最高で最強なふたり

麻木香豆

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口裂け女はこりごりだ!

第四話

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 コウは頭を抱えた。
「うわ、これはエセ口裂け女も流行に乗っかったな……」

 幽霊たちはいろんな理由で現世に残ることがあるのだがあまりにも弱い幽霊だと誰にも気づかれずに彷徨い続けるだけになる。
 しかしメジャーどころの幽霊に化けることができたら人々を怖がらせることができるのだ。

「流行って……。あ、一応書籍発売の時期にも依頼のメールがある。これもコウは無視してるし」
「あん? 口裂け女って聞いただけで色々面倒やし……」
「面倒とか言うなや、放置したんやろ……放置したからまたこのドラマ化のタイミングで大暴れしたんやろ」
「マージーかー」
 自分のしてしまったことに後悔するコウ。

「他の幽霊たちもこの地が有名なうちに口裂け女になれば人々を驚かせられるだろうと大暴れしとるんか……くそっ」
「そーいうことやな」
 ピロン、とまた依頼のメールだ。コウは時計を見る。夕方、学生達の帰宅時間。
 由貴を見ると頷いていた。

「……コウ、また出たらしいで、〇〇郡」
「行くか……」
「てか僕らも流行に乗って〇〇郡で口裂け女除霊動画上げたら視聴率上がるで!」
「ドラマの存在知っとったらとっくに受けてた依頼なのにっ、行くぞ由貴!」
「オーライ!」
 あくまでも彼らは除霊系動画配信者としてメインで頑張りたいのだ。動画の再生回数、動画の登録者数が肝心である。それに結びつくならなんでもする。彼らもある意味流行りに乗っかっている気もしないのだが。

 二人は更衣室に向かおうとしたその時、マスターが何かをコウに投げた。コウはガシッと左手で受け取った。

「……ポマードの整髪料!」
 レトロな容器である。開けると匂いは独特な匂い。かなり鼻にくるのかコウは顔を顰めた。

「コーヒーの香りに邪魔になってしまうので……使わずしまってました。かなりだいぶ前のなので……」
 コウと由貴はどれくらいつければいいかわからないが鏡の前で髪の毛にべっとりつけてみた。マスターは喫茶店じゃないところでして欲しかったらしいが二人を微笑んで見送った。
「ありがとう! マスター!」
「お気をつけて!」

 しかし二人はまだ知らない。ドラマが終わるまではしばらく口裂け女が多発しイタチごっこであることを……。



「もうええかげんにせぇええええー!」
 とコウがブチギレるのも時間の問題であろう。

 




 他にも口裂け女は〇〇郡付近で起きた事故の犠牲者の女性で同じく顔に怪我を負った。
自己を忘れさせたくないが故に口裂け女として姿を現した、という噂もあるのだが……


(諸説あり)
↑これがあるからこそ口裂け女は増殖するのであろう。

(諸説あ……略)



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