90 / 99
追いかけてはいけない
第三話
しおりを挟む
夕方、喫茶店に戻った。
「なにかいましたか」
マスターは渚から事情を聞いていたようだ。
「ええ、渚さんが描いた通りのものが」
とコウがメモを見せると渚は顔を真っ赤にして取り上げた。
「本当にこんなのだったんです」
「ええ、たしかに……でもなんだったのでしょう。そういえば渚さんはあの坂の上の女子高出身でしたっけ」
「はい、今日はあの高校の生徒さんで学園祭でカフェをやりたいということで先生とお話ししてきたんです」
コウはなるほど……と。するとマスターが奥から卒業アルバムを持ってきた。
「やはりこの当時はみんな黒髪ですね……あった、渚さん!」
由貴はすぐ見つけた。
「今と変わりありませんねーおさげ髪の渚さんも可愛い」
「もう10年も前です……」
「渚さんは登校してた頃は白い綿を追いかけてはいけないとかそんな噂はありましたか」
「いいえ……でも今度の学校祭でお化け屋敷やるクラスがあるみたいでちらっと企画書を見せてもらったらその噂を扱ったものにしようって。ここ数年出回っている噂だそうです」
「ここ数年……二、三年?」
「三年生のクラスの出し物で一年生の頃に出た噂をと」
数日後、コウと由貴は女子高に向かった。名目は学園祭で喫茶店の出し物をするクラスにコーヒー豆のサンプルを届けることと、その生徒に渚がお化け屋敷を担当する生徒を紹介してもらいネットでもある程度有名な除霊師の2人ということで繋げてもらった。
「除霊師のコウです、よろしくおねがいします」
と丁寧に名刺を女子高生2人に渡すとキャーっと喜び合ってた。
「実は私、コウさんのファンでして。ねぇ希菜子」
「はい。あと由貴さんも」
由貴さんも、と後付けされて複雑な由貴だがコウは話を切り出した。
「今回お化け屋敷でこの高校の坂の噂なのですが、白い綿みたいなのを追いかけてはいけない……をモチーフにやられると」
「はい。噂としては私たち一年生の時にです、当時の在校時の先輩達はそんなうわさがなかったというので……三、四年前になにかあったのではと」
「三、四年前……」
「そういう噂がでてから生徒の半数以上は遠回りになるけど別ルートで帰るようになって。でも早く帰りたい生徒があそこを通って数人見た、追いかけて転んだとか……」
と希菜子と呼ばれた女子生徒は地図を見せた。
「みんなが変えたルートの方が幅も広くて車は横に通らないので安全みたいだけど遠回りになるからバスに乗る子で間に合わない場合はここ使ってたと思います」
「なるほど。白いのを見たり怪我したのは生徒だけかな」
「私の同級生や先輩かなぁ。あとは聞いたことないしあんなところで転ぶだなんてねって」
確かにあの坂はこけて転がるようなところではないとコウは思っていた。
2人は学校を後にして周辺の聞き込みをしたが一般住民が怪我したとかそういう話は聞いたことがない、噂は聞いたことがあるが白いのを見たことも危ない目に遭ったことはないと言ってはいたのだが一つちらほらと共通の話題が出た。
「四年くらい前にこの坂で女性が車に轢かれたんです」
と。
「四年前……〇〇町……あったぞ、コウ」
図書館で由貴がスマホでネット検索をしてニュースを発見。
〇〇町の坂で女子大生が歩道から飛び出して車と接触、即死という事故。
加害者は隣町の営業者を運転していた会社であり、女子大生がいきなり飛び出してきたという。
通常速度で走行、しっかり前を見ていたがブレーキも間に合わずに女子大生も打ち所が悪く死んでしまったという。
ドライブレコーダーも故障してぶつかった瞬間のみしか記録が残っていないとのこと。
そのネット記事を参考にコウが図書館の新聞記事を探す。が、一面には掲載されておらず地方欄に小さく載っているだけであった。
地方欄の大見出しは地元のゆるキャラの盗難の記事であった。
「このゆるキャラの盗難よりも伝えることがあるだろ……」
「普通ならこういう記事は小さく、事故……しかも人が亡くなっている記事を大きく、そして地方紙でなくて全国紙に取り上げないのか」
「うーむ」
コウはこの記事をコピーしてとあるところに電話した。
「なにかいましたか」
マスターは渚から事情を聞いていたようだ。
「ええ、渚さんが描いた通りのものが」
とコウがメモを見せると渚は顔を真っ赤にして取り上げた。
「本当にこんなのだったんです」
「ええ、たしかに……でもなんだったのでしょう。そういえば渚さんはあの坂の上の女子高出身でしたっけ」
「はい、今日はあの高校の生徒さんで学園祭でカフェをやりたいということで先生とお話ししてきたんです」
コウはなるほど……と。するとマスターが奥から卒業アルバムを持ってきた。
「やはりこの当時はみんな黒髪ですね……あった、渚さん!」
由貴はすぐ見つけた。
「今と変わりありませんねーおさげ髪の渚さんも可愛い」
「もう10年も前です……」
「渚さんは登校してた頃は白い綿を追いかけてはいけないとかそんな噂はありましたか」
「いいえ……でも今度の学校祭でお化け屋敷やるクラスがあるみたいでちらっと企画書を見せてもらったらその噂を扱ったものにしようって。ここ数年出回っている噂だそうです」
「ここ数年……二、三年?」
「三年生のクラスの出し物で一年生の頃に出た噂をと」
数日後、コウと由貴は女子高に向かった。名目は学園祭で喫茶店の出し物をするクラスにコーヒー豆のサンプルを届けることと、その生徒に渚がお化け屋敷を担当する生徒を紹介してもらいネットでもある程度有名な除霊師の2人ということで繋げてもらった。
「除霊師のコウです、よろしくおねがいします」
と丁寧に名刺を女子高生2人に渡すとキャーっと喜び合ってた。
「実は私、コウさんのファンでして。ねぇ希菜子」
「はい。あと由貴さんも」
由貴さんも、と後付けされて複雑な由貴だがコウは話を切り出した。
「今回お化け屋敷でこの高校の坂の噂なのですが、白い綿みたいなのを追いかけてはいけない……をモチーフにやられると」
「はい。噂としては私たち一年生の時にです、当時の在校時の先輩達はそんなうわさがなかったというので……三、四年前になにかあったのではと」
「三、四年前……」
「そういう噂がでてから生徒の半数以上は遠回りになるけど別ルートで帰るようになって。でも早く帰りたい生徒があそこを通って数人見た、追いかけて転んだとか……」
と希菜子と呼ばれた女子生徒は地図を見せた。
「みんなが変えたルートの方が幅も広くて車は横に通らないので安全みたいだけど遠回りになるからバスに乗る子で間に合わない場合はここ使ってたと思います」
「なるほど。白いのを見たり怪我したのは生徒だけかな」
「私の同級生や先輩かなぁ。あとは聞いたことないしあんなところで転ぶだなんてねって」
確かにあの坂はこけて転がるようなところではないとコウは思っていた。
2人は学校を後にして周辺の聞き込みをしたが一般住民が怪我したとかそういう話は聞いたことがない、噂は聞いたことがあるが白いのを見たことも危ない目に遭ったことはないと言ってはいたのだが一つちらほらと共通の話題が出た。
「四年くらい前にこの坂で女性が車に轢かれたんです」
と。
「四年前……〇〇町……あったぞ、コウ」
図書館で由貴がスマホでネット検索をしてニュースを発見。
〇〇町の坂で女子大生が歩道から飛び出して車と接触、即死という事故。
加害者は隣町の営業者を運転していた会社であり、女子大生がいきなり飛び出してきたという。
通常速度で走行、しっかり前を見ていたがブレーキも間に合わずに女子大生も打ち所が悪く死んでしまったという。
ドライブレコーダーも故障してぶつかった瞬間のみしか記録が残っていないとのこと。
そのネット記事を参考にコウが図書館の新聞記事を探す。が、一面には掲載されておらず地方欄に小さく載っているだけであった。
地方欄の大見出しは地元のゆるキャラの盗難の記事であった。
「このゆるキャラの盗難よりも伝えることがあるだろ……」
「普通ならこういう記事は小さく、事故……しかも人が亡くなっている記事を大きく、そして地方紙でなくて全国紙に取り上げないのか」
「うーむ」
コウはこの記事をコピーしてとあるところに電話した。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
岬ノ村の因習
めにははを
ホラー
某県某所。
山々に囲われた陸の孤島『岬ノ村』では、五年に一度の豊穣の儀が行われようとしていた。
村人達は全国各地から生贄を集めて『みさかえ様』に捧げる。
それは終わらない惨劇の始まりとなった。
FLY ME TO THE MOON
如月 睦月
ホラー
いつもの日常は突然のゾンビ大量発生で壊された!ゾンビオタクの格闘系自称最強女子高生が、生き残りをかけて全力疾走!おかしくも壮絶なサバイバル物語!
すべて実話
さつきのいろどり
ホラー
タイトル通り全て実話のホラー体験です。
友人から聞いたものや著者本人の実体験を書かせていただきます。
長編として登録していますが、短編をいつくか載せていこうと思っていますので、追加配信しましたら覗きに来て下さいね^^*
真夜中の訪問者
星名雪子
ホラー
バイト先の上司からパワハラを受け続け、全てが嫌になった「私」家に帰らず、街を彷徨い歩いている内に夜になり、海辺の公園を訪れる。身を投げようとするが、恐怖で体が動かず、生きる気も死ぬ勇気もない自分自身に失望する。真冬の寒さから逃れようと公園の片隅にある公衆トイレに駆け込むが、そこで不可解な出来事に遭遇する。
※発達障害、精神疾患を題材とした小説第4弾です。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
別れてくれない夫は、私を愛していない
abang
恋愛
「私と別れて下さい」
「嫌だ、君と別れる気はない」
誕生パーティー、結婚記念日、大切な約束の日まで……
彼の大切な幼馴染の「セレン」はいつも彼を連れ去ってしまう。
「ごめん、セレンが怪我をしたらしい」
「セレンが熱が出たと……」
そんなに大切ならば、彼女を妻にすれば良かったのでは?
ふと過ぎったその考えに私の妻としての限界に気付いた。
その日から始まる、私を愛さない夫と愛してるからこそ限界な妻の離婚攻防戦。
「あなた、お願いだから別れて頂戴」
「絶対に、別れない」
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる