な気持ちになる。
「もちろん彼氏にはシバのことは言わないよ」
「当たり前だろ……言ったらそれは浮気になるし、下手すると修羅場になる」
シバはまじまじと湊音を見る。いろんな女性と関係を持っていただけあって様々な修羅場を見てきたシバだからこそ重みのある言葉である。
「……浮気かぁ。いいよ。あっちもしてるから」
「え?! お前の彼氏、他にも相手がいるのか? 男? 女もか?」
「男。元カレとも会ってたりするし、彼が紹介してくれた店でパーティーやったけど殆どが彼と関係があったんだよねー、笑えねぇ」
「うわー、最悪だなぁ……」
人のこと言えないだろ、と突っ込まれてもおかしくはないが湊音の彼氏が自分に似た浮世者と思うと湊音が自分を好きになったのも納得いくシバ。
「日本ではさ、同性同士の結婚できないからさ、一緒に暮らせども異性同士の結婚のように家族にはなれない」
湊音は俯く。表情も暗い。
「そんなんなぁ、結婚とかどうとか関係ないんじゃないのかな……って俺に言われたかないか」
「いや、そんなことはないけど……それがあってなかなか僕は踏み出せないのかもしれない。結婚以前の前に二人の関係」
シバは湊音の頭をポンと撫でる。湊音は恋人との関係や自分の性に対する考えが変わったのにも関わらず法的な問題が大きく立ちはだかっていた。それはどうにもできない。シバにも。
だがシバはせっかくいい関係になってきた湊音がまた自分の元から去ってしまうのでは、そんな不安があった。
今までもそうだ。(幼馴染の恋人はいたが←それは大前提)付き合った女性たちがシバとの関係を終わらすと同時に違う男の元へ巣立っていく。
「……シバは、もしだよ? もし僕と家族になりたい、でも法律ではなれないけど家族、と言う気持ちにはなれるかな?」
「えっ……」
シバは戸惑う。一度は家庭を持った彼だが、きっかけがあれば再婚も考えてはいた。でもなかなか続かなかったのが現実であり、そう決意した時には去られている。
湊音はシバの手を握り、目をじっとして見つめる。潤んだ瞳、シバはドキッとした。
『シバ、湊音先生!』
二人は突然の声にびっくりして間を開ける。ジュリの声だ。顧問室にはカメラもスピーカーもないが剣道室にはある。そこから聞こえてきた。二人は慌てて剣道室に向かう。
『二人とも顧問室でイチャコラせずに理事室に来てちょうだい』
「はぁい……ってイチャこら……顧問室まで聞こえてたんかよ」
シバは昨日の問い詰められた件もあり、まさかとぼそっと言ったつもりだが。
『あんな大声でやってたら嫌でもこっちまで音拾うわよ!』
プツっ
と音声は途切れた。湊音はそれを聞いて顔を真っ赤にする。
「……き、聞こえてたんですね。恥ずかしい」
「マジかよ、カマかけられてたと思ったらわかってたんか」
シバはまたジュリから締められると思うと気が重い。
少し眠いシバ。元々ショートスリーパーだから良いものの朝から業者の代わりにやっていたのもある。
それもこれも遠征代の足しになるようにと剣道部員も休み時間総動員してやっていた。
部員たちは疲れを知らず剣道の稽古に明け暮れる。しかしシバは疲れ方の具合から彼らよりも一回り以上年齢が違うということを実感する。
顧問室でシバはグターンとソファーに飛び込む。
「シバ先生、お疲れのようで」
シバの代わりに稽古をつけていた湊音。かなり汗だくだ。久しぶりに一人で部員たちの相手をしたからだ。
「いや、そちらこそ。俺は昨日ゴキゴキのバキバキにされて反対に疲れた」
湊音は胴着を脱ぎボクサーパンツ一枚になる。
「ジュリさんですよね。僕たちも前してもらったことあるんですよ」
「えっ! あの性感マッサージ?!」
シバは飛び起きるがやはり重点的にやられた腰が痛い。
「バカか。整体師探してたら資格持ってるとか言ってたからやってもらったけど後からそういう仕事もしてたって聞いてびっくりした」
「気持ちよかったか?」
シバは普通だったらこの流れで湊音の身体を弄り嫌がられても無理やり触り続けられキスして身体中の匂いを嗅がれて押し倒されるパターンだろうが元気は全くない。
湊音も湊音でそういう展開を期待してるかと思いきやそうでもなさそうだが。
彼はやたらと柔らかい表情をしている。流石にそれにはシバは気づいた。
「……なんかお前、あったか?」
湊音は少しびっくりした表情をしたがそのあとすぐ少し微笑み頷いた。
「わかっちゃいますかね。はずかしい」
と言いながらも話したい、それが表情に滲み出ている。わかりやすい人間である。
「実はね、久しぶりに昨日……恋人に会ったんだ」
「えっ」
シバはそういえば湊音に恋人がいるということを忘れていた。男であることも知っていたがしばらくは互いに忙しくて会えなく、その間にシバという男が割入って愛を育んでいた。
「お、おう……それはいいことだな。会って……その……やったのか」
相変わらずデリカシーのない質問だが湊音は頬を赤くして頷いた。思えばここに来てから湊音がこんな柔らかな表情は見たことがなかった。
「まぁね。久しぶりだったしね」
「でもお前、その同性との愛が戸惑うとかなんたら言ってただろ……それはどうなったんだ?」
「……んー、なんだか素直になれたって言うかさ」
「え?」
「シバとも関係持ってからかなぁ。シバは同性愛者ってわけじゃなくて人をただ欲望のまま愛するって感じがさぁ……」
シバは??? という顔をする。
「欲望のままって言われても否めないけども」
「だから僕も……欲望のまま愛せばいい、相手が異性じゃなくても好きなら好き、セックスしたかったら方法は違うけどすれば良い……そう思ったら恋人のことを素直に愛せたんだ」
「はぁ……」
「彼もすごく喜んでくれて。シバのおかげだよ。ありがとう」
自分はただ湊音の言う通りセックスしたかったらしただけであってそんなことを伝えるためではなかったのだが……。
それとシバの中で今は自分の身近にいて関係を持っているのはジュリと湊音だけであってヒステリックでお世話焼きのジュリに比べたら二人きりだと甘えん坊になり従順になる湊音の方がしっくりきていたところだから恋人のことを聞くと複雑な気持ちになる。
「もちろん彼氏にはシバのことは言わないよ」
「当たり前だろ……言ったらそれは浮気になるし、下手すると修羅場になる」
シバはまじまじと湊音を見る。いろんな女性と関係を持っていただけあって様々な修羅場を見てきたシバだからこそ重みのある言葉である。
「……浮気かぁ。いいよ。あっちもしてるから」
「え?! お前の彼氏、他にも相手がいるのか? 男? 女もか?」
「男。元カレとも会ってたりするし、彼が紹介してくれた店でパーティーやったけど殆どが彼と関係があったんだよねー、笑えねぇ」
「うわー、最悪だなぁ……」
人のこと言えないだろ、と突っ込まれてもおかしくはないが湊音の彼氏が自分に似た浮世者と思うと湊音が自分を好きになったのも納得いくシバ。
「日本ではさ、同性同士の結婚できないからさ、一緒に暮らせども異性同士の結婚のように家族にはなれない」
湊音は俯く。表情も暗い。
「そんなんなぁ、結婚とかどうとか関係ないんじゃないのかな……って俺に言われたかないか」
「いや、そんなことはないけど……それがあってなかなか僕は踏み出せないのかもしれない。結婚以前の前に二人の関係」
シバは湊音の頭をポンと撫でる。湊音は恋人との関係や自分の性に対する考えが変わったのにも関わらず法的な問題が大きく立ちはだかっていた。それはどうにもできない。シバにも。
だがシバはせっかくいい関係になってきた湊音がまた自分の元から去ってしまうのでは、そんな不安があった。
今までもそうだ。(幼馴染の恋人はいたが←それは大前提)付き合った女性たちがシバとの関係を終わらすと同時に違う男の元へ巣立っていく。
「……シバは、もしだよ? もし僕と家族になりたい、でも法律ではなれないけど家族、と言う気持ちにはなれるかな?」
「えっ……」
シバは戸惑う。一度は家庭を持った彼だが、きっかけがあれば再婚も考えてはいた。でもなかなか続かなかったのが現実であり、そう決意した時には去られている。
湊音はシバの手を握り、目をじっとして見つめる。潤んだ瞳、シバはドキッとした。
『シバ、湊音先生!』
二人は突然の声にびっくりして間を開ける。ジュリの声だ。顧問室にはカメラもスピーカーもないが剣道室にはある。そこから聞こえてきた。二人は慌てて剣道室に向かう。
『二人とも顧問室でイチャコラせずに理事室に来てちょうだい』
「はぁい……ってイチャこら……顧問室まで聞こえてたんかよ」
シバは昨日の問い詰められた件もあり、まさかとぼそっと言ったつもりだが。
『あんな大声でやってたら嫌でもこっちまで音拾うわよ!』
プツっ
と音声は途切れた。湊音はそれを聞いて顔を真っ赤にする。
「……き、聞こえてたんですね。恥ずかしい」
「マジかよ、カマかけられてたと思ったらわかってたんか」
シバはまたジュリから締められると思うと気が重い。
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