ちょっと訳ありご当地アイドルな私とさらに訳あり過ぎなアイドルヲタな俺の話

麻木香豆

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四年目

第五十七話 ハナ…本業

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 清流ガールズは4年目。私が入って2年目。早い、早すぎる時の流れ。2年、されど2年。色々ありすぎて……。
 一回目のファンミーティングはお泊まり、二回目は実質地域チャンネルの卒業イベントと併用されていた感じがする。

 4年目にして清流ガールズは全国区になったものの、アイドル大国日本、そう簡単に全国の番組で歌えるものではなかった。
 私と美玲がツートップで歌った歌はとある全国区の深夜のランキング番組のマンスリーソングやラジオの一押しソングに選ばれたもののそこまでのヒットにはならなかった。
 いつもの岐阜でのライブは月一、二部制になった。全国のアイドルが集まる全国アイドルサミットにも呼ばれて東京でパフォーマンスしたものの、やはりいろんなアイドルがいるもので刺激にはなったがそこで目立つ、というのは難しいと思い知らされて私たちは厳しいなぁと少しがっかりするのである。

 それでも私たちのファンたちはついていてくれて応援してくれた。それは感謝である。親衛隊のみんなも、その他のファンの人たちも。

 4年目にしてフルアルバムの発売、その発売に合わせて今のライブと同じように私と美玲ツートップバージョンで録り直し、個々の写真集、ファンブック、それに合わせて通常のラジオのパーソナリティ、時たま来るグラビアの仕事……



 眠い!!! 疲れる!!! 25超えてから疲れが取れにくい……エステの仕事もほとんどしてないし、いや私がして欲しい!! 脱毛はしてるんだけど、マッサージして揉みほぐしてーーー! って感じ。

 私はまだいいわよ。悠里ちゃんは平日毎朝ニュース番組のお天気お姉さんに抜擢された。ちゃんと原稿読めるようにアナウンサー学校に行ったり、天気予報の勉強したり、まだ若いから吸収できるのねぇ。とにかく頭フル回転だし。
 由美香さんは相変わらず舞台やドラマ、映画の仕事が……だんだん重要な役どころが増えてきて彼女は演技の仕事は大手のプロダクションと契約していてますます役者さんまっしぐらだし。(恋愛は懲りたとか言ってるけど……?)
 美玲ちゃんはマルチに活躍して、ドラマも出たりバラエティにも出たりアニメの声優をしたり。恋人のカークンとは会えているのかな?

 みんなそれぞれ忙しそう……。え、私はって……。そいや今日はタッキーとあるスタジオへ。彼はしっかり大野ちゃんに怒られたから大丈夫。手を出してくることはない。 
「ハナちゃんを歌のお姉さんに、ってオファーがあってね」
 歌のお姉さん! 嬉しいっ。やっぱり歌う仕事がいいわよねぇ。

「僕が色々あたってゲットした仕事だからね。一応」

 今でも私は壁一枚隔て彼とは距離置いてるけど、仕事をもらってきたとなったらニコニコとして引き受けるわ。

 歌のお姉さんか……BS放送だけど本家の子供番組に負けじと制作されシーズン3。私は3代目のお姉さん。童謡だけでなくオリジナル楽曲もあり。て、私は見たことないけど。

「ハナ、多分スタジオ行ったらびっくりするぞ」
 ん、びっくり?

 と、スタジオのドアを開けると不思議な空間?? と思ったら全面黄緑色の背景。これがびっくりなこと?

 へ? そしてゴロンと隠されることもなく置かれた着ぐるみたち。横にだらけたバイトたちがスマホゲームして座っている。

「ある意味びっくりですけど」
「いや、ここじゃなくてな……」
 タッキーについていくと、派手な格好をした人がスタッフに指示を出していた。

 ……どっかで見たことがある……?

「おい、連れてきたぞ」
 ちょっとタッキー。すっかり大物プロデューサー。スタッフさんに、おいはないでしょ……。

 その派手な人が振り向くと……!!
「あああっ!!!」
「ニーナ!!!」
 昔から派手な男だった、仲間のニーナことベーシスト新名《にいな》。
 ビジュアル系とは違う派手さに今はなってしまって。作曲家として活動はしていると聞いていたが、なぜこのスタジオに?

「今期からボクが作曲することになってね、テーマソング。オリジナルの曲もよ。エド……じゃなくて、いまはハナ、チャンよね。ごめんごめん。あなたがお姉さんやるって聞いて引き受けたんだから頑張りましょう!」
 ……事故の時にわたしからバンド解散を告げたのにまた一緒に仕事をしてくれるだなんて……。しかもアイドルになってしまったわたしと……。
「泣かないで。あ、ロミも今日は来れなかったけど彼の歌詞と合わせていい曲を作るからまた歌って頂戴」
 ニーナとロミは兄弟で、バンドの時には基本彼らと馨が曲を作っていた。

 まさかこんな形で……バンドが再結成されるなんて。
 て、これさ……私たちを知っている人が知ったらわたしの過去バレちゃうじゃん……とタッキーを見ると
「コアなファンは気付くだろうな、でも見た目わからない……だろーし……うん、その……うん、てかBSの仕事だし?」
 ちょっと、その辺考えてないでしょ! てかBSだろうが地上波だろうが関係ないわよ。スタッフさんに失礼じゃん。

「文句あるならグラビアの仕事たくさん入れてやろうか? 本当は来てるんだぞ、きわどいやつ! でもこの子供向け番組やるからセクシー系グラビアの仕事全部蹴ったんだぞ! 郁美……大野からもそろそろハナに歌の仕事をさせろって……」

 大野ちゃん……。
「まぁお前も26歳だし? そろそろなぁ、限界あるじゃん? ……いてぇ」
 私は肘鉄をくらわした。
「まだ26です!」 
「それにグラビアでお腹も出せって……あんな傷あったら無理だろ」
 ……私はついお腹を触ってしまう。
「僕もさ、ハナの歌ってるところ好きだから……まぁ、とりあえず頑張れ」
 ……タッキーはこういうことを言う時は反対側を見て言うのよねぇ……。

 周りのスタッフさんも私を見ている。

 ……。
「頑張ります、私!!!」
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