雨嫌いな私が雨を好きになるまで

麻木香豆

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第九話

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 トイレに行き、その後も彼は待っていた。
「もうあの部屋まではいけるわよ……」
「心配なんです」
 なんか最初からこう優しくくるのは私は警戒している。なぜなら前の夫の綾人も優しかった。だから付き合って結婚してから一変した時にはあの優しさはどこに置いていったのか恐ろしくなった。

「さっき大将に行ったらもう上がっていいって言われたので……送らせてください」
 と頭を深々と下げられた。

 そんなことされても……

 私は彼の首から下げているタオルで彼の髪の毛を拭いてやった。
「あなただってまだ濡れている……風邪ひくわ」
「ありがとう、優しい人だ。あなただってまだ完全に乾ききってない」
 と反対にタオルを持った彼が私の髪の毛にタオルをあててくれた。そんな優しくしないでほしい、お願い、やめて……。私って優しくされたら……。

「はいはい、じゃあ車を出しておきます。小雨になったし。待っててくださいね」
 ……。

「大丈夫、タクシー呼んで」
「……」
 悲しい顔をしたつづはらさん。でも笑顔にまた戻って頷いてれた。

「わかった。呼ぶよ……」
「ありがとう」
「いいえ」
 しまった。送って貰うのが正解だったのかな。わからない。
 にしてもこんな出会い方、最悪だ。店内で大声で叫んで大雨の中泣き喚いて倒れて。
「今日はゆっくり休んで」
「本当にありがとう、ございました……」

 あぁ、この優しさは本物だろうか。

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