7 / 79
シノノメナギの妄想
第5話 チェス
しおりを挟む
今日は施設のイベントスペースにてボードゲーム展。いろんな部屋でさまざまなボードゲームを楽しめるという施設全体で行われているイベント。
私たち図書館でもボードゲームの歴史の本や題材にした小説などの本の展示をしている。そして手にとってくれると嬉しいものである。
「梛さん、休憩1時からでしょ? ご飯終わったら展示見に行きましょうよ」
そこに部下の常田くんが来た。
「んまぁ、いいけど。わたしも見たかったし」
「ほんまかー、めっちゃうれしいわぁー」
たまに出る常田くんの関西弁が可愛い。笑う時の犬歯も。関西出身。本当は関西の図書館で働きたかったらしいけど採用がなくてこっちの親戚の紹介で来たらしい。点字司書という重要な役割で、見た目とは裏腹に仕事はしっかりするけど喋る言葉はちゃらい。
普段の業務では共通語を使っているがリラックスすると出てしまうんだろう。
いかん、年下に可愛いという感情は抱きたくない……。食べ終わった後に歯を磨き、残りの時間で常田くんとイベント会場に。
少しだけわたしより背の高い常田くんだが猫背。一応図書館のスタッフということでタグを下げて見に行くことに。こういうところは細かい。
いろんなボードゲームがあるわけで。日曜ともあって親子連れもいる。
ボードゲーム店のスタッフやボランティアの人たちが解説しながらプレイをする。
それぞれのスペースとは違って全く人が入らないコーナーがあった。
「チェスなんて高貴な人がやるゲームやからなぁー。できます?」
「できない」
「将棋だったらわかるんですけどねぇー……」
「へー、将棋はやるんだ」
「はい、じいちゃんが教えてくれたから」
ニヒヒっと笑う常田くん。ああああー可愛いっ。
でも将棋が得意ってことはある程度頭がいいのかもしれない。普段関西弁とチャラ語で、ヘラヘラしてるけどたしかに色々と手際もいい、検索しなくてもあれはこーでとすすすっと行動する。
若さもあるのか、って常田くんは30歳である。私より五歳下。五歳下でも抵抗あるのよね。でも妄想するのは自由である。
ん、チェスコーナーに見覚えのある人……。
「梛さん、あれってシソンヌの」
「こら、声でかい」
常田くんっ! 彼もそう思ってたのか。……そう、あのエセメガネのじろーである。(エセメガネとわかってから「エセメガネのじろー」と呼ぶようになった)
へー、彼はチェスをするのか。エセメガネも意外と頭が切れる人だなぁ。
じろーは私たちを見て気付いたのか会釈する。彼はどうやらプレーをしにきた客の1人であり、スタッフと2人でチェスをしていた。
スタッフが私たちに気付いて立ち上がり
「あっ、チケットお持ちですか? あー図書館の人か。よかったら教えますんでやりませんか?」
「僕もよかったら教えますんで」
じろーにも教えてもらえるの? それはそれで嬉しいけど。
私は常田くんの方を見る。彼も私を見る。目は笑ってるけど目の動きからして困っている。
「うーん、またちがうところ見に行くので……お二人楽しんでくださいー」
と私はそう言って常田君とその場を去った。チェス……じろーと……心がもたない。もしかしたら近づけたかもしれないのになぁ。
それによく見たら休憩まで後5分!
「そろそろ終わりにしましょうか。梛さん、デート楽しかったです」
……デートじゃないし。でも彼からは数年前からデートに誘われていたがかわしていた。しまった、これが彼との初デート。
そうだったらもっと洒落たところ行くわよ……。
「でも今度はディナーデートしましょうね」
と耳元で囁かれた。
耳元っ!
「へへへ!」
いや、今のやられたら恋に落ちるパターン! と先に職場に戻って行った。
でも彼には彼女がいる。……遊ばれてるのかな。本気なのかな。わかんないや。誘われないよりかはマシか。
チェスのコーナーではまだじろーがチェスに興じてた。目があった。会釈された。
私たち図書館でもボードゲームの歴史の本や題材にした小説などの本の展示をしている。そして手にとってくれると嬉しいものである。
「梛さん、休憩1時からでしょ? ご飯終わったら展示見に行きましょうよ」
そこに部下の常田くんが来た。
「んまぁ、いいけど。わたしも見たかったし」
「ほんまかー、めっちゃうれしいわぁー」
たまに出る常田くんの関西弁が可愛い。笑う時の犬歯も。関西出身。本当は関西の図書館で働きたかったらしいけど採用がなくてこっちの親戚の紹介で来たらしい。点字司書という重要な役割で、見た目とは裏腹に仕事はしっかりするけど喋る言葉はちゃらい。
普段の業務では共通語を使っているがリラックスすると出てしまうんだろう。
いかん、年下に可愛いという感情は抱きたくない……。食べ終わった後に歯を磨き、残りの時間で常田くんとイベント会場に。
少しだけわたしより背の高い常田くんだが猫背。一応図書館のスタッフということでタグを下げて見に行くことに。こういうところは細かい。
いろんなボードゲームがあるわけで。日曜ともあって親子連れもいる。
ボードゲーム店のスタッフやボランティアの人たちが解説しながらプレイをする。
それぞれのスペースとは違って全く人が入らないコーナーがあった。
「チェスなんて高貴な人がやるゲームやからなぁー。できます?」
「できない」
「将棋だったらわかるんですけどねぇー……」
「へー、将棋はやるんだ」
「はい、じいちゃんが教えてくれたから」
ニヒヒっと笑う常田くん。ああああー可愛いっ。
でも将棋が得意ってことはある程度頭がいいのかもしれない。普段関西弁とチャラ語で、ヘラヘラしてるけどたしかに色々と手際もいい、検索しなくてもあれはこーでとすすすっと行動する。
若さもあるのか、って常田くんは30歳である。私より五歳下。五歳下でも抵抗あるのよね。でも妄想するのは自由である。
ん、チェスコーナーに見覚えのある人……。
「梛さん、あれってシソンヌの」
「こら、声でかい」
常田くんっ! 彼もそう思ってたのか。……そう、あのエセメガネのじろーである。(エセメガネとわかってから「エセメガネのじろー」と呼ぶようになった)
へー、彼はチェスをするのか。エセメガネも意外と頭が切れる人だなぁ。
じろーは私たちを見て気付いたのか会釈する。彼はどうやらプレーをしにきた客の1人であり、スタッフと2人でチェスをしていた。
スタッフが私たちに気付いて立ち上がり
「あっ、チケットお持ちですか? あー図書館の人か。よかったら教えますんでやりませんか?」
「僕もよかったら教えますんで」
じろーにも教えてもらえるの? それはそれで嬉しいけど。
私は常田くんの方を見る。彼も私を見る。目は笑ってるけど目の動きからして困っている。
「うーん、またちがうところ見に行くので……お二人楽しんでくださいー」
と私はそう言って常田君とその場を去った。チェス……じろーと……心がもたない。もしかしたら近づけたかもしれないのになぁ。
それによく見たら休憩まで後5分!
「そろそろ終わりにしましょうか。梛さん、デート楽しかったです」
……デートじゃないし。でも彼からは数年前からデートに誘われていたがかわしていた。しまった、これが彼との初デート。
そうだったらもっと洒落たところ行くわよ……。
「でも今度はディナーデートしましょうね」
と耳元で囁かれた。
耳元っ!
「へへへ!」
いや、今のやられたら恋に落ちるパターン! と先に職場に戻って行った。
でも彼には彼女がいる。……遊ばれてるのかな。本気なのかな。わかんないや。誘われないよりかはマシか。
チェスのコーナーではまだじろーがチェスに興じてた。目があった。会釈された。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
乙男女じぇねれーしょん
ムラハチ
青春
見知らぬ街でセーラー服を着るはめになったほぼニートのおじさんが、『乙男女《おつとめ》じぇねれーしょん』というアイドルグループに加入し、神戸を舞台に事件に巻き込まれながらトップアイドルを目指す青春群像劇! 怪しいおじさん達の周りで巻き起こる少女誘拐事件、そして消えた3億円の行方は……。
小説家になろうは現在休止中。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる