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お手並み拝見
第九話 デリカシー無し
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校庭の走り込み、シバがよくやっていたという腹筋腕立て伏せなど筋トレをして朝の自主練は終わった。
「本当はこれを毎朝毎晩、空いてる時間やるのがいいんだけど理事長からもらった部活動規約を見ると週一回と土曜午後、日曜は休みを入れなくちゃいけないっていうからね。それは自宅でやること。授業と授業の合間とか。あとご飯もたくさん食べてよく寝て……」
部員を見るとみんなへこたれてぐったりしていた。
「お前らこれでへこたれてどうする。あぁ、これが高校生の剣道部か、がっかりだなぁ……こりゃ県大会でさえも落ちるなぁ」
とシバがいうとさらにみんなはがっくりしていた。すると三浦が立ち上がった。
「……本当に大島先生の代わりになるのか」
「大島? だれ?」
湊音の方を見るシバ。
「以前ここで剣道部の顧問をしていた大島先生のことです。三浦の兄もこの剣道部にいました。大島先生に可愛がられていた。その練習を見て剣道を始めたんだ、三浦は。あ、あと高畑も大島先生がプライベートで練習してきた道場生で長年共に練習をしていて大島先生の推薦で入学してきたんだ」
事情を聞き苦い顔をするシバ。
「はぁ……まぁ大島先生は大島先生、俺は俺なんですけどね……」
部員たちは次々と立ち上がって礼をして去っていった。
「また放課後、こいよー!」
と部員に向かって叫ぶが誰も反応をしない。シバは彼らには力はあるのだが気持ちが下がっておりうまく発揮できていないというのは感じ取れたようだ。
「さぁ早く着替えて仕事に戻りましょう」
「湊音先生もちゃんとしてくださいよ。だからあいつらも舐めた態度取るんですよ……」
湊音もいい顔をしていない。
「……誰も僕には期待していない」
「は?」
「僕は教員になってから大島先生に誘われてというか無理矢理副顧問やらされて……剣道も初めて……経験が浅いから子供の頃からやってる生徒からはああいう感じに……だから未経験の生徒たちもなんか、まぁいいですよ。大島先生はそれだけ偉大な顧問だった。教師としても素晴らしい先生だった」
湊音が剣道部屋の前に置いてあったトロフィーや賞状や盾が並ぶ中に写真がいくつかあったのだがその写真の中に湊音の横、写真の中心にいる男がどの写真にもいる。
「その人が大島先生だ。この試合の見学を最後になってしまった」
「車椅子乗ってる」
「ひき逃げ事故で下半身麻痺。地獄だ。下半身は大事なのに。でも車椅子でも剣道できるとリハビリをしていた最中だった」
湊音が少し目を涙でうるわせた。シバは手を叩いた。
「はいはいはいはい、シャワーどこ?」
「あ、あっち。ってこれは汗だから……」
「わかったよ、また放課後の部活動よろしくねぇ」
とシバは湊音の肩をポンと叩く。少しすれ違った時に湊音から柑橘系の匂いがしたのを感じ取った。
「あのチビ、静かに燃えるやつか……ってちょっとシャワー、保健室の方が広いなぁ」
とシャワー室に入った。
シャワーを浴び、鼻歌を歌いながら出ると
「うわっ!」
目の前にいた湊音にびっくりしたシバ。彼はタオルを持っていた。そう言えば保健室の際もジュリに任せていたなぁと。タオルを受け取った。
「タオル、持ってなかったろ。どう身体拭くんだよ」
「わりぃ、センキュー」
シバが体を拭いているとすぐさま湊音が服を脱いで上半身裸になる。シバは全身拭き、全裸で部屋の中を歩く。
「隠すものは隠さないのですか」
湊音はなるべくシバを見ないようにしている。するとシバは何かに気づき湊音の両腕を上げた。この時は湊音はボクサーパンツ一丁である。
「な、な、ななんですかっ……やめてください」
腕を振り払ってタオルで体を隠す湊音。
「だって脇の下、毛がないじゃん」
「……そんなの見ないでくださいよ」
「よく見たから脚もツルツルだし……生まれつき? サロンとか言ってるんすか? まさか下の毛も……」
とシバが湊音のパンツを下げた。そして絶句した。下の毛も無かった。
「やっぱり! 綺麗にしてる」
「何をするんですかっ!!!! デリカシーがないぞ!」
湊音は顔を真っ赤にしてタオルを再び巻いて服を着始めた。
「湊音先生、シャワーは……」
「浴びません! こんなことする人と同じ部屋でシャワーなんて浴びたくないし下手したらセクハラですっ!! それに何もまとわず部屋をうろうろ……最低ですっ!!! ここに鍵置いておきますから放課後始まる前に開けに来てくださいね!!」
さっきまでのおとなしそうで今にでも泣きそうな湊音が声を荒立て忙しなく外に出ていった。
シバは1人になって部屋にあった扇風機の前で大きく足を広げて風に当たる。ふと彼は湊音の体を思い出した。
「……俺と同じくらいの年齢であそこまでツルツルにして美容意識高いのかなぁ。それとも俺が美意識低いのか? にしてもめっちゃあそこでかかったし。めっちゃくちゃ勃ってた……」
と自分の物を見ながら呟いた。
初日の朝の自主練からこんな感じであったから放課後もこの調子でシバはいた。
「本当はこれを毎朝毎晩、空いてる時間やるのがいいんだけど理事長からもらった部活動規約を見ると週一回と土曜午後、日曜は休みを入れなくちゃいけないっていうからね。それは自宅でやること。授業と授業の合間とか。あとご飯もたくさん食べてよく寝て……」
部員を見るとみんなへこたれてぐったりしていた。
「お前らこれでへこたれてどうする。あぁ、これが高校生の剣道部か、がっかりだなぁ……こりゃ県大会でさえも落ちるなぁ」
とシバがいうとさらにみんなはがっくりしていた。すると三浦が立ち上がった。
「……本当に大島先生の代わりになるのか」
「大島? だれ?」
湊音の方を見るシバ。
「以前ここで剣道部の顧問をしていた大島先生のことです。三浦の兄もこの剣道部にいました。大島先生に可愛がられていた。その練習を見て剣道を始めたんだ、三浦は。あ、あと高畑も大島先生がプライベートで練習してきた道場生で長年共に練習をしていて大島先生の推薦で入学してきたんだ」
事情を聞き苦い顔をするシバ。
「はぁ……まぁ大島先生は大島先生、俺は俺なんですけどね……」
部員たちは次々と立ち上がって礼をして去っていった。
「また放課後、こいよー!」
と部員に向かって叫ぶが誰も反応をしない。シバは彼らには力はあるのだが気持ちが下がっておりうまく発揮できていないというのは感じ取れたようだ。
「さぁ早く着替えて仕事に戻りましょう」
「湊音先生もちゃんとしてくださいよ。だからあいつらも舐めた態度取るんですよ……」
湊音もいい顔をしていない。
「……誰も僕には期待していない」
「は?」
「僕は教員になってから大島先生に誘われてというか無理矢理副顧問やらされて……剣道も初めて……経験が浅いから子供の頃からやってる生徒からはああいう感じに……だから未経験の生徒たちもなんか、まぁいいですよ。大島先生はそれだけ偉大な顧問だった。教師としても素晴らしい先生だった」
湊音が剣道部屋の前に置いてあったトロフィーや賞状や盾が並ぶ中に写真がいくつかあったのだがその写真の中に湊音の横、写真の中心にいる男がどの写真にもいる。
「その人が大島先生だ。この試合の見学を最後になってしまった」
「車椅子乗ってる」
「ひき逃げ事故で下半身麻痺。地獄だ。下半身は大事なのに。でも車椅子でも剣道できるとリハビリをしていた最中だった」
湊音が少し目を涙でうるわせた。シバは手を叩いた。
「はいはいはいはい、シャワーどこ?」
「あ、あっち。ってこれは汗だから……」
「わかったよ、また放課後の部活動よろしくねぇ」
とシバは湊音の肩をポンと叩く。少しすれ違った時に湊音から柑橘系の匂いがしたのを感じ取った。
「あのチビ、静かに燃えるやつか……ってちょっとシャワー、保健室の方が広いなぁ」
とシャワー室に入った。
シャワーを浴び、鼻歌を歌いながら出ると
「うわっ!」
目の前にいた湊音にびっくりしたシバ。彼はタオルを持っていた。そう言えば保健室の際もジュリに任せていたなぁと。タオルを受け取った。
「タオル、持ってなかったろ。どう身体拭くんだよ」
「わりぃ、センキュー」
シバが体を拭いているとすぐさま湊音が服を脱いで上半身裸になる。シバは全身拭き、全裸で部屋の中を歩く。
「隠すものは隠さないのですか」
湊音はなるべくシバを見ないようにしている。するとシバは何かに気づき湊音の両腕を上げた。この時は湊音はボクサーパンツ一丁である。
「な、な、ななんですかっ……やめてください」
腕を振り払ってタオルで体を隠す湊音。
「だって脇の下、毛がないじゃん」
「……そんなの見ないでくださいよ」
「よく見たから脚もツルツルだし……生まれつき? サロンとか言ってるんすか? まさか下の毛も……」
とシバが湊音のパンツを下げた。そして絶句した。下の毛も無かった。
「やっぱり! 綺麗にしてる」
「何をするんですかっ!!!! デリカシーがないぞ!」
湊音は顔を真っ赤にしてタオルを再び巻いて服を着始めた。
「湊音先生、シャワーは……」
「浴びません! こんなことする人と同じ部屋でシャワーなんて浴びたくないし下手したらセクハラですっ!! それに何もまとわず部屋をうろうろ……最低ですっ!!! ここに鍵置いておきますから放課後始まる前に開けに来てくださいね!!」
さっきまでのおとなしそうで今にでも泣きそうな湊音が声を荒立て忙しなく外に出ていった。
シバは1人になって部屋にあった扇風機の前で大きく足を広げて風に当たる。ふと彼は湊音の体を思い出した。
「……俺と同じくらいの年齢であそこまでツルツルにして美容意識高いのかなぁ。それとも俺が美意識低いのか? にしてもめっちゃあそこでかかったし。めっちゃくちゃ勃ってた……」
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