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四年目

第六十三話 ハナ……それぞれの進路

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 会見が終わり、控室に戻るとわたしは足の力が抜けてその場で崩れ落ちた。
「ハナ……ごめんね」
 なんで謝られたかわならないけど美玲に抱きしめられた。

「ハナお姉ちゃん……」
 由美香さん……。ずっと泣いてたから目がボロボロよ。

「リーダーっ」
 悠里ちゃんだけよ、私をリーダーって言ってくれるの。てかほとんど序盤の文章考えてくれたのは貴方なんだけどね……ありがとう。
 ずっと耐えてたのか泣き出した。

 タッキーが目を真っ赤にして私の手を握ってくれた。
「本当に今日はがんばった、ハナ。法的手段とか打てる手は打つ」
 一部週刊誌や掲示板で誹謗中傷やあることないことも書かれていたからね。どうやら大野ちゃんの離別したお母さんが情報を流した、と言う話も聞いたけど……娘を社長やプロデューサーに枕させてそれがバレて離婚したみたいだけど……何やってるんだか。

 そして解散、悩んだけど……話し合って決めたこと。私たち自身も当初ご当地アイドルとして地元だけの活躍を想定していたけど早いペースで体力も精神力もついてない状態で全国に進出してしまい、みんな潰されてしまった。

 書かれっぱなしも辛かったし、会見では言えなかったことや今までの活動してきた時のことや写真をまとめた本を出すことが決まっている。

 スポンサーにも謝りに行った。やはり厳しい声もあったけど、大変だったねと言ってくれた人たちもいた。

 それぞれの仕事は……  

 由美香さんはスキャンダルが明るみになったけど、それがバネになったのか、今までは清楚なイメージの役が多かったけどドロドロな大人の恋愛ドラマや映画に引っ張りだこらしい。さすが大手の芸能事務所に完全移籍したから……。
 ちなみに今はアイドルじゃなくて芸人さんと付き合ってるそうだ。

 悠里ちゃんは無事に気象予報士の資格を取得し、レギュラーも継続。アイドルでなくてフリーアナウンサーの事務所に勤めることが決まっている。
 真面目にコツコツと進んでる。ちなみに今回の件でお父さんと再会したそうで、時間があればまた会いにいくって言ってた。

 美玲ちゃんは番組改編によるレギュラー交代や番組終了とCMの契約満了が重なり、それと同時に芸能界から引退してカークンと結婚する。
 社長夫人かぁ。……私と同居してたアパートから引き払った。
「楽しかったわ。ハナには色々迷惑かけたけど最後は一緒にセンターで歌えたの嬉しかった」
 彼女がいなくなって……部屋は広々とし、寂しくなった。

 大野ちゃんは臨月。彼女も芸能界から身を引く。流石に過去のことを書かれて辛かったのと、赤ちゃんの頃から芸能界にいたから普通の生活がしたいらしい。でも一旦は、と言ってたからもしかして? それは彼女しかわからない。
 タッキーは……
「僕にはアイドルをプロデュースする能力はなかった……」 
 と肩を落としていたが、人気の出たニーナとロミに拾われてそこの事務所で働くそうだ。あの2人は懐が広すぎる。あと大野ちゃんやらいろんな人から怒られて肩身狭そう。

「それにしても……ハナ、お前はどうするんだ?」
  
 ……私は……


 ラジオもライブ前に終了、ぐーちーぱーくの第三期終了したら芸能界を引退、再びエステティシャンに戻ることにしたけどしばらくしっかりお店に行ってないせいか色々と変わってしまい、人も入れ替わってしまって……また一から、である。でも手に職があった方がいい、と、大野ちゃんの心遣いがここで生かされてしまった。

「芸能界辞めちゃうんか、お前も。26歳、アラサーだぜ?」
「……なんとかなりますって。それよりもラストファンミーティング……みんなに喜んでもらうようなものを考えないと」 
「それがお前のリーダーとして、清流ガールズとして最後の大仕事だな」
「そうね……」

 色々あったなぁ……。エステティシャンやってたら大野ちゃんが来て、施術中にオーディションはじまってて、研究生になって、いきなりデビューして、キャラ作りして、ライブやってファンミーティングして、テレビ番組やラジオのMCをして……。

 研究生時代とか含めると4年近く……芸能界の裏側や厳しさも見てきた。嘘で固めた日々、大変だったけどファンの人はじめ、多くの人に支えられた四年だった……。

 ……もうわたしは森巣花に戻る。

 ファンのみんな……なぜか1番に思い浮かんだ……トクさん。彼にも会えなくなる……。私はスマホの画面を見る。トクさんの手紙に入ってたぐーちーぱーくのイベントの時の写真、それを待ち受けにしているが、もう会えない……。
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