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2年目
第二十九話 トクさん……好きになってしまったかもしれない
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ハナはまだあの背の高い医者と話をしていた。誰なんだ、あの医者は。ちょっとニヤニヤしてるハナ……。
「トクさん、ハナちゃん好きになったの?」
とキンちゃん。……好き? は?
「だってさ、その格好……いつ言おうか悩んでたけど」
と指を差される。ハナのタオル、Tシャツ、帽子、缶バッジ……全身ハナのグッズ……。
「いや、握手券買うためにも買わなかんやろ? 美玲ちゃんのは全部持っとったし」
なんか俺、動揺しとるぞ。あ、一応タオルは美玲ちゃんのタオル持ってるし。でもキンちゃんはニマニマしてる。悪いか! 気持ち悪い!
「あのね、もう周りはわかっとるよ。最近トクさんおかしいって」
「おかしい?」
「トクさんのSNS、やたらとハナちゃんのこと書いてるし、ハナちゃんの実家の喫茶店通ってるんだろ?」
……実は毎日のように足が喫茶店に……いや、ランニングコース内にあって……いや、わざとランニングコースにしたというか……。
「ハナのお父さんである店長さんがお店のブログで『毎日足繁く通ってくれている男性がいて、ハナのことを聞いてくる。日に日に質問が増えてきた。ハナのファンがまた一人増えたようだ』とありますが?」
と、スマートフォンでそのブログを見せつけられた。
うわあああっ!!!!
どういうことだ、どういうことだっ、どういうことだあいあああっ!!!
通ってる店まで割れてるとはっ!!!! ああっ! 確かにあそこは清流ガールズのファンも立ち寄るし、グッズも置いてある。そして何しろ店長がハナの父親だ。通うしかないだろ。
全然無関心だったハナ……ファンミーティングで彼女の班になり絶望になったが、少しでもポジティブな気持ちになろうと思っていた。だから彼女のことを知ろうとしている間に……俺は……彼女のことを!!!!
そ、それに毎晩のおかずも……ハナの水着っ!! たわけかっ!! たわけっ!!!
「ほら、次。トクさん。……あとこれ全部使いなよ」
キンちゃんに手を握られて、そこにはまだ残りの握手券が……。背中をポンと押された。ありがとうっ!!キンちゃん!
目の前にはハナ。
「トクさん、おかえりなさぁい!」
「ただいま……」
また相変わらず語尾が伸びてて、そして眠そうな目!
ふわっと手を両手で包まれて。俺は握り返す。
「ハナ、さっきの背の高い男は……」
聞いてしまった。別に気になってはいないのだが!
「え?」
「とぼけんな、さっきの……」
「あー、アガサさん。お医者様なの」
アガサ? なんか珍しい苗字だ。ぐぐりやすいな。
「それは知ってる。ただのファンか?」
「知り合いです。強いて言えばぁー恩人?」
「恩人……」
な、な、なんの恩人だっ!!
「今度ファンミーティングの班一緒だと思うから仲良くしてあげてね」
お、谷間が……更に寄せられて! あうっ。見てない、あっちが見せてるんだ!
「……う、うん。仲良くする……でさぁ……」
あの大きな男はハナの医者……主治医? なんの医者だ? 内診とかしてたらハナの胸を見てる……。
しかしまたスタッフに剥がされた。もう握手券もない。今日はこれで終わりだ。
「トクさぁーん! ファンミーティングで会いましょうね」
思いっきり手を振ってくれた、ハナ。可愛いじゃねぇか。
ふとまだ少し並んでる美玲ちゃんの握手列。すごいなぁ……っん!!! 美玲ちゃんがこっち見てるぞ……。チラチラ。気のせいだよな? 気のせい。
「トクさん、ハナちゃんどうだった? 美玲ちゃん、ちらほら君たちを見てたよ。ありゃ、裏で美玲ちゃんとハナちゃんバチバチだよー。怖いねぇー」
彼女たちは基本給にグッズの売り上げと握手券の枚数も加算される。
美玲ちゃんはソロでレギュラーも多いし売り上げも良いし、握手の列も長いからかなり稼いでるのであろう。ファンの取り合いとかもあるんだろうな。
でもいくら数がいてもそれぞれの出すお金が少ないと意味がない。
ファンの数が少なくても客単価が高ければいいから、たくさんお金を出してくれる太客を握ることも大事なのだ。
お互いのパフォーマンスを高めるため、かもしれんがこの仕組みは怖いぞ……。その金を出してくれるファンの金が底尽きたら終わりだ。
俺も今まで美玲ちゃんにたくさん注ぎ込んできた。彼女のために精一杯働いているからな。
それが気づいたらハナに注ぎ込んでしまった訳で。ああ、ダメだなぁ。俺は。二人に平等に愛を注ぎ込むしかない。二股なんて初めてだぞ。困った。
「何ぶつぶつ言ってるの、トクさん。僕は断然美玲ちゃん推しですからね。浮気なんてしません」
よく胸を張って言えるな、キンちゃんは。ああ、もう来週だ。楽しみでしかない。
……え、俺……ハナのこと、好きなのか……。
「今更何言ってるの」
「トクさん、ハナちゃん好きになったの?」
とキンちゃん。……好き? は?
「だってさ、その格好……いつ言おうか悩んでたけど」
と指を差される。ハナのタオル、Tシャツ、帽子、缶バッジ……全身ハナのグッズ……。
「いや、握手券買うためにも買わなかんやろ? 美玲ちゃんのは全部持っとったし」
なんか俺、動揺しとるぞ。あ、一応タオルは美玲ちゃんのタオル持ってるし。でもキンちゃんはニマニマしてる。悪いか! 気持ち悪い!
「あのね、もう周りはわかっとるよ。最近トクさんおかしいって」
「おかしい?」
「トクさんのSNS、やたらとハナちゃんのこと書いてるし、ハナちゃんの実家の喫茶店通ってるんだろ?」
……実は毎日のように足が喫茶店に……いや、ランニングコース内にあって……いや、わざとランニングコースにしたというか……。
「ハナのお父さんである店長さんがお店のブログで『毎日足繁く通ってくれている男性がいて、ハナのことを聞いてくる。日に日に質問が増えてきた。ハナのファンがまた一人増えたようだ』とありますが?」
と、スマートフォンでそのブログを見せつけられた。
うわあああっ!!!!
どういうことだ、どういうことだっ、どういうことだあいあああっ!!!
通ってる店まで割れてるとはっ!!!! ああっ! 確かにあそこは清流ガールズのファンも立ち寄るし、グッズも置いてある。そして何しろ店長がハナの父親だ。通うしかないだろ。
全然無関心だったハナ……ファンミーティングで彼女の班になり絶望になったが、少しでもポジティブな気持ちになろうと思っていた。だから彼女のことを知ろうとしている間に……俺は……彼女のことを!!!!
そ、それに毎晩のおかずも……ハナの水着っ!! たわけかっ!! たわけっ!!!
「ほら、次。トクさん。……あとこれ全部使いなよ」
キンちゃんに手を握られて、そこにはまだ残りの握手券が……。背中をポンと押された。ありがとうっ!!キンちゃん!
目の前にはハナ。
「トクさん、おかえりなさぁい!」
「ただいま……」
また相変わらず語尾が伸びてて、そして眠そうな目!
ふわっと手を両手で包まれて。俺は握り返す。
「ハナ、さっきの背の高い男は……」
聞いてしまった。別に気になってはいないのだが!
「え?」
「とぼけんな、さっきの……」
「あー、アガサさん。お医者様なの」
アガサ? なんか珍しい苗字だ。ぐぐりやすいな。
「それは知ってる。ただのファンか?」
「知り合いです。強いて言えばぁー恩人?」
「恩人……」
な、な、なんの恩人だっ!!
「今度ファンミーティングの班一緒だと思うから仲良くしてあげてね」
お、谷間が……更に寄せられて! あうっ。見てない、あっちが見せてるんだ!
「……う、うん。仲良くする……でさぁ……」
あの大きな男はハナの医者……主治医? なんの医者だ? 内診とかしてたらハナの胸を見てる……。
しかしまたスタッフに剥がされた。もう握手券もない。今日はこれで終わりだ。
「トクさぁーん! ファンミーティングで会いましょうね」
思いっきり手を振ってくれた、ハナ。可愛いじゃねぇか。
ふとまだ少し並んでる美玲ちゃんの握手列。すごいなぁ……っん!!! 美玲ちゃんがこっち見てるぞ……。チラチラ。気のせいだよな? 気のせい。
「トクさん、ハナちゃんどうだった? 美玲ちゃん、ちらほら君たちを見てたよ。ありゃ、裏で美玲ちゃんとハナちゃんバチバチだよー。怖いねぇー」
彼女たちは基本給にグッズの売り上げと握手券の枚数も加算される。
美玲ちゃんはソロでレギュラーも多いし売り上げも良いし、握手の列も長いからかなり稼いでるのであろう。ファンの取り合いとかもあるんだろうな。
でもいくら数がいてもそれぞれの出すお金が少ないと意味がない。
ファンの数が少なくても客単価が高ければいいから、たくさんお金を出してくれる太客を握ることも大事なのだ。
お互いのパフォーマンスを高めるため、かもしれんがこの仕組みは怖いぞ……。その金を出してくれるファンの金が底尽きたら終わりだ。
俺も今まで美玲ちゃんにたくさん注ぎ込んできた。彼女のために精一杯働いているからな。
それが気づいたらハナに注ぎ込んでしまった訳で。ああ、ダメだなぁ。俺は。二人に平等に愛を注ぎ込むしかない。二股なんて初めてだぞ。困った。
「何ぶつぶつ言ってるの、トクさん。僕は断然美玲ちゃん推しですからね。浮気なんてしません」
よく胸を張って言えるな、キンちゃんは。ああ、もう来週だ。楽しみでしかない。
……え、俺……ハナのこと、好きなのか……。
「今更何言ってるの」
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