最高で最強なふたり

麻木香豆

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追いかけてはいけない

第三話

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 夕方、喫茶店に戻った。
「なにかいましたか」
 マスターは渚から事情を聞いていたようだ。
「ええ、渚さんが描いた通りのものが」
 とコウがメモを見せると渚は顔を真っ赤にして取り上げた。

「本当にこんなのだったんです」
「ええ、たしかに……でもなんだったのでしょう。そういえば渚さんはあの坂の上の女子高出身でしたっけ」
「はい、今日はあの高校の生徒さんで学園祭でカフェをやりたいということで先生とお話ししてきたんです」
 コウはなるほど……と。するとマスターが奥から卒業アルバムを持ってきた。

「やはりこの当時はみんな黒髪ですね……あった、渚さん!」
 由貴はすぐ見つけた。
「今と変わりありませんねーおさげ髪の渚さんも可愛い」
「もう10年も前です……」

「渚さんは登校してた頃は白い綿を追いかけてはいけないとかそんな噂はありましたか」
「いいえ……でも今度の学校祭でお化け屋敷やるクラスがあるみたいでちらっと企画書を見せてもらったらその噂を扱ったものにしようって。ここ数年出回っている噂だそうです」
「ここ数年……二、三年?」
「三年生のクラスの出し物で一年生の頃に出た噂をと」


 数日後、コウと由貴は女子高に向かった。名目は学園祭で喫茶店の出し物をするクラスにコーヒー豆のサンプルを届けることと、その生徒に渚がお化け屋敷を担当する生徒を紹介してもらいネットでもある程度有名な除霊師の2人ということで繋げてもらった。

「除霊師のコウです、よろしくおねがいします」
 と丁寧に名刺を女子高生2人に渡すとキャーっと喜び合ってた。

「実は私、コウさんのファンでして。ねぇ希菜子」
「はい。あと由貴さんも」
 由貴さんも、と後付けされて複雑な由貴だがコウは話を切り出した。

「今回お化け屋敷でこの高校の坂の噂なのですが、白い綿みたいなのを追いかけてはいけない……をモチーフにやられると」
「はい。噂としては私たち一年生の時にです、当時の在校時の先輩達はそんなうわさがなかったというので……三、四年前になにかあったのではと」
「三、四年前……」
「そういう噂がでてから生徒の半数以上は遠回りになるけど別ルートで帰るようになって。でも早く帰りたい生徒があそこを通って数人見た、追いかけて転んだとか……」
 と希菜子と呼ばれた女子生徒は地図を見せた。

「みんなが変えたルートの方が幅も広くて車は横に通らないので安全みたいだけど遠回りになるからバスに乗る子で間に合わない場合はここ使ってたと思います」
「なるほど。白いのを見たり怪我したのは生徒だけかな」
「私の同級生や先輩かなぁ。あとは聞いたことないしあんなところで転ぶだなんてねって」

 確かにあの坂はこけて転がるようなところではないとコウは思っていた。


 2人は学校を後にして周辺の聞き込みをしたが一般住民が怪我したとかそういう話は聞いたことがない、噂は聞いたことがあるが白いのを見たことも危ない目に遭ったことはないと言ってはいたのだが一つちらほらと共通の話題が出た。

「四年くらい前にこの坂で女性が車に轢かれたんです」

 と。

「四年前……〇〇町……あったぞ、コウ」
 図書館で由貴がスマホでネット検索をしてニュースを発見。

 〇〇町の坂で女子大生が歩道から飛び出して車と接触、即死という事故。
 加害者は隣町の営業者を運転していた会社であり、女子大生がいきなり飛び出してきたという。

 通常速度で走行、しっかり前を見ていたがブレーキも間に合わずに女子大生も打ち所が悪く死んでしまったという。

 ドライブレコーダーも故障してぶつかった瞬間のみしか記録が残っていないとのこと。

 そのネット記事を参考にコウが図書館の新聞記事を探す。が、一面には掲載されておらず地方欄に小さく載っているだけであった。
 地方欄の大見出しは地元のゆるキャラの盗難の記事であった。

「このゆるキャラの盗難よりも伝えることがあるだろ……」
「普通ならこういう記事は小さく、事故……しかも人が亡くなっている記事を大きく、そして地方紙でなくて全国紙に取り上げないのか」
「うーむ」
 コウはこの記事をコピーしてとあるところに電話した。
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