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一年目

第十話 ハナ…アイドルっていうのは

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 フリーライブの熱狂はステージ前にいる親衛隊がすっごく盛り上がってくれたのと、いつものライブ会場に来てるファンの子たちの声援で盛り上がった。
 私の周りの子供たちはポカーンだったけど。多分ヒーローショーの方がいいかもね。
 その子の親たちが
「あの地域チャンネルの子たちねぇ」
 と言ってて、清流ガールズも知名度上がってきたのかな。ライブでは県外の人も来てるけど地域の人にも愛されている……地方アイドル……とても素敵。

 にしても親衛隊すごい。なんという動き!って、あのさっきの声かけてきてくれたメガネの人も親衛隊の人なんだ……へぇ……。


 って、全然大野ちゃんに言われた通りにダンス見てなかった。

 ……どうしよ。ともじもじしてると、握手会始まったから私は並んだ。全員と握手するのは初めて。いつも大野ちゃんだけだから。いわゆる芸能人と握手するなんて初めてだなぁ。ドキドキするのはなんだろ。いつもライブで踊ってる子達。握手会は参加しなかったんだよね。女の子と握手って感覚わからなかったし。でも一応仲間になるかもしれないし……。

 最初は最年少の葉月ちゃん。
「最年少の葉月です、よろしくおねがいしますっ!」
 ニコニコっ、これもアイドルの仕事なんだね。知らないわたしにこんなに笑顔見せてくれるなんて。
「頑張ってください」
 って今度オーディション受ける私が何を言う。葉月ちゃんはニコニコしっぱなしだった。ひとまわり年上のわたしに彼女はどう思うんだろ。

 次は由美香さん。フワッといい香り。すごい爪!! メイクも凄い! そうか、アイドルはここまで着飾るのね。わたしあまりメイクしないから。
 あんなに踊って歌っても崩れてないなんて。すごいわ。
「由美香です。ライブに来てくれてるやら?」
「えっ、覚えてて……」
「だってなかなか女の子のファンいないから覚えてたんだ。これからもファン続けてね」
「はい……」
 いや、今度あなた達とアイドルやるかもしれないのに……すると由美香さんが私の耳元で
「良かったら私を推してっ」
 って……セクシィーーー! 私こんなこと言えないよっ!

 剥がされても私を見て手を振ってくれた。すごい、これは男騙されるわ。わたしの次に並んでた人が彼女に骨抜きされてた。

 次はボーイッシュな恵ちゃん。明るくって元気で好きなんだ。
「恵ですっ! よく見る顔やね。来てくれてありがとう!」
あ、彼女もわたしを覚えててくれた。数多くのファンを覚えてるって……すごいことよ。
「はい……」
「新曲、今度のライブでやるよ。楽しみにしててね」
 もしかしたらそれを私も踊るかもしれないやつー……。恵ちゃんはハキハキっとしてて圧倒された。オーラが違う。

 あ、次は大野ちゃん! と思ったらぎゅーっとハグされた。ちょ、みんな見てる前だよ!
「来てくれたぁー!!! ありがとう。どうやった」
「楽しかったです」
「どう楽しかったの?」
「その、やはり野外の方が伸び伸びしてて……」
「……」
 大野ちゃんがすごくきつい顔してる。なんで?!
「まだまだトークはだめね。握手会の時のトークも肝心なんだから。もっと特訓よ。他の子たちともろくに喋ってない。っていうかうちの子たちもワンパターンすぎてだめだわ……」

 さすがリーダー……メンバーの握手の時もチェックしてるのね。
 エステの時も会話をジャンジャンしてきたのもわたしのトーク力を上げるためだったのね。

 そして両手をフワッと触られた。
「握手はこうやってフワッと……どう? された気持ちは」
 フワッと……柔らかい、右手が大野ちゃんの両手に包まれてる。女同士だけど、幸せ。って気持ちが……。
「嬉しいです……」
 大野ちゃんは笑った。
「そんだけーっ? またトーク練習しなきゃ。じゃあまたメールするわ」 
 スタッフから剥がされて、大野ちゃんとはバイバイした。次のファンの人ともハキハキ対応してた。すごいなぁ。

 最後は清流ガールズのトップ! 美玲ちゃん! 大野ちゃんのオーラもすごいけど彼女はアイドルの王道って感じ。
「リーダーと仲良しですね。さすが大野ちゃん推し」
 と微笑まれて手を握られた。フワッと、スベスベ。そう言えば大野ちゃんには毎回ハンドパックして自宅用にハンドクリームとハンドパック買ってもらってるけど……。

「私のことも推して欲しいな」
 美玲ちゃんの笑顔が本当に可愛い。女の私でさえもキュン! てきてしまう。ああ、私もこうやって相手をキュン! てさせれるのかしら。

 すべてが終わった後、なんだかドキドキしっぱなし。握手し終わったファンの顔……幸せいっぱい。これから握手するファンの顔、ドキドキでソワソワ。

 本当に夢のある仕事……なのね、アイドルって。女の私でも女の子にこんなキュンってしちゃうの。
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