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2年目
第十八話 ハナ……アイドルの覚悟
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新人の子……悠里ちゃんはどうやら大野ちゃんが所属している芸能事務所の後輩。研究生を経ずになんでいきなり……。なんでわたしが言える立場じゃないか。わたしなんかよりも芸能界には相当詳しいだろうし、現場も慣れているだろう。
彼女とは初めて会ったとき、すごく真面目そうっていうのが伝わった。すごくスタイルも良くてもちろんかわいい。
やっぱり何かが違う……文句は言えない。オーラはすごい。
彼女のデビューイベントも終わり、次の日のお昼にエステのお店で大野ちゃんの施術。今日も全身オイルエステとフェイシャルコース。……私もしたいくらい。
「反対したのよ。でも……社長がどうしても悠里を入れてほしいって。特にコネじゃないとかいうけど彼女の母親がきっと社長の愛人よ」
私は大野ちゃんのパンパンに張った足を温めたインドオイルを塗布して揉み解す。足の裏のゴリゴリ……とした音……、私たちのためにアイドルを辞めて裏方に回って頑張ってくれているのわかるよ。
3歳から事務所のレッスンを受けて名古屋で子役として舞台を中心に活躍していた悠里ちゃん。彼女は大野ちゃんを憧れてとしている。とても、野心のある子だって。
「社長からもあの子はわたしに似てみんなを引っ張っていく素質はある、だなんていうのよ。確かに真面目だけど……さぁ」
大野イズム継承者、ということか。そして歌も踊りも完璧……。でも社長の愛人? の娘でゴリ押し。
「このままじゃ私、悠里ちゃんに追い抜かれちゃう」
って本音が出てしまった。
「そりゃ数年と十何年は違う。ハナはなかなか固定のファンつかないし……て、こないだ来てた背広の背の高い男の人は知り合い?すごく長い時間話してたけど」
……阿笠先生のことだ。先生は私を応援すると言ってくれたものの、すごくお金使ってグッズ買ってくれて、握手券たくさんもらってきた。
「うん、私の通う病院の先生……」
「あの先生、産婦人科の先生じゃない」
……大野ちゃん、知ってるの?
「手を止めない」
私は慌てて手を背中に滑らせてマッサージを続けた。
「私も前あそこに通ってたから。すごいじゃん、私がアイドルになるって言ってもあそこまでお金使ってくれなかったし。それよりも地元で大きな産婦人科病院勤務の先生だからお金持ってるわよ。逃さないようにね」
「あ、うん……」
逃さないようにって……ただ先生の病院に通ってるだけなのに。でも先生は私にとって特別な存在だもの。たしかに大きな外車持ってるけどそんなそぶりを見せない。
「うーん、ハナの強み……歌はうまいからボイトレつければもっと良くなるかも。そろそろあなたのソロパートを解禁するか。あとはー……」
もう、大野ちゃん。エステの時くらいリラックスしてよ。ずっと考えてばかりじゃん。肩もゴリゴリだ。
「あっ……」
「どうしたの?」
「ハナ、胸でかいよね」
!!!!!
大野ちゃんはうつ伏せから起き上がる。彼女の胸があらわになる。ぷるん、と上向きの可愛い形。何回か見てるけど、隠してほしいものである。女同士でも恥ずかしい。
「触っていい?」
「もう触ってるじゃん……!!!」
服の上からいろんな触り方をしてきた。女の子に触られてもドキドキするものなのだ。
「ハナ、胸を強調させたほうがいいよ。男はなんだかんだで胸だから」
……確かにでかいとか言われたことあるけどぉ。私は歌を強みにしたいよ。
そう、わたしは運動音痴だけど歌はすごく得意。自分でも自慢できるほどだ。でも清流ガールズはダンスの方が比重高くてセンター以外はあまり歌うことはできない。
再び大野ちゃんはうつ伏せになって、マッサージ再開。首もゴリゴリ……ちゃんと流してあげなきゃ。
「それよりもさ、ハナは今、彼氏いるの?」
えっ……、なんでこんな時にっ。でも早く返事しないと。手を止めずに今度は二の腕から指先へ手を滑らせてマッサージする。
「いないです、しばらく」
「片想いでさえもしてないの?」
「んー、ないです……」
「そんなに胸あるのにもったいないわ」
……やっぱり胸なの?
「大野ちゃんは確か恋は……多めに見てるとか言ってたけど……どうなの?」
「メンバーには許してはいたわよ。美玲ちゃんがそうであって。わたしは……今清流ガールズのことで頭いっぱいなの」
……そこまでして……。あなたはわたしよりも若いし可愛いから恋の一つやふたつしてほしい。
美玲ちゃんが言ってた清流ガールズ存続の危機で大野ちゃんが焦っていることを思い出した。年上の私がビシッというのが一番かな、今がチャンスかしら。
しかし間髪入れずに
「見返してやりたいの。女の子は弱くないの。強いの。たまに媚びることも必要だけどさ、いつまでもあいつらの言いなりにはなりたくない。私の力で清流ガールズ成功させてギャフンと言わせたい」
あいつら……社長たちのこと? てかさ、わたしの胸を強みにすることが一番男に媚びってるんじゃ……。
「私も悠里もこの世界長いけどさ、色々大変なのよ。今回はコネだけど悠里は実力あったのに花咲かず、ようやく……。美玲も由美香も少しずつ感じてるようだわ。いくらご当地アイドルだからって……手を抜いちゃダメってことを」
目はマジだわ。手を抜いちゃだめ、か。
「ハナも覚悟はある?」
私は大きく息を吸った。
「……はい……」
彼女とは初めて会ったとき、すごく真面目そうっていうのが伝わった。すごくスタイルも良くてもちろんかわいい。
やっぱり何かが違う……文句は言えない。オーラはすごい。
彼女のデビューイベントも終わり、次の日のお昼にエステのお店で大野ちゃんの施術。今日も全身オイルエステとフェイシャルコース。……私もしたいくらい。
「反対したのよ。でも……社長がどうしても悠里を入れてほしいって。特にコネじゃないとかいうけど彼女の母親がきっと社長の愛人よ」
私は大野ちゃんのパンパンに張った足を温めたインドオイルを塗布して揉み解す。足の裏のゴリゴリ……とした音……、私たちのためにアイドルを辞めて裏方に回って頑張ってくれているのわかるよ。
3歳から事務所のレッスンを受けて名古屋で子役として舞台を中心に活躍していた悠里ちゃん。彼女は大野ちゃんを憧れてとしている。とても、野心のある子だって。
「社長からもあの子はわたしに似てみんなを引っ張っていく素質はある、だなんていうのよ。確かに真面目だけど……さぁ」
大野イズム継承者、ということか。そして歌も踊りも完璧……。でも社長の愛人? の娘でゴリ押し。
「このままじゃ私、悠里ちゃんに追い抜かれちゃう」
って本音が出てしまった。
「そりゃ数年と十何年は違う。ハナはなかなか固定のファンつかないし……て、こないだ来てた背広の背の高い男の人は知り合い?すごく長い時間話してたけど」
……阿笠先生のことだ。先生は私を応援すると言ってくれたものの、すごくお金使ってグッズ買ってくれて、握手券たくさんもらってきた。
「うん、私の通う病院の先生……」
「あの先生、産婦人科の先生じゃない」
……大野ちゃん、知ってるの?
「手を止めない」
私は慌てて手を背中に滑らせてマッサージを続けた。
「私も前あそこに通ってたから。すごいじゃん、私がアイドルになるって言ってもあそこまでお金使ってくれなかったし。それよりも地元で大きな産婦人科病院勤務の先生だからお金持ってるわよ。逃さないようにね」
「あ、うん……」
逃さないようにって……ただ先生の病院に通ってるだけなのに。でも先生は私にとって特別な存在だもの。たしかに大きな外車持ってるけどそんなそぶりを見せない。
「うーん、ハナの強み……歌はうまいからボイトレつければもっと良くなるかも。そろそろあなたのソロパートを解禁するか。あとはー……」
もう、大野ちゃん。エステの時くらいリラックスしてよ。ずっと考えてばかりじゃん。肩もゴリゴリだ。
「あっ……」
「どうしたの?」
「ハナ、胸でかいよね」
!!!!!
大野ちゃんはうつ伏せから起き上がる。彼女の胸があらわになる。ぷるん、と上向きの可愛い形。何回か見てるけど、隠してほしいものである。女同士でも恥ずかしい。
「触っていい?」
「もう触ってるじゃん……!!!」
服の上からいろんな触り方をしてきた。女の子に触られてもドキドキするものなのだ。
「ハナ、胸を強調させたほうがいいよ。男はなんだかんだで胸だから」
……確かにでかいとか言われたことあるけどぉ。私は歌を強みにしたいよ。
そう、わたしは運動音痴だけど歌はすごく得意。自分でも自慢できるほどだ。でも清流ガールズはダンスの方が比重高くてセンター以外はあまり歌うことはできない。
再び大野ちゃんはうつ伏せになって、マッサージ再開。首もゴリゴリ……ちゃんと流してあげなきゃ。
「それよりもさ、ハナは今、彼氏いるの?」
えっ……、なんでこんな時にっ。でも早く返事しないと。手を止めずに今度は二の腕から指先へ手を滑らせてマッサージする。
「いないです、しばらく」
「片想いでさえもしてないの?」
「んー、ないです……」
「そんなに胸あるのにもったいないわ」
……やっぱり胸なの?
「大野ちゃんは確か恋は……多めに見てるとか言ってたけど……どうなの?」
「メンバーには許してはいたわよ。美玲ちゃんがそうであって。わたしは……今清流ガールズのことで頭いっぱいなの」
……そこまでして……。あなたはわたしよりも若いし可愛いから恋の一つやふたつしてほしい。
美玲ちゃんが言ってた清流ガールズ存続の危機で大野ちゃんが焦っていることを思い出した。年上の私がビシッというのが一番かな、今がチャンスかしら。
しかし間髪入れずに
「見返してやりたいの。女の子は弱くないの。強いの。たまに媚びることも必要だけどさ、いつまでもあいつらの言いなりにはなりたくない。私の力で清流ガールズ成功させてギャフンと言わせたい」
あいつら……社長たちのこと? てかさ、わたしの胸を強みにすることが一番男に媚びってるんじゃ……。
「私も悠里もこの世界長いけどさ、色々大変なのよ。今回はコネだけど悠里は実力あったのに花咲かず、ようやく……。美玲も由美香も少しずつ感じてるようだわ。いくらご当地アイドルだからって……手を抜いちゃダメってことを」
目はマジだわ。手を抜いちゃだめ、か。
「ハナも覚悟はある?」
私は大きく息を吸った。
「……はい……」
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