47 / 79
シノノメナギの師走
第10話 独身会
しおりを挟む
「ちょっとそれってさー共依存じゃない?」
共依存? わたしと常田くんの関係が? そんなことはないわ。
今日は例の独身会。薫子が辛辣な顔でそう言う。隣でサアヤもウンウンとうなずく。
「まぁ梛は恋に溺れるとズブズブに溺れるからねぇー」
もう、二人してっ。
「まー、とにもかくにも初彼氏おめでとうー」
「脱、処女おめでとー」
何という雑な祝い方っ! それに人がいるところで処女がなんたら言わないでよ、薫子!
昔から二人には恋の相談やわたしの妄想、暴走によく付き合ってくれてたわけだし。
集まったお店はあの小洒落たバー。美味しいピザとパスタをシェアし合う。常田くんは家にいる。気にせず行ってきて、とのこと。帰りに3人で写真撮ってそれ見せればホッとするかな?
「薫子はどうなの? 彼氏とは」
「うーん、ぼちぼち。今はスマホ一台で繋がっちゃうから寂しくないけど肌寒いわー」
一応彼氏がいる薫子。でも仕事が忙しくてなかなか会えない。そして相手は外国人。結婚するなら同性同士の結婚が認められる国でしたい、日本だけでなくて世界を飛び回る薫子にとっては日本以外で結婚しそうな気もする。
「サアヤはヨガ教室のオンライン始めたんでしょ」
「そうなのよ。最近は仕事終わりのサラリーマンとかさ、あと特に目立つのは子育てで出られないママさんたち。家でヨガをしようというコース作ったら大人気でさ。一緒に子供がヨガをしている様子が映し出されて微笑ましいー。あー子供だけ欲しいよ」
子供ねー。人の子は可愛いのよ、それはよく聞く話。確かに子供は可愛い。私も産めたらいいのにな、と思うけど育てられる自信はない。
仕事ができなくなるじゃない、体型も崩れるし、てか子育てで家から出られない? 不自由! それにわたしの子供だなんて……どんな子が生まれるのかしら。
って、サアヤがわたしをじーっと見る。
「梛、痩せたっぽいし、肌艶いいし。やっぱり恋をして彼氏もできたからかな」
「そ、そうかなぁ……」
と肌をトントンと触ってみる。よくわかんないけどそういうふうにいう人もいるし、わたし自身もちょっと化粧ノリよくなったなぁって思う。
「あと、たくさん愛されてるからでしょっ。わたしも早くジェイムスと会いたいわ。会って抱かれて交わって乱れるとぉー全身ツヤッツヤ、プルップルになるのよー。どの美容液にもそんな効果ないの、ああ、梛が羨ましいっ」
薫子は全身うねらせる。そんな効果あるのかしら、本当に。しかも男同士で。なーんてね。
そいや常田くんとすこし話してたけど……彼も欲しくないって。目の病気遺伝したらかわいそうだって。
それに子供できたらわたしが子供に気を取られて嫉妬しちゃうって真剣に言ってたけど、どんだけ嫉妬するのよ、常田くん……。
「でもその彼、目が見えなくなったら梛は支えていける?」
……サアヤの目が真剣だ。
「結婚して夫婦でも色々起きるけどさ、病気とかリストラとかさ。最初から分かっているのならその結末を覚悟していかないと。並大抵のことじゃないよ、いくら彼が大丈夫だとかさ、点字とかの設備整っててもさ」
「私もそれ思ったけど、梛が今幸せだから良いけどそのあと梛が苦しい思いするって思うと……」
……分かってるよ。それ分かってて、といいつつもどこまで覚悟が必要なんだろう。
いっそのこと別れて他の言い寄られている人に乗り換えても良いのよ。でも常田くんはどうするの? 彼を誰が支えるの?
「大丈夫……二人で乗り越えるって決めたから」
そんな言葉しか絞り出せなかった。
「梛がそう言うなら……」
ああ、いつもなら活発な独身会もだだ下がり。ムードメーカーの薫子もすこししょんぼりしてる。
二人は私のことを心配してるのはわかるよ。合コンで男に馬鹿にされてさ、泣いてたときに二人がその男たちをコテンパンにやっつけてくれて、わたしには幸せになって欲しいって言ってくれたっけ。
「あ、見てみてぇー。私好みのちょーイケメンがカウンターに座ってるわぁー」
薫子、ムードメーカーね。さすが。この雰囲気を頑張って盛り上げようとしてくれてる。
わたしは薫子の指差すカウンターを振り返って見た。
……仙台さん? 他の人から見てもイケメンに見えるってさすがね。彼はわたしには気づいてない。カウンターでマスターと話をしてる。薫子はうっとり見てる。サアヤは
「背が高くてまぁイケメンの分類だけどモヤシみたいだな。でも結構遊んでそう」
と冷静に分析してるけど、わたしこの人に惚れられてるなんて言えないっ。
どうしよう、挨拶するべきかな。いっそのこと仙台さんのことを話したら二人は彼にすべき! と、押されるのだろうか。
「まさか知り合い? 梛」
わたしは頷こうとした時だった。バーの玄関のベルがなった。
「なーんだ、女がいたのかー」
薫子はがっかりした。
わたしもがっかりしてる。仙台さんの元にやってきた女性は……。
「夏目さん、待ってたよ」
「ごめんなさい、お待たせしちゃって」
夏姐さんだった……。
共依存? わたしと常田くんの関係が? そんなことはないわ。
今日は例の独身会。薫子が辛辣な顔でそう言う。隣でサアヤもウンウンとうなずく。
「まぁ梛は恋に溺れるとズブズブに溺れるからねぇー」
もう、二人してっ。
「まー、とにもかくにも初彼氏おめでとうー」
「脱、処女おめでとー」
何という雑な祝い方っ! それに人がいるところで処女がなんたら言わないでよ、薫子!
昔から二人には恋の相談やわたしの妄想、暴走によく付き合ってくれてたわけだし。
集まったお店はあの小洒落たバー。美味しいピザとパスタをシェアし合う。常田くんは家にいる。気にせず行ってきて、とのこと。帰りに3人で写真撮ってそれ見せればホッとするかな?
「薫子はどうなの? 彼氏とは」
「うーん、ぼちぼち。今はスマホ一台で繋がっちゃうから寂しくないけど肌寒いわー」
一応彼氏がいる薫子。でも仕事が忙しくてなかなか会えない。そして相手は外国人。結婚するなら同性同士の結婚が認められる国でしたい、日本だけでなくて世界を飛び回る薫子にとっては日本以外で結婚しそうな気もする。
「サアヤはヨガ教室のオンライン始めたんでしょ」
「そうなのよ。最近は仕事終わりのサラリーマンとかさ、あと特に目立つのは子育てで出られないママさんたち。家でヨガをしようというコース作ったら大人気でさ。一緒に子供がヨガをしている様子が映し出されて微笑ましいー。あー子供だけ欲しいよ」
子供ねー。人の子は可愛いのよ、それはよく聞く話。確かに子供は可愛い。私も産めたらいいのにな、と思うけど育てられる自信はない。
仕事ができなくなるじゃない、体型も崩れるし、てか子育てで家から出られない? 不自由! それにわたしの子供だなんて……どんな子が生まれるのかしら。
って、サアヤがわたしをじーっと見る。
「梛、痩せたっぽいし、肌艶いいし。やっぱり恋をして彼氏もできたからかな」
「そ、そうかなぁ……」
と肌をトントンと触ってみる。よくわかんないけどそういうふうにいう人もいるし、わたし自身もちょっと化粧ノリよくなったなぁって思う。
「あと、たくさん愛されてるからでしょっ。わたしも早くジェイムスと会いたいわ。会って抱かれて交わって乱れるとぉー全身ツヤッツヤ、プルップルになるのよー。どの美容液にもそんな効果ないの、ああ、梛が羨ましいっ」
薫子は全身うねらせる。そんな効果あるのかしら、本当に。しかも男同士で。なーんてね。
そいや常田くんとすこし話してたけど……彼も欲しくないって。目の病気遺伝したらかわいそうだって。
それに子供できたらわたしが子供に気を取られて嫉妬しちゃうって真剣に言ってたけど、どんだけ嫉妬するのよ、常田くん……。
「でもその彼、目が見えなくなったら梛は支えていける?」
……サアヤの目が真剣だ。
「結婚して夫婦でも色々起きるけどさ、病気とかリストラとかさ。最初から分かっているのならその結末を覚悟していかないと。並大抵のことじゃないよ、いくら彼が大丈夫だとかさ、点字とかの設備整っててもさ」
「私もそれ思ったけど、梛が今幸せだから良いけどそのあと梛が苦しい思いするって思うと……」
……分かってるよ。それ分かってて、といいつつもどこまで覚悟が必要なんだろう。
いっそのこと別れて他の言い寄られている人に乗り換えても良いのよ。でも常田くんはどうするの? 彼を誰が支えるの?
「大丈夫……二人で乗り越えるって決めたから」
そんな言葉しか絞り出せなかった。
「梛がそう言うなら……」
ああ、いつもなら活発な独身会もだだ下がり。ムードメーカーの薫子もすこししょんぼりしてる。
二人は私のことを心配してるのはわかるよ。合コンで男に馬鹿にされてさ、泣いてたときに二人がその男たちをコテンパンにやっつけてくれて、わたしには幸せになって欲しいって言ってくれたっけ。
「あ、見てみてぇー。私好みのちょーイケメンがカウンターに座ってるわぁー」
薫子、ムードメーカーね。さすが。この雰囲気を頑張って盛り上げようとしてくれてる。
わたしは薫子の指差すカウンターを振り返って見た。
……仙台さん? 他の人から見てもイケメンに見えるってさすがね。彼はわたしには気づいてない。カウンターでマスターと話をしてる。薫子はうっとり見てる。サアヤは
「背が高くてまぁイケメンの分類だけどモヤシみたいだな。でも結構遊んでそう」
と冷静に分析してるけど、わたしこの人に惚れられてるなんて言えないっ。
どうしよう、挨拶するべきかな。いっそのこと仙台さんのことを話したら二人は彼にすべき! と、押されるのだろうか。
「まさか知り合い? 梛」
わたしは頷こうとした時だった。バーの玄関のベルがなった。
「なーんだ、女がいたのかー」
薫子はがっかりした。
わたしもがっかりしてる。仙台さんの元にやってきた女性は……。
「夏目さん、待ってたよ」
「ごめんなさい、お待たせしちゃって」
夏姐さんだった……。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
乙男女じぇねれーしょん
ムラハチ
青春
見知らぬ街でセーラー服を着るはめになったほぼニートのおじさんが、『乙男女《おつとめ》じぇねれーしょん』というアイドルグループに加入し、神戸を舞台に事件に巻き込まれながらトップアイドルを目指す青春群像劇! 怪しいおじさん達の周りで巻き起こる少女誘拐事件、そして消えた3億円の行方は……。
小説家になろうは現在休止中。
シテくれない私の彼氏
KUMANOMORI(くまのもり)
恋愛
高校生の村瀬りかは、大学生の彼氏・岸井信(きしい まこと)と何もないことが気になっている。
触れたいし、恋人っぽいことをしてほしいけれど、シテくれないからだ。
りかは年下の高校生・若槻一馬(わかつき かずま)からのアプローチを受けていることを岸井に告げるけれど、反応が薄い。
若槻のアプローチで奪われてしまう前に、岸井と経験したいりかは、作戦を考える。
岸井にはいくつかの秘密があり、彼と経験とするにはいろいろ面倒な手順があるようで……。
岸井を手放すつもりのないりかは、やや強引な手を取るのだけれど……。
岸井がシテくれる日はくるのか?
一皮剝いだらモンスターの二人の、恋愛凸凹バトル。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった
白藍まこと
恋愛
主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。
クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。
明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。
しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。
そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。
三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。
※他サイトでも掲載中です。
日給二万円の週末魔法少女 ~夏木聖那と三人の少女~
海獺屋ぼの
ライト文芸
ある日、女子校に通う夏木聖那は『魔法少女募集』という奇妙な求人広告を見つけた。
そして彼女はその求人の日当二万円という金額に目がくらんで週末限定の『魔法少女』をすることを決意する。
そんな普通の女子高生が魔法少女のアルバイトを通して大人へと成長していく物語。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる