冬月シバの事件簿

麻木香豆

文字の大きさ
39 / 42
サンダルでダッシュ!

サンダルで再び

しおりを挟む
◆◆◆
 数年後、本屋に立ち寄ると
「モラハラ男の呪縛から抜け出しました」
 というタイトルの本がベストセラー1位として山積みされていた。
 著者はあの時の被害者の女性だった清海さんだった。写真も載っていたがあの頃のボサボサな姿から綺麗な女性として写っていた。ちゃんと化粧すればいい女じゃん。俺の見る目はあったな。
 他にも
「毒親からの脱出」
 という本も出したようで2冊とも売れているようだ。赤裸々た実体験、イラストや漫画でわかりやすく書かれてあるのもあるだろう。

 あれから捜査していくにつれて真相が分かってきた。
 彼女が交際相手から暴力を受けていたのは本当であった。しかしそれは殴る蹴るといった身体暴力ではなくて、言葉による精神的暴力だった。
 市役所の女性センターに相談をしに行ったが話を聞いてもらうだけで解決にはならず、匿って欲しかった彼女は何度も訴えても受理されなかった。実家の親はあてにしたくない、迷惑をかけたくないと言ったが実家があるなら実家に逃げなさい、と。
 また警察にも相談していたことも判明したが言葉による暴力は証拠が無いため保護対象にはならなかった。仕方なく実家に戻また彼女を守るが一心に両親は彼女からスマホを取り上げ、家からも出させようとしなかった。
 本に

「昔から一人娘を大事に大事にという思いが強くなり過保護で過干渉になってしまった。そのせいで疎遠になった。やりすぎたと反省はしているが最愛の娘だ。辛い思いをさせたくはない。だからあの時は私たちのもとに戻ってきた以上、必死に守るしかなかった。だが反対にそれが娘の精神を病み、錯乱してしまった。申し訳なかった」
 と父親は語っている文章があった。

 彼女の交際相手は窃盗と詐欺の容疑で捕まった。それらの罪は認めたが、彼女への精神的暴力をしたことはいまだに認めてはいない。

 本によると清海さんは退院後、数ヶ月で再び逃げた。今度は警察に逃げ込んだようだ。いくつかの音声の録音と言葉の暴力のメモを持ち込み。
 そして保護をされ、逃げながらも彼からされたことを書き綴りそれをブログに載せて反響があり書籍化されたようだ。

 あの時俺はが違和感を感じていたのは的中していたのか。

 今は交際相手の男は牢屋だがいつか出てくるであろう。彼女は本名に、顔まで出してよかったのだろうか。でも今の彼女は大丈夫なんだろう。きっと。
 でもいまだに精神的暴力で苦しむ人は多いし、逃げ場も少ない。法の制度も無い。彼女は逃げられた良い例だ。
 警察では何もできない、それに俺は今警察辞めているからな。話だけは聞けるが。こんな俺に話してどうなるのやら。

 そういえば本の中に
「イケメンの刑事さんからもらったサンダル、逃げる時にこれ履いて走った」
 と書かれていたのだが、俺のことだろうか。サンダル、奮発してよかった。滑りにくくて走りやすいやつ買ったんだよ。
 てか……イケメン、ねぇ。そっと本を戻した。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様を書いたストーリーです。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

処理中です...