最高で最強なふたり

麻木香豆

文字の大きさ
上 下
88 / 99
追いかけてはいけない

第一話

しおりを挟む

 とある街にある喫茶店。昼下がり。ウエイターのコウとユキはランチで混み合った店内がサーっと波のように引き、ようやく昼休み。

 カランカラン

 入り口から誰か入ってきた。

「喫茶は3時から……って渚ちゃん?!」

 出かけていた喫茶マスターの娘、渚が両膝から血を流してそして顔は半泣きで立っていた。

「痛かったヨォー!!!」
 と泣き崩れた。



「転んで怪我した?!」
 渚の膝を由貴が手当てをする。由貴は前から渚のことが好きなのである。

「白いものが動いてコロコローって気になってどんどん転がって……」
「誰にも助けてもらえなかったのか、それにスマホは?」
「電話したわよ! 店の忙しい昼時だったし」
 コウはふと時計を見た。

「あーめっちゃ混んでたわ」

「たまたま通ったタクシーに乗れたから良かったけど」

「ん、てか話戻していいか?」
 コウは何か気になったようだ。
「どこまで?」
「ハンコ落としたところ」
「……コロコロズコー! って」
「いや、そこじゃなくて……落として」
「あー、白いモノが動いて」
「それ!」
 コウが手を叩いた。そしてノートパソコンを取り出した。

「なんだ、コウ……」
「数件ほど依頼であったやつだ」
 とメールを確認して開いて2人に見せた。コウと由貴は普段は喫茶店のウエイターをしているのだが実際は除霊師としてコンビを組んでいる2人。
 子供の頃に山で遭難して死にかけたところを天狗様に助けられたのだが、命を助けたしついでにと勝手に天狗様から街の幽霊達の統率をするよう霊能力をつけられてしまった2人。

 それを生かして除霊の依頼を承っているのである。

「『白いモノを追いかけたら事故に遭いかけた、という噂があるけど本当? 調べてください!』『〇〇町の坂に出てくる白いモノを追いかけると死に繋がるから追いかけるな、という噂があります。ここ数日ここら辺で怪我をする子が増えていて……』」
 すると渚は叫んだ。

「あ、〇〇町! 私そこに行ってたの」




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

枷と鎖、首輪に檻

こうしき
ホラー
大学生のひかりは、交際をしている社会人の彼が自分に対し次第に粘着性を露にしていく様子に恐怖していた。SNSのチェックに始まり、行動歴や交遊関係の監視、更には檻の中に閉じ込めると言い出して──。 自分を渦巻く環境が変化する中、閉じ込められたひかりは外の世界が狂っていく様子に気が付いていなかった。

岬ノ村の因習

めにははを
ホラー
某県某所。 山々に囲われた陸の孤島『岬ノ村』では、五年に一度の豊穣の儀が行われようとしていた。 村人達は全国各地から生贄を集めて『みさかえ様』に捧げる。 それは終わらない惨劇の始まりとなった。

FLY ME TO THE MOON

如月 睦月
ホラー
いつもの日常は突然のゾンビ大量発生で壊された!ゾンビオタクの格闘系自称最強女子高生が、生き残りをかけて全力疾走!おかしくも壮絶なサバイバル物語!

すべて実話

さつきのいろどり
ホラー
タイトル通り全て実話のホラー体験です。 友人から聞いたものや著者本人の実体験を書かせていただきます。 長編として登録していますが、短編をいつくか載せていこうと思っていますので、追加配信しましたら覗きに来て下さいね^^*

真夜中の訪問者

星名雪子
ホラー
バイト先の上司からパワハラを受け続け、全てが嫌になった「私」家に帰らず、街を彷徨い歩いている内に夜になり、海辺の公園を訪れる。身を投げようとするが、恐怖で体が動かず、生きる気も死ぬ勇気もない自分自身に失望する。真冬の寒さから逃れようと公園の片隅にある公衆トイレに駆け込むが、そこで不可解な出来事に遭遇する。 ※発達障害、精神疾患を題材とした小説第4弾です。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

別れてくれない夫は、私を愛していない

abang
恋愛
「私と別れて下さい」 「嫌だ、君と別れる気はない」 誕生パーティー、結婚記念日、大切な約束の日まで…… 彼の大切な幼馴染の「セレン」はいつも彼を連れ去ってしまう。 「ごめん、セレンが怪我をしたらしい」 「セレンが熱が出たと……」 そんなに大切ならば、彼女を妻にすれば良かったのでは? ふと過ぎったその考えに私の妻としての限界に気付いた。 その日から始まる、私を愛さない夫と愛してるからこそ限界な妻の離婚攻防戦。 「あなた、お願いだから別れて頂戴」 「絶対に、別れない」

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

処理中です...