恋の味ってどんなの?

麻木香豆

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第十章 新たな道

第五十二話

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 昼ごはんを食べ終え、片付けも終わったところで藍里と時雨は店を出た。
 清太郎が心なしか暗そうに見えたが
「気をつけてな!」
 と声をかけてくれたのを藍里は少しほっとして、ニコッと笑って返した。

 時雨とここまで遠出をするのはもちろん初めてである。車でもよかったが夕方からの食事会でさくらはお酒飲むであろうと時雨は電車を選んだ。

 土曜日ともあって混み合っている。

 大学展の会場はとても広く、これまた人がたくさんである。大学だけでなく企業や学生たちによる出店もある。

「ここで弁当売ったらめっちゃ売れそう」
「時雨くん、お仕事終わったのにまたそんなこと考えてさ」
「ついつい商売柄……昔旅亭の時もこういうイベントで出店したことあるし、学生時代も専門学校だけどやったことあるよ。今度里枝さんたちにこういうイベントに出てみるとか提案してみるよ」
 時雨は本来の目的地を忘れて出店をあちこち見回ってる。藍里は彼にはぐれないように追いかける。途中で気づいたのかごめんごめん、と言おうおしたら藍里が遠いところで二人組のハッピを着た男子学生に藍里が声をかけられていた。

「ねぇ、お姉さん。クレープどう? 安いよ、美味しいよ」
 お姉さん、と言われて藍里はへっ? と声を出してしまった。
「お姉さん可愛いね。一人? どこの大学? よかったら夜の飲み会来ない? 明日の打ち上げでもいいけどさー」
 ニヤニヤと笑う男子学生たちに狼狽える藍里。するも時雨が駆け寄って
「彼女ははまだ高校生だよ。……クレープか。僕クレープ好きだから買うよ?」
 と割って入った。すると一人の男子学生が舌打ちして

「なんだよ、彼氏いるのかよ……あっちでやってるんで、どーぞ」
 と割引券をぶっきらぼうに渡して男子学生は去っていった。その割引券のサークル名を見て時雨は

「な、なんなんだよ……18歳未満やばいし、彼氏いたらダメなのかよ。て藍里ちゃん、ああいう男たちがいるからすごく心配だよ、大学。テニスサークルとか言って飲み会ばかりして酒飲ませて女の子に意地悪するサークルだよ、きっと」
 時雨は割引券をゴミ箱に捨てた。藍里は顔を真っ赤にした。周りから見たら自分達はカップルに見えるのかと。

 そもそも自分自身も高校生以上に見られていたのもびっくりしたのだ。

「にしても18歳未満だったら手を出しちゃダメとかなんなんだよ。だったら僕自身も周りからしたら……そう思われてるのかな」
「そんなことないよ。時雨くんが若く見えるし、彼氏だって思われたから大丈夫」
「……てことは高校生に見えるのかな。よく童顔て言われるけど30超えてからもそれってなぁ」
「もう、寄り道してないで大学展見たいんですけどー」
「あ、ごめんごめん……」
 二人は大学展の本会場に向かった。
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