39 / 72
2年目
第三十八話 ハナ…決断
しおりを挟む
ファンミーティングもなんとか成功し、私たち個人のアイドルとしての自覚も芽生えた気がするし、個人のモチベーションも上がればメンバー間でも絆が更に生まれるようになった。
ライブもますます盛り上がりが増し、ファンミーティングに来た人たちが新規のお客さんを呼んでくれた。
なんと、私にようやく親衛隊ができたのだ。先陣を切ってくれたのはもちろんトクさん。
でも私だけでなく美玲ちゃんの親衛隊総長も兼任してる。最近、頭にハチマキ巻いてそれにペンライト挿して踊ってて。とても目立つ。おもしろい。でもそのおかげですぐトクさん見つけられたけど、すぐそれを真似する人が増えてきてまた分からなくなってきた。それほどファンも増えてきたのだ。
握手会でもトクさん、毎回色々アドバイスしてくれるけど、手紙では相変わらず細かいところを見てくれていて感想を書いてくれるし、褒めてくれる。
意外とマメな人なんだなぁ……。ここまで見てくれる人はトクさんしかいないよ。でも口で言って欲しい。
握手会では美玲ちゃんには及ばないけど列が出来ている。そして私も時間の規制ができてしまい、嬉しいけど一人一人と話す時間が減ってしまった。
トクさんもその短くなった時間の間でも要点まとめて話してくれる。人としっかり目を見て、話すこと……なかなかできなかったけど、トクさんとお話ししていくうちに他の人にもできるようになれた。
……そういえば阿笠先生……握手の列に来なくなった。グッズやCDは買ってくれたと物販の人から聞いたけど……。
とある日のレッスン後、ミーティングがあった。大野ちゃんに、マネージャー、事務所のお偉いさんもいてドキドキする。
なんか重苦しい。何か重大なことを発表するのかな、という雰囲気はある。いつもと何か違う空気に。
美玲ちゃんもキリッとして、由美香さんは不安で私の手を握って、業界に長く在籍してる悠里ちゃんも何かを察して緊張して何度も水を飲んでいる。
大野ちゃんが立ち上がり私たちの目の前で話を始めた。
「いつもお疲れ様。みんなの頑張りのおかげで、ファンも売り上げも順調に伸びています。そして会社にも仕事の依頼がたくさん来ています。東海ローカルだけでなく、東京……つまり全国ネットのテレビやラジオ局からもお仕事が来てるの」
あああっ!ご当地アイドルなのに、全国!?
「あ、まだ東京のお仕事はお声をかけてもらってるだけで……慎重にこちらで検討しているんだけどね。あくまでも私たちは岐阜県のご当地アイドル。地元を愛し、地元の良いところを発信していく……だからどうやって売り出すかも重要なのよね」
なるほど、安易に受けてはいけないってことね。今プロデューサーしてたタッキーが東京へアイドルたちの現場を見に行ったり、テレビ局や雑誌社に売り込みに行ったり、奔走している。ほんと周りの大人たちも私たちのために動いてくれているのだ。
「由美香さんが出演しているドラマが主演の梨岡輝矢くんの効果もあって全国ネットでも放送されることも決まったし。あ、由美香さんには舞台やドラマのお話も入ってるのよ」
「ほ、本当ですか……」
由美香さんは私の手をまだ握っている。彼女はもともと演劇部で、演劇をこよなく愛しているからすごく嬉しいよね。よかったじゃない。
「美玲はたまに行ってる全国ネットの番組のレギュラーも人気だし、ドラマも挑戦してみたかったらオーディション受けてみて」
「は、はい……」
美玲ちゃんは複雑そうな顔をしている。何故か。美玲ちゃんは仕事多いからなぁ……。
「悠里には昔からお世話になっている衣装さんの紹介でトウキョーテレビからお天気お姉さんのお仕事来ているの。交代制だから負担は少ないけどどうする?」
「……検討してみます。ありがとうございます」
すごい……お天気お姉さん!!! 頭もいいしお似合いじゃない。
で、私は?
「これからジャンジャン忙しくなるわよ。その覚悟はある?」
あれ、私は? 他の3人はハイ! と声を出して立ち上がる。
「あの、私は?」
勇気を出して言う。
「あ。そうそう……これから歌に関しては……ハナと美玲のツーセンターでいこうと思うの」
えっ?! 私と、美玲ちゃん……? 私は美玲ちゃんと目が合う。
「ハナ、あなたは歌はうまいけど踊りはダメ。悠里と由美香さんはコーラス兼ダンスで。来月のライブでハナの歌声を本格的に全面に出すわ」
……嘘っ……。私が、私がセンター? あ、美玲ちゃんもだけど。
「よかったじゃない、ハナ……」
と美玲ちゃんが抱きしめてくれた。由美香さんも、悠里ちゃんも。
……涙が出てきた。ずっとコーラスだったから……ほぼメインで歌えるなんて。他の3人はいいの?
「ハナおねえちゃん、歌上手だもの。私、頑張って踊るから!」
由美香さん……
「私も頓珍漢な踊りよりもハナさんは歌に専念した方がいいと思ってました。おめでとう」
悠里ちゃん……ちょっとグサってくるけど!
「ハナと一緒に歌えるの嬉しい!」
美玲ちゃん……!
「あー、あとその代わりなんだけど」
その代わり?
「グラビアの仕事もジャンジャン入れますからね!」
それ、もう即決?!
ライブもますます盛り上がりが増し、ファンミーティングに来た人たちが新規のお客さんを呼んでくれた。
なんと、私にようやく親衛隊ができたのだ。先陣を切ってくれたのはもちろんトクさん。
でも私だけでなく美玲ちゃんの親衛隊総長も兼任してる。最近、頭にハチマキ巻いてそれにペンライト挿して踊ってて。とても目立つ。おもしろい。でもそのおかげですぐトクさん見つけられたけど、すぐそれを真似する人が増えてきてまた分からなくなってきた。それほどファンも増えてきたのだ。
握手会でもトクさん、毎回色々アドバイスしてくれるけど、手紙では相変わらず細かいところを見てくれていて感想を書いてくれるし、褒めてくれる。
意外とマメな人なんだなぁ……。ここまで見てくれる人はトクさんしかいないよ。でも口で言って欲しい。
握手会では美玲ちゃんには及ばないけど列が出来ている。そして私も時間の規制ができてしまい、嬉しいけど一人一人と話す時間が減ってしまった。
トクさんもその短くなった時間の間でも要点まとめて話してくれる。人としっかり目を見て、話すこと……なかなかできなかったけど、トクさんとお話ししていくうちに他の人にもできるようになれた。
……そういえば阿笠先生……握手の列に来なくなった。グッズやCDは買ってくれたと物販の人から聞いたけど……。
とある日のレッスン後、ミーティングがあった。大野ちゃんに、マネージャー、事務所のお偉いさんもいてドキドキする。
なんか重苦しい。何か重大なことを発表するのかな、という雰囲気はある。いつもと何か違う空気に。
美玲ちゃんもキリッとして、由美香さんは不安で私の手を握って、業界に長く在籍してる悠里ちゃんも何かを察して緊張して何度も水を飲んでいる。
大野ちゃんが立ち上がり私たちの目の前で話を始めた。
「いつもお疲れ様。みんなの頑張りのおかげで、ファンも売り上げも順調に伸びています。そして会社にも仕事の依頼がたくさん来ています。東海ローカルだけでなく、東京……つまり全国ネットのテレビやラジオ局からもお仕事が来てるの」
あああっ!ご当地アイドルなのに、全国!?
「あ、まだ東京のお仕事はお声をかけてもらってるだけで……慎重にこちらで検討しているんだけどね。あくまでも私たちは岐阜県のご当地アイドル。地元を愛し、地元の良いところを発信していく……だからどうやって売り出すかも重要なのよね」
なるほど、安易に受けてはいけないってことね。今プロデューサーしてたタッキーが東京へアイドルたちの現場を見に行ったり、テレビ局や雑誌社に売り込みに行ったり、奔走している。ほんと周りの大人たちも私たちのために動いてくれているのだ。
「由美香さんが出演しているドラマが主演の梨岡輝矢くんの効果もあって全国ネットでも放送されることも決まったし。あ、由美香さんには舞台やドラマのお話も入ってるのよ」
「ほ、本当ですか……」
由美香さんは私の手をまだ握っている。彼女はもともと演劇部で、演劇をこよなく愛しているからすごく嬉しいよね。よかったじゃない。
「美玲はたまに行ってる全国ネットの番組のレギュラーも人気だし、ドラマも挑戦してみたかったらオーディション受けてみて」
「は、はい……」
美玲ちゃんは複雑そうな顔をしている。何故か。美玲ちゃんは仕事多いからなぁ……。
「悠里には昔からお世話になっている衣装さんの紹介でトウキョーテレビからお天気お姉さんのお仕事来ているの。交代制だから負担は少ないけどどうする?」
「……検討してみます。ありがとうございます」
すごい……お天気お姉さん!!! 頭もいいしお似合いじゃない。
で、私は?
「これからジャンジャン忙しくなるわよ。その覚悟はある?」
あれ、私は? 他の3人はハイ! と声を出して立ち上がる。
「あの、私は?」
勇気を出して言う。
「あ。そうそう……これから歌に関しては……ハナと美玲のツーセンターでいこうと思うの」
えっ?! 私と、美玲ちゃん……? 私は美玲ちゃんと目が合う。
「ハナ、あなたは歌はうまいけど踊りはダメ。悠里と由美香さんはコーラス兼ダンスで。来月のライブでハナの歌声を本格的に全面に出すわ」
……嘘っ……。私が、私がセンター? あ、美玲ちゃんもだけど。
「よかったじゃない、ハナ……」
と美玲ちゃんが抱きしめてくれた。由美香さんも、悠里ちゃんも。
……涙が出てきた。ずっとコーラスだったから……ほぼメインで歌えるなんて。他の3人はいいの?
「ハナおねえちゃん、歌上手だもの。私、頑張って踊るから!」
由美香さん……
「私も頓珍漢な踊りよりもハナさんは歌に専念した方がいいと思ってました。おめでとう」
悠里ちゃん……ちょっとグサってくるけど!
「ハナと一緒に歌えるの嬉しい!」
美玲ちゃん……!
「あー、あとその代わりなんだけど」
その代わり?
「グラビアの仕事もジャンジャン入れますからね!」
それ、もう即決?!
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる