雨嫌いな私が雨を好きになるまで

麻木香豆

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第五話

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 まだ高校から連絡がない。たった1人のまだ2年生という女子生徒が学習という機会を失ってしまうのか。今の高校からも早く決めてほしいと言われるがまだ連絡は来ない。

 事務所に仕事が終わってから面談の時にそう答えると、事務長の男性がやってきた。

「まぁこっちで残留……か。正直厳しくなるよ。下の子が増えてきたから。まぁ年上、熟女の需要はあるがなぁ」
 ……私も40過ぎてしまった。あの〇〇さんのような人生なのか?

「ちょっと今週愛知支店に行くから一週間ついて行くか?」
「えっ……」
「愛知の方も厳しいが一度は現場入ってみよう」
 正直オンラインだから全国の人と繋がるわけだし支店がどこであろうが変わりはないのであるのはわかっている。

 どこもかしこも若い子を求めるのだ。

 私みたいな40過ぎた女を求めるのはごくわずか。常連客は何人かはいるが急にいなくなった人もいる。だからいついなくなってしまう、綱渡り状態だ。

「大丈夫、それに美味しい店連れてってあげるから」
 と事務長が私の手を不用意に触ってくる。手を払いそうになったが払ったらおしまいだ。
 オンライン風俗は触られない、キスされないそれがよかったのに、この事務長はやたらと体を触り、セクハラ発言も多い。
 他の女性スタッフたちもやられているがみんな見ぬふり。

 私は事務長に手を握られているのを我慢した。握られてないの方の手は中指を立てた、机の下で。


 藍里は唯一神奈川で仲良くなったママ友家族に預けた。本当にありがたい。仕事のことはもちろんいってはいないが元々バツイチだったらしく、人に助けてもらったからと私のことも優しくしてくれた。

 藍里は友達と一緒にいられるし、ゲームもあるからと言って楽しそうにしてた。

 藍里のため……藍里の……ふと〇〇さんが頭によぎる。

 私のため……?


 ……。


 まだ雨は降っている。生理も来てからの出張。最悪だ。パフォーマンスが限られる。部屋の壁紙はまだ直していない。机は脚がおかしくなっていたけどそのままにしてきた。藍里は何も言わずにリビングの机を使っていた。

 もし私があのまま我慢してたら、離婚してなかったら今頃どうなっていたんだろう。

 決意して逃げて……なんとかして離婚して。

 藍里にこんな思いをさせなかったのだろうか。

 ダメだ、ネガティヴなことを考えては。私は安定剤を口に含ませて水で流し込んだ。

 ああ、久しぶりの地元に近い場所。

 大丈夫、綾人は今は東京。神奈川にいる娘も守ってくれる人がいる。大丈夫よ。
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