62 / 79
シノノメナギのご挨拶
第4話 常田家2
しおりを挟む
常田家の中によそ者のわたし一人。なんだか緊張しちゃう。でも常田家の人々はお菓子を食べたり、コーヒー飲んだりとても寛いでいる。
「梛さんも食べて食べて。浩二もありがとうね、これが食べたかったのよー。たまに送ってくれててね」
「あ、はい……いただきます」
うちの地元では有名なお菓子なんだけども、あえて食べることはなかったからこんな味なんだと。そこまで気にいる味なのかな。
「あ、あのさ……みんな」
常田くんがそう言うとみんなの手が止まった。彼と目を合わせる。
「改めまして、僕の……その、おつきあいさせてもらってる東雲梛さんです」
「東雲梛です。よろしくお願いします」
改めて挨拶する。みんなニコニコとしてくれている。わたしの正体を知っている慶一郎さんも。
ちゃんとわたし、常田くんの恋人に見えるかな。淡いピンクのニットにグレーのワンピース、髪の毛もふわっとさせて来たんだけど……。
「まぁまぁ緊張せんでもええで。美波もこれくらいべっぴんさんで気品があったらなぁ」
とお父様。美波……常田くんの妹のことかな。
「娘の美波は看護師でね、サバサバしてて化粧っけないのよ。スカートも履かないし。わたしもだけどね……まぁ楽だから……ってだめよねぇ」
ふふふふ、と笑うお母様が可愛らしい。たしか市役所で働いてるんだよね? 彼女もとても品があるとは思うけど。間違いなくうちの母さんや輝子さんに比べたら全然素敵な女性だ。
「浩二も素敵な嫁さん見つけたもんだな」
「まだ嫁とかやない……っ」
常田くんが顔を真っ赤にしている。
「お父さん、まだ結婚とかなお話じゃないんだから。でも一緒に住んでたし、それに通院の送り迎えもしてくれたって……ご迷惑かけました」
「いえ……」
やっぱり緊張して喉が乾く。
「浩二の病気のことは理解してくれているとは慶一郎から聞いておるが……並大抵なことやないで、梛さん」
……お父様も、慶一郎さんと同じようなことを言ってる。
「でもそれなりに覚悟してついてくれたんやな。本当に梛さん……ありがとな」
覚悟か……。常田くんがコタツの中でわたしの手を握ってきた。わたしには顔を向けずに。ぎゅっと握り返した。
たわいもない話をして、常田くんの子供の頃の写真を見たり、チラッとお笑い芸人たちが出てくる番組を見て、初詣に行くことになった。お昼は神社の近くのご飯屋さんにも行くとのこと。少しお腹空いてる。
「じゃあ着物に着替えましょうね。浩二の部屋に着物用意してあるから」
常田くんの部屋に入れるんだ。居間も台所もだけど物も少なくてきれいである。やはりお母様はきれい好き、そして常田くんのことを考えているのだ。
わたしは立ち上がってコーヒーのカップを台所に持っていこうとすると、慶一郎さんが大丈夫だよと代わりにカップを持っていく。
こういうのはわたしがやらなきゃと思ってたんだけど……。
「梛さん、やらなくていいのよ。あなたと浩二は着替えなきゃ」
「あ、はい……ではお願いします」
慶一郎さんとお父さん二人で部屋を片付けていた。
常田くんの部屋は一階の奥にあった。和室なんだ……ますます昔のわたしの家の頃を彷彿させるわ。
「おかん、用意するで呼んだら来てくれや」
「あ、うん……でも早くしなさいよ」
と、常田くんはわたしを部屋に入れる。家具はタンスとベッドと学習机だけ。シンプル。緑色と青色のきれいな着物や小物が広げてある。
パタン
ふすまが閉められたと同時に常田くんが後ろから抱きついてきた。
「ちょっと、常田く……」
声を出した途端にわたしの口は彼の口に塞がれる。後ろから胸を弄られ、ベッドに押し倒された。
「声出すなよ……二人きりになりたかったん」
常田くんっ……昨日の夜あんなにしたのに。彼は眼鏡を外してたくさんキスをしてきた。そして一気に服を脱ぎ出した。
「そのピンクのニット、余所行きの梛……いつもよりも色っぽいで」
耳元で囁かれるとドキッとしてしまう。スカートに手を入れられて……太腿を触られ、お尻を触られる。本当に変態!!!
「浩二ーっ、これって梛さんの……って!!!」
お母様に見られてしまった。慌ててふすまを閉められてしまった。部屋の中にはわたしが忘れてたポーチが……、これを届けてくれたのかな?
「おかん! 呼ぶまでくるなってゆうたやろ」
「は、はやくしなさいよっ」
顔を真っ赤にしてる常田くん。わたしも恥ずかしいよ!
そういえば……着物着るからわたしの下着姿見られちゃう……どうしよ。
「とりあえず長襦袢着たらええやろ。あと母さんに着付けしてもらう時にあそこが勃たんようにな」
「だ、大丈夫よ……」
そこなのよ、自然現象だからなぁ。困った。慶一郎さんしかわたしの正体しらない。こういう時に自分で着物を着れたら……と思うのよね。
常田くんはテキパキと服を脱いでササッと長襦袢を着ている。
「てか僕が着物着付けてもええけどな」
「え、着付けできるの?」
「まぁな。ばあちゃんが教えてくれたんや。帯はわからんけども途中までは」
と言いながら常田くんは着替えていく。……ど、どういうこと。手つきも器用。
「昔はな、親戚もよう来とったん。おとん長男やから。じいちゃんばあちゃん生きてた頃は正月とか夏祭りとかそういう時はみんな着物着てさー。お茶会とかもやっとったんや」
「お、お茶会?」
「ばあちゃんが茶道の師範やったんよ。自分でも着物着れたら準備とか手間かからんやろと思ってな」
常田くんはさっさと着替え、整えている。すごい……。そしてわたしの着付けをしてくれる。手際良すぎるんだけどぉ。
「すごいね……」
「そうか? まぁあとは……おかんー、入ってきてええで」
お母様が顔を真っ赤にさせて入ってくる。二人がかりで着付けてくれた。
……常田くんが入院してる間に着物教室通おうかな。
「梛さんも食べて食べて。浩二もありがとうね、これが食べたかったのよー。たまに送ってくれててね」
「あ、はい……いただきます」
うちの地元では有名なお菓子なんだけども、あえて食べることはなかったからこんな味なんだと。そこまで気にいる味なのかな。
「あ、あのさ……みんな」
常田くんがそう言うとみんなの手が止まった。彼と目を合わせる。
「改めまして、僕の……その、おつきあいさせてもらってる東雲梛さんです」
「東雲梛です。よろしくお願いします」
改めて挨拶する。みんなニコニコとしてくれている。わたしの正体を知っている慶一郎さんも。
ちゃんとわたし、常田くんの恋人に見えるかな。淡いピンクのニットにグレーのワンピース、髪の毛もふわっとさせて来たんだけど……。
「まぁまぁ緊張せんでもええで。美波もこれくらいべっぴんさんで気品があったらなぁ」
とお父様。美波……常田くんの妹のことかな。
「娘の美波は看護師でね、サバサバしてて化粧っけないのよ。スカートも履かないし。わたしもだけどね……まぁ楽だから……ってだめよねぇ」
ふふふふ、と笑うお母様が可愛らしい。たしか市役所で働いてるんだよね? 彼女もとても品があるとは思うけど。間違いなくうちの母さんや輝子さんに比べたら全然素敵な女性だ。
「浩二も素敵な嫁さん見つけたもんだな」
「まだ嫁とかやない……っ」
常田くんが顔を真っ赤にしている。
「お父さん、まだ結婚とかなお話じゃないんだから。でも一緒に住んでたし、それに通院の送り迎えもしてくれたって……ご迷惑かけました」
「いえ……」
やっぱり緊張して喉が乾く。
「浩二の病気のことは理解してくれているとは慶一郎から聞いておるが……並大抵なことやないで、梛さん」
……お父様も、慶一郎さんと同じようなことを言ってる。
「でもそれなりに覚悟してついてくれたんやな。本当に梛さん……ありがとな」
覚悟か……。常田くんがコタツの中でわたしの手を握ってきた。わたしには顔を向けずに。ぎゅっと握り返した。
たわいもない話をして、常田くんの子供の頃の写真を見たり、チラッとお笑い芸人たちが出てくる番組を見て、初詣に行くことになった。お昼は神社の近くのご飯屋さんにも行くとのこと。少しお腹空いてる。
「じゃあ着物に着替えましょうね。浩二の部屋に着物用意してあるから」
常田くんの部屋に入れるんだ。居間も台所もだけど物も少なくてきれいである。やはりお母様はきれい好き、そして常田くんのことを考えているのだ。
わたしは立ち上がってコーヒーのカップを台所に持っていこうとすると、慶一郎さんが大丈夫だよと代わりにカップを持っていく。
こういうのはわたしがやらなきゃと思ってたんだけど……。
「梛さん、やらなくていいのよ。あなたと浩二は着替えなきゃ」
「あ、はい……ではお願いします」
慶一郎さんとお父さん二人で部屋を片付けていた。
常田くんの部屋は一階の奥にあった。和室なんだ……ますます昔のわたしの家の頃を彷彿させるわ。
「おかん、用意するで呼んだら来てくれや」
「あ、うん……でも早くしなさいよ」
と、常田くんはわたしを部屋に入れる。家具はタンスとベッドと学習机だけ。シンプル。緑色と青色のきれいな着物や小物が広げてある。
パタン
ふすまが閉められたと同時に常田くんが後ろから抱きついてきた。
「ちょっと、常田く……」
声を出した途端にわたしの口は彼の口に塞がれる。後ろから胸を弄られ、ベッドに押し倒された。
「声出すなよ……二人きりになりたかったん」
常田くんっ……昨日の夜あんなにしたのに。彼は眼鏡を外してたくさんキスをしてきた。そして一気に服を脱ぎ出した。
「そのピンクのニット、余所行きの梛……いつもよりも色っぽいで」
耳元で囁かれるとドキッとしてしまう。スカートに手を入れられて……太腿を触られ、お尻を触られる。本当に変態!!!
「浩二ーっ、これって梛さんの……って!!!」
お母様に見られてしまった。慌ててふすまを閉められてしまった。部屋の中にはわたしが忘れてたポーチが……、これを届けてくれたのかな?
「おかん! 呼ぶまでくるなってゆうたやろ」
「は、はやくしなさいよっ」
顔を真っ赤にしてる常田くん。わたしも恥ずかしいよ!
そういえば……着物着るからわたしの下着姿見られちゃう……どうしよ。
「とりあえず長襦袢着たらええやろ。あと母さんに着付けしてもらう時にあそこが勃たんようにな」
「だ、大丈夫よ……」
そこなのよ、自然現象だからなぁ。困った。慶一郎さんしかわたしの正体しらない。こういう時に自分で着物を着れたら……と思うのよね。
常田くんはテキパキと服を脱いでササッと長襦袢を着ている。
「てか僕が着物着付けてもええけどな」
「え、着付けできるの?」
「まぁな。ばあちゃんが教えてくれたんや。帯はわからんけども途中までは」
と言いながら常田くんは着替えていく。……ど、どういうこと。手つきも器用。
「昔はな、親戚もよう来とったん。おとん長男やから。じいちゃんばあちゃん生きてた頃は正月とか夏祭りとかそういう時はみんな着物着てさー。お茶会とかもやっとったんや」
「お、お茶会?」
「ばあちゃんが茶道の師範やったんよ。自分でも着物着れたら準備とか手間かからんやろと思ってな」
常田くんはさっさと着替え、整えている。すごい……。そしてわたしの着付けをしてくれる。手際良すぎるんだけどぉ。
「すごいね……」
「そうか? まぁあとは……おかんー、入ってきてええで」
お母様が顔を真っ赤にさせて入ってくる。二人がかりで着付けてくれた。
……常田くんが入院してる間に着物教室通おうかな。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
完結【R―18】様々な情事 短編集
秋刀魚妹子
恋愛
本作品は、過度な性的描写が有ります。 というか、性的描写しか有りません。
タイトルのお品書きにて、シチュエーションとジャンルが分かります。
好みで無いシチュエーションやジャンルを踏まないようご注意下さい。
基本的に、短編集なので登場人物やストーリーは繋がっておりません。
同じ名前、同じ容姿でも関係無い場合があります。
※ このキャラの情事が読みたいと要望の感想を頂いた場合は、同じキャラが登場する可能性があります。
※ 更新は不定期です。
それでは、楽しんで頂けたら幸いです。
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
彼女の母は蜜の味
緋山悠希
恋愛
ある日、彼女の深雪からお母さんを買い物に連れて行ってあげて欲しいと頼まれる。密かに綺麗なお母さんとの2人の時間に期待を抱きながら「別にいいよ」と優しい彼氏を演じる健二。そんな健二に待っていたのは大人の女性の洗礼だった…
社長の奴隷
星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる