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四年目
第五十八話 トクさん…俺はその時知らなかった
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俺は社長の名刺を見ながら色々と考える。このまま独身を貫くのなら在宅でも良いが給料はいつもどおり、でもいつかハナのように推せる女性と出会って……家族を作って生活をするであろうと言うことを考えたら本社勤務になるべきであろう。
でもやはり今のライフスタイルを変えたくない……。人間関係もさぞかし困ってないし、今が一番健康で仕事もやりやすい!
「トクさん、それじゃ人間育たないですよ」
な、なぬぅ!!! くそっ! なんて言う言い方だっ、アガサ!
「阿笠先生、それはちょっと言い過ぎですよ、でもわたしもいつまでも在宅じゃ……やはり人と直接関わることが大事ですよ」
……どっちの味方だよ! マスター。
「まぁトクさんが幸せならそれでいいんじゃないの?」
トオルはわかってくれるから嬉しいよー。
「まぁいつまで続くやら」
……うううっ、お前もかっ! それよりもお前の好きな由美香さんが映画で賞をたくさん取ったってな!
化粧の仕方一つで別人が乗り移ったかのような彼女……色気も以前よりたっぷりで。
しかも濡れ場のある映画ではセミヌードも披露して……。
「由美香さんはアイドルよりも女優の方が生き生きしてるんだよ」
確かになぁ……。
「トクさんは美玲ちゃんを最近チェックしとらんやろ」
……前に推していた美玲ちゃん。もうハナのことだらけで全くなんだよなぁ。結構全国区のテレビでは出るものの、遠くの世界に行ってしまったなぁって感じで。こなれてしまってる感が。
「悠里ちゃんは本気で気象予報士目指してるらしいからねぇ。なんか清流ガールズ全員揃ってライブとかって貴重だよなぁ……」
「写真集とか今度新しいアルバム出るだろ? 大丈夫、これからも清流ガールズは俺らを楽しませてくれる!」
個々で開花してくれるのは嬉しいことだが……残念なことに俺の推しのハナだけは伸び悩んでいる。
グラビアも一気にやめてしまった。写真集一冊出して、握手会があったが……この一冊でグラビアは卒業宣言してしまったのだ。そこそこ売れたものの、爆発的なヒットではなかった。
……俺の中ではもちろん大ヒットで、たくさんお世話になり、妄想も酷いくらいしてしまった。
「あ、そうそう……昨日の『あそぼ、ぐーちーぱーく』見ますか?」
とマスター。その場にいた俺を含むハナファンのみんなは頷く。てかマスターは父親としてあの写真集はどう思ったのだろうか。それにグラビアをやめて少しほっとしたかもな。
ちゃっかり喫茶店でも販売していたが中身を出すとかそういうことはしなかったマスターの父親心がなんとなくわかるようでわからんようで……。
それよりも番組を見よう。オープニングダンスはもちろんしっかり覚えてるぞ! アガサもニコニコ笑いながら見てる。相変わらず気持ち悪い笑みだ。
着ぐるみや人形たちと子供たちに囲まれてポップなCG空間で歌うハナは本当に楽しそうだ。
彼女の素敵な歌声は心に染み渡る。幼児番組なのに尊い! て思えるなんて……。
毎週の楽しみが増えて俺はますます仕事に精が出る! ……ハナも全国に進出してる。頑張ってるぞ。新しいステージに。俺も……頑張るか?
俺はふとマスターを見ると、今まで何気なく見てたカウンターの一部の写真に目がいった。
帽子を深く被ったハナ、マスター、そしてもう1人……男? ハナのお兄さん? 2人とも大きいのにハナは小さい。
「どうかしましたか?」
「いや、その……写真の男の人……」
「ああ、彼ですか」
マスターがアガサと目を合わせる。あれ、なんか聞いちゃまずかったかな……。
「事故で亡くなりました」
やはり聞いちゃダメだったのだが誰なんだ?
「……そうだったんですか……」
……。
「トクさん、そいや今度このイベントがこっちにくるそうですよ」
「えっ、知らんかった! まじでか? 絶対行く!!!」
アガサがチラシを出してくれた。地域チャンネルのスタジオ近くでやるのか!! まじか!
「トクさん、親子向けのイベントだぞ?」
「トオル、それは関係ない! 俺は行くぜ!」
俺はその時知らなかった。
あの写真の男のこと、そしてとある掲示板での噂を。
◆◆◆
『ハナはなかなか売れんな』
『グラビアも年齢的に限界、センターでも美玲に喰われたな』
『ラジオは安定してるけどね、テレビ露出少ない』
『今度のレギュラーもBS』
『でもあれは悪くない』
『歌うまくてよかったよな、と言う話』
『今度イベントやるって!岐阜で!凱旋?!』
『凱旋って、今も岐阜に住んでるけど』
『トクさん張り切っちゃいそう』
『まだ知らなさそう、なにも呟いてなかった』
『着ぐるみもくるのかなー、あれ可愛い』
『ぐーちーぱーくで音楽監修している、ロミ&ニーナは神曲作るよな』
『昔こいつらビジュアル系バンドだったらしいぜ』
『私、実は彼らのバンドのファンでした。でもギターとボーカルが事故にあって解散になったんだけど……』
『兄貴もファンだった。楽曲も写真も映像も解散と同時に削除されたんだって』
『俺の友達に音源もらったんだけどアップする』
『すげぇ、全くぐーちーぱーくぽくない』
『歌詞も曲もかっこいいけど毒がある』
『ボーカル、女なの?ロミ?ニーナ?』
『いや、ボーカルの名前はエド』
『エドの写真みっけた』
『なんかハナちゃんに似てない?』
『嘘だーっ』
『曲聞いたらなんとなくハナ?』
『にしてもハナの過去ってあまり聞かないよな』
『産婦人科の医者との関係知りたいよな』
『アガサだっけ?』
『今。バンドのギターとボーカルが巻き込まれた事故調べてたらアガサの名前あった!阿笠太郎……奥さんと子供を亡くしてる』
『普通そこまで調べるのか?そんな大きな事故だったのか?』
『ハナと関係あるの?この話』
でもやはり今のライフスタイルを変えたくない……。人間関係もさぞかし困ってないし、今が一番健康で仕事もやりやすい!
「トクさん、それじゃ人間育たないですよ」
な、なぬぅ!!! くそっ! なんて言う言い方だっ、アガサ!
「阿笠先生、それはちょっと言い過ぎですよ、でもわたしもいつまでも在宅じゃ……やはり人と直接関わることが大事ですよ」
……どっちの味方だよ! マスター。
「まぁトクさんが幸せならそれでいいんじゃないの?」
トオルはわかってくれるから嬉しいよー。
「まぁいつまで続くやら」
……うううっ、お前もかっ! それよりもお前の好きな由美香さんが映画で賞をたくさん取ったってな!
化粧の仕方一つで別人が乗り移ったかのような彼女……色気も以前よりたっぷりで。
しかも濡れ場のある映画ではセミヌードも披露して……。
「由美香さんはアイドルよりも女優の方が生き生きしてるんだよ」
確かになぁ……。
「トクさんは美玲ちゃんを最近チェックしとらんやろ」
……前に推していた美玲ちゃん。もうハナのことだらけで全くなんだよなぁ。結構全国区のテレビでは出るものの、遠くの世界に行ってしまったなぁって感じで。こなれてしまってる感が。
「悠里ちゃんは本気で気象予報士目指してるらしいからねぇ。なんか清流ガールズ全員揃ってライブとかって貴重だよなぁ……」
「写真集とか今度新しいアルバム出るだろ? 大丈夫、これからも清流ガールズは俺らを楽しませてくれる!」
個々で開花してくれるのは嬉しいことだが……残念なことに俺の推しのハナだけは伸び悩んでいる。
グラビアも一気にやめてしまった。写真集一冊出して、握手会があったが……この一冊でグラビアは卒業宣言してしまったのだ。そこそこ売れたものの、爆発的なヒットではなかった。
……俺の中ではもちろん大ヒットで、たくさんお世話になり、妄想も酷いくらいしてしまった。
「あ、そうそう……昨日の『あそぼ、ぐーちーぱーく』見ますか?」
とマスター。その場にいた俺を含むハナファンのみんなは頷く。てかマスターは父親としてあの写真集はどう思ったのだろうか。それにグラビアをやめて少しほっとしたかもな。
ちゃっかり喫茶店でも販売していたが中身を出すとかそういうことはしなかったマスターの父親心がなんとなくわかるようでわからんようで……。
それよりも番組を見よう。オープニングダンスはもちろんしっかり覚えてるぞ! アガサもニコニコ笑いながら見てる。相変わらず気持ち悪い笑みだ。
着ぐるみや人形たちと子供たちに囲まれてポップなCG空間で歌うハナは本当に楽しそうだ。
彼女の素敵な歌声は心に染み渡る。幼児番組なのに尊い! て思えるなんて……。
毎週の楽しみが増えて俺はますます仕事に精が出る! ……ハナも全国に進出してる。頑張ってるぞ。新しいステージに。俺も……頑張るか?
俺はふとマスターを見ると、今まで何気なく見てたカウンターの一部の写真に目がいった。
帽子を深く被ったハナ、マスター、そしてもう1人……男? ハナのお兄さん? 2人とも大きいのにハナは小さい。
「どうかしましたか?」
「いや、その……写真の男の人……」
「ああ、彼ですか」
マスターがアガサと目を合わせる。あれ、なんか聞いちゃまずかったかな……。
「事故で亡くなりました」
やはり聞いちゃダメだったのだが誰なんだ?
「……そうだったんですか……」
……。
「トクさん、そいや今度このイベントがこっちにくるそうですよ」
「えっ、知らんかった! まじでか? 絶対行く!!!」
アガサがチラシを出してくれた。地域チャンネルのスタジオ近くでやるのか!! まじか!
「トクさん、親子向けのイベントだぞ?」
「トオル、それは関係ない! 俺は行くぜ!」
俺はその時知らなかった。
あの写真の男のこと、そしてとある掲示板での噂を。
◆◆◆
『ハナはなかなか売れんな』
『グラビアも年齢的に限界、センターでも美玲に喰われたな』
『ラジオは安定してるけどね、テレビ露出少ない』
『今度のレギュラーもBS』
『でもあれは悪くない』
『歌うまくてよかったよな、と言う話』
『今度イベントやるって!岐阜で!凱旋?!』
『凱旋って、今も岐阜に住んでるけど』
『トクさん張り切っちゃいそう』
『まだ知らなさそう、なにも呟いてなかった』
『着ぐるみもくるのかなー、あれ可愛い』
『ぐーちーぱーくで音楽監修している、ロミ&ニーナは神曲作るよな』
『昔こいつらビジュアル系バンドだったらしいぜ』
『私、実は彼らのバンドのファンでした。でもギターとボーカルが事故にあって解散になったんだけど……』
『兄貴もファンだった。楽曲も写真も映像も解散と同時に削除されたんだって』
『俺の友達に音源もらったんだけどアップする』
『すげぇ、全くぐーちーぱーくぽくない』
『歌詞も曲もかっこいいけど毒がある』
『ボーカル、女なの?ロミ?ニーナ?』
『いや、ボーカルの名前はエド』
『エドの写真みっけた』
『なんかハナちゃんに似てない?』
『嘘だーっ』
『曲聞いたらなんとなくハナ?』
『にしてもハナの過去ってあまり聞かないよな』
『産婦人科の医者との関係知りたいよな』
『アガサだっけ?』
『今。バンドのギターとボーカルが巻き込まれた事故調べてたらアガサの名前あった!阿笠太郎……奥さんと子供を亡くしてる』
『普通そこまで調べるのか?そんな大きな事故だったのか?』
『ハナと関係あるの?この話』
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