雨嫌いな私が雨を好きになるまで

麻木香豆

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第四話

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「えっ、愛知……」
「うん。三ヶ月後にはここ退去して愛知の支社のオーナーの住むマンションに入れてもらえるらしいの」
「そうなんだ……かなり猶予もらったね」
 娘は本当に穏やかに、でも少しわがままに育った気もする。でも酷いわがままは言わない。反対に私のわがままでここまでついてきてくれた、申し訳ないくらいだ。
「あんたの高校のこともあって猶予もらえたのよ」
「高校は愛知の……?」
「今編入できるところを探してて一校だけ返事待ち。あまりシングルで途中からとかなるとさ、なかなか見つからないのよ」
 もちろん娘には私の仕事はいってない。他の仕事だってあるだろうが、今の仕事をしてからは割が合わない。

「私、高校辞めて仕事してもいいんだよ。バイトももっといいとこ探して……」
「ダメよ、今学校辞めたら。せめて大学は出てほしいからママは一生懸命働いているの」
「……」
「なんかオーナーさんがいうには一階にファミレスがあるからそこでバイトもできるみたいよ」
「……うん、そこならいいかもね」
「今返事待ちしてる高校にも近いから。できれば二年生になってすぐがいいんだけどね……」
「いいよ、いい。無理しなくていいよ」

 と、その時。
 外は雨が降っていた。
 なんか朝から頭が痛いし、眩暈もする。生理も近いしそれなのか、と思ってたけど雨のせいでもあったのか。

 私は体が震えた。
「雨……」
 カーテンを握る私の手は震えてる。藍里は気づいたら部屋に入ってた。この寮も5年近く住んでいて二部屋風呂トイレ付きだなんて贅沢なところに住んでいたんだなぁと。
 愛知……住んでいた岐阜からは少し遠いが行けなくはない。あの家はもう売り払ったらしい。綾人から聞いた。

 それを養育費に充てると毎月支払われている。我慢して彼と暮らしていたときよりも今は少し余裕はあるがまだ足りない。

 ああダメだ、ネガティヴな感情はダメなのに……ポジティブでいなきゃ。

 雨は強くなる。私は息が荒くなる。

 もっと強くなる雨。

「……雨っ、あめっ、あめっ……あああああああっ」
 居間の机を蹴り上げ壁にぶつかった。ああ、壁紙が破れてる。
 ……ああ……出る時にチェックされてしまう。どうしよう。わたしは壁紙を擦る。

 他のところにもいくつか凹んだ跡や破れた備え付けのカーテンとか。

 雨が降ると私は情緒が乱れる。

 気づくと叫び泣き、酷い時は物に八つ当たりする。

 その日はもう仕事に出られない。

 生理と被ったらなおさらだ。


 ああ、雨が嫌い。
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