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崖っぷちの二人
第十七話 デリカシーない男と嫌がる男
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「ここかぁ」
5分ほどすると遠くから見えていたタワマンに辿り着き、シバは見上げるとその大きさに声も出ない。こんなところに住んでいるのか、自分は教員寮。まぁ贅沢は言ってられないし、拾ってもらった身、まだ教員寮にいられただけでも十分ではないのか、と思うが。
仕事を家でするとのことでこのマンションにいるのだろうがシバは湊音がどの階に住んでいるのかわからない。
「どうしようなぁ。明日も休みだし……まぁ持って帰るか。取りに来るだろうし」
部屋の番号は知らないしわからない。管理人室に聞けばいいことだがめんどくさく感じる、とシバは引き返した。(刑事時代でもよくやっていたこと)
だが。
「シバ!」
そう呼ばれシバは振り返ると湊音がいた。彼の目線はシバの持つ財布だった。すぐに駆け寄りシバが渡すとホッとした顔をする。
「よかったぁ……どこかで落としたかと思ったらシバの部屋に置いてあったのか。ありがとう、ここまで来てくれて」
かなりあたふたしている。
「いや、わからなくてとりあえずここまで来たら偶然」
シバはそういうと湊音からの視線を感じる。盗人のような目で見られている気もして焦る。
「いや、何もしてないし。一応俺元は刑事だし……金は困ってないというと嘘になるけど。そんなこそ泥なことはしない。なんだったら中身確認しろよ」
湊音は慌てて中身を確認する。
「そんなに信用できんのか? それともお金たくさんあったとか? それとも……やましいものとか入ってるとか?」
「あっ……」
そのタイミングで湊音が声を上げた。だがすぐ首を横に振る。
「なんか足らんかったか? 俺は全く触ってないからな!」
シバは強調して言う。
「……無い」
「なにが?!」
湊音は赤面している。
「は、その! ……やっぱなんでも無い」
「いえよ、正直に。部屋に落としたかもしれんから拾ってくるし。お金か? カードか? プリクラか?」
シバが問い詰めると湊音が小声で言う。
「……ドームと、……ん」
「は?」
「コンドームとローション!」
湊音は小声ではっきり言ったあと周りをキョロキョロ見る。そしてまた赤面。
「……」
その時だった。シバはまた何かを思い出した。
『コンドーム? 僕の財布にあるよ』
湊音がとろんとした目でシバをみる。
『あとサンプルのパウチタイプのローションも……入ってるから使って』
ああ、そういえば……あると助かるなぁとシバが湊音の財布に手をやっているシーンが蘇った。
「ああ、やっぱりやってしまったのか」
「そんなに嫌だったのかよ。しかも事故扱い」
「……そ、そそ、そんなことよりも僕は家に戻る!」
「家族の人はなんか言ってたか?」
「……別に。朝帰りか? ってくらい。すまなかった。わざわざ……あっ」
湊音は何かに気付いたのか声を出した。
「財布を届けてくれた人に何割かお礼をしなきゃダメですよね?」
シバはハァ? といきなりの湊音のその言葉に先ほどの弥富の言葉を思い出し、やはり何か湊音は変わった人だと言う感じを受け取ったようだ。
「報労金だがまだ交番に届けたわけでもないし、そもそも俺は拾って届けても辞退する。俺はそういうのは不要だ。……お金ないわけでは無いが」
とシバがいうが湊音は財布を取り出していくらか渡そうとしている。
「どう見ても多い! そんなに払いたかったら俺をこきつかえ。それか昨晩のことを事故だとかいうなら尚更こちらが払う方だ」
とシバは湊音の財布に札を押し込んだ。意外と入ってるなぁとか思いながらも。
「にしてもコンドームはわかるけどさぁ。ローションも普通入れておくかよ……まぁあってよかったけどさ」
「……」
「……? ま、まさかだが」
湊音は縦に頷いた。
「お前、まさか……男とやるのは初めてじゃ無いのか」
「るせぇ。シバこそ……初めてじゃなかったのかよ」
シバは頷いた。
「ああ。まぁもっぱら女のほうだけどよ。男は特定の相手がいた……て、こんないいマンションの前でする話じゃねぇだろ」
湊音は苦笑いした。
「そうですね。って家にあげるわけにはいかんしなぁ……こんな野犬みたいなやつ」
「……ぬぅ」
シバは顔を歪めるが本当はもう戻りたいところである。
「ありがとな」
「……ああ」
二人はまた別れてシバは学校に戻った。
5分ほどすると遠くから見えていたタワマンに辿り着き、シバは見上げるとその大きさに声も出ない。こんなところに住んでいるのか、自分は教員寮。まぁ贅沢は言ってられないし、拾ってもらった身、まだ教員寮にいられただけでも十分ではないのか、と思うが。
仕事を家でするとのことでこのマンションにいるのだろうがシバは湊音がどの階に住んでいるのかわからない。
「どうしようなぁ。明日も休みだし……まぁ持って帰るか。取りに来るだろうし」
部屋の番号は知らないしわからない。管理人室に聞けばいいことだがめんどくさく感じる、とシバは引き返した。(刑事時代でもよくやっていたこと)
だが。
「シバ!」
そう呼ばれシバは振り返ると湊音がいた。彼の目線はシバの持つ財布だった。すぐに駆け寄りシバが渡すとホッとした顔をする。
「よかったぁ……どこかで落としたかと思ったらシバの部屋に置いてあったのか。ありがとう、ここまで来てくれて」
かなりあたふたしている。
「いや、わからなくてとりあえずここまで来たら偶然」
シバはそういうと湊音からの視線を感じる。盗人のような目で見られている気もして焦る。
「いや、何もしてないし。一応俺元は刑事だし……金は困ってないというと嘘になるけど。そんなこそ泥なことはしない。なんだったら中身確認しろよ」
湊音は慌てて中身を確認する。
「そんなに信用できんのか? それともお金たくさんあったとか? それとも……やましいものとか入ってるとか?」
「あっ……」
そのタイミングで湊音が声を上げた。だがすぐ首を横に振る。
「なんか足らんかったか? 俺は全く触ってないからな!」
シバは強調して言う。
「……無い」
「なにが?!」
湊音は赤面している。
「は、その! ……やっぱなんでも無い」
「いえよ、正直に。部屋に落としたかもしれんから拾ってくるし。お金か? カードか? プリクラか?」
シバが問い詰めると湊音が小声で言う。
「……ドームと、……ん」
「は?」
「コンドームとローション!」
湊音は小声ではっきり言ったあと周りをキョロキョロ見る。そしてまた赤面。
「……」
その時だった。シバはまた何かを思い出した。
『コンドーム? 僕の財布にあるよ』
湊音がとろんとした目でシバをみる。
『あとサンプルのパウチタイプのローションも……入ってるから使って』
ああ、そういえば……あると助かるなぁとシバが湊音の財布に手をやっているシーンが蘇った。
「ああ、やっぱりやってしまったのか」
「そんなに嫌だったのかよ。しかも事故扱い」
「……そ、そそ、そんなことよりも僕は家に戻る!」
「家族の人はなんか言ってたか?」
「……別に。朝帰りか? ってくらい。すまなかった。わざわざ……あっ」
湊音は何かに気付いたのか声を出した。
「財布を届けてくれた人に何割かお礼をしなきゃダメですよね?」
シバはハァ? といきなりの湊音のその言葉に先ほどの弥富の言葉を思い出し、やはり何か湊音は変わった人だと言う感じを受け取ったようだ。
「報労金だがまだ交番に届けたわけでもないし、そもそも俺は拾って届けても辞退する。俺はそういうのは不要だ。……お金ないわけでは無いが」
とシバがいうが湊音は財布を取り出していくらか渡そうとしている。
「どう見ても多い! そんなに払いたかったら俺をこきつかえ。それか昨晩のことを事故だとかいうなら尚更こちらが払う方だ」
とシバは湊音の財布に札を押し込んだ。意外と入ってるなぁとか思いながらも。
「にしてもコンドームはわかるけどさぁ。ローションも普通入れておくかよ……まぁあってよかったけどさ」
「……」
「……? ま、まさかだが」
湊音は縦に頷いた。
「お前、まさか……男とやるのは初めてじゃ無いのか」
「るせぇ。シバこそ……初めてじゃなかったのかよ」
シバは頷いた。
「ああ。まぁもっぱら女のほうだけどよ。男は特定の相手がいた……て、こんないいマンションの前でする話じゃねぇだろ」
湊音は苦笑いした。
「そうですね。って家にあげるわけにはいかんしなぁ……こんな野犬みたいなやつ」
「……ぬぅ」
シバは顔を歪めるが本当はもう戻りたいところである。
「ありがとな」
「……ああ」
二人はまた別れてシバは学校に戻った。
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