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シンクロカップル
第二話
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亜美、そして藤澤だけでなく由貴までもがシンクロするほどの驚きの事実である。
「由貴、お前までびっくりしなくていい」
「いや、筋肉に乗り移るって……聞いたことない」
「まぁ確かにな。非常に稀なケースだ」
亜美がハッと思いついたようだ。
「まさかですが、アニメで目玉に乗り移ったとかいう……」
コウは首を横に振って笑った。
「目玉の親父も確かにそうだったが。ファンタジー、架空の話だ……でもリアルに過去、似たような事例を聞いたことがあった」
由貴は聞いたことないぞと首を傾げるがコウにカメラを回し続ける。
さっきまでばてていたコウだが次第に饒舌さを取り戻しカメラ写りも気にしながら身振り手振りで語り始める。
「乗り移りや転生はこの世では様々ある、でもまさか筋肉というピンポイントに乗り移るとは。この目でみることができるだなんて驚きだ」
すると亜美は笑った。
「どうしました?」
そんな彼女に由貴はカメラを向けた。もちろん笑った時に隣の藤澤も笑った。
「き、筋肉だなんて……藤澤くんらしいわ」
「えっ……」
「筋トレ好きだし」
たしかに藤澤は筋肉質だ。登山のためにも筋力も必要だろう。だが一般的な男性よりかは体は大きい、それはコウは思っていた。
「筋肉好きだから筋肉、なかなかなものだなぁ……」
由貴も興味津々だ。ついカメラを回しながら話してしまった。
「しかもただの筋肉ではない、愛する人の筋肉に乗り移るというのはすごいことだ。亜美さんを愛するがあまり……自分の好きな筋肉に、亜美さんの筋肉に乗り移る。思いが強かったのだろう」
「でも……ありえない、こんなのありえない! 移植したわけでもないのに。それに乗り移るなら私の体全体に乗り移ればいいのに」
亜美は体を動かしながら狼狽えるが横で藤澤も同じように狼狽えてる姿はコウも由貴も面白く感じる。
「確かにね。でも即死した藤澤さんが意識不明になった亜美さんの筋肉にすぐ乗り移って体を動かし安全なところに……まぁ確率的には奇跡的なものでしょうね、救いたい一心に筋肉に……体全体に乗り移ってもよかったのにねぇ」
すると亜美は笑った。
「藤澤くんったら……本当あの人は早とちりで突拍子もない人なんです。筋肉に乗り移るって」
次第に涙が溢れた。すると由貴はあることに気づく。
「もし藤澤さんを亜美さんから除霊したら……」
すると遠くから声がした。
「亜美ー! お待たせぇー」
同じように登山の格好をして現れたこれまた体格の良い男。藤澤よりもでかいかもしれない。
「桐生さん!」
桐生は亜美の横に立った。
「すごい体格いいですよね」
「はい、山岳救助隊の方ですから」
すると桐生が頼んでもいないのにマッチョポーズをする。
「はい……あの落石事故の時に駆けつけたのです。亜美さんはすごい血だらけだったのにあの大きな岩を持ち上げて出てきたんですよ。ありえない」
「たしかにありえない……」
「慰霊碑も場から私たち山岳救助隊やボランティアの方で建てました」
なるほど、とコウ。
「結婚式前に藤澤くんに報告したくて……あ……」
亜美はコウに耳打ちする。横にいる藤澤も。
「藤澤くんが筋肉に乗り移ってることは内緒ですよ」
「かしこまりました。……除霊はせず、残しておきましょう」
「ありがとうございます、一生彼と共に……生きます」
桐生は不思議そうな顔をしていた。
「ん? 僕と?」
「そ、そうよ。桐生くんと、共に生きるって」
「当たり前だろ」
「ね、ふふふ」
コウと由貴はその2人の会話を見ていてヒヤリとしたが……たしかにこの時点で藤澤を除霊したら亜美は死ぬ。
筋肉は腕の筋肉だけでない。だからだ。
仲睦まじく笑う亜美と桐生。しかし桐生はコウを見ている。
「……今日はありがとうございました」
「いえ、僕らも山登りを滅多にしませんからこんな綺麗な景色見ることができてすごく嬉しいです。由貴、亜美さんと別のところで撮影しててくれ」
由貴は頷いて亜美を違うところに連れて行く。
慰霊碑の前で桐生とコウは2人きり。コウは全てを話した。なぜなら依頼者は桐生だからだ。
「……やはりダメでしたか」
「ですね。残念ながら」
「はぁ……」
桐生はうずくまる。そう、今回のご依頼は彼からのものであった。
事故に遭った亜美を第一発見した桐生。なんと彼は藤澤と親交があり、同じジムに通っていたのである。亜美もジムに入会していたがスケジュール上会うことはなかったがチラッと見た程度、そしてあの落石事故で偶然亜美を助けることになったのだ。
「藤澤くんらしい、確かにそうだけども。僕が早くここに辿り着いてたら……僕に乗り移ればよかったのになぁ」
桐生はがっかりしていた。
「……乗り移られる方もたまったもんじゃないですよ」
と、コウは笑った。桐生は首を横に振った。
「藤澤くんが僕の肉体に……ああ、僕の本望でした」
「えっ」
「だって、僕……藤澤くんが好きだったんです」
続
「由貴、お前までびっくりしなくていい」
「いや、筋肉に乗り移るって……聞いたことない」
「まぁ確かにな。非常に稀なケースだ」
亜美がハッと思いついたようだ。
「まさかですが、アニメで目玉に乗り移ったとかいう……」
コウは首を横に振って笑った。
「目玉の親父も確かにそうだったが。ファンタジー、架空の話だ……でもリアルに過去、似たような事例を聞いたことがあった」
由貴は聞いたことないぞと首を傾げるがコウにカメラを回し続ける。
さっきまでばてていたコウだが次第に饒舌さを取り戻しカメラ写りも気にしながら身振り手振りで語り始める。
「乗り移りや転生はこの世では様々ある、でもまさか筋肉というピンポイントに乗り移るとは。この目でみることができるだなんて驚きだ」
すると亜美は笑った。
「どうしました?」
そんな彼女に由貴はカメラを向けた。もちろん笑った時に隣の藤澤も笑った。
「き、筋肉だなんて……藤澤くんらしいわ」
「えっ……」
「筋トレ好きだし」
たしかに藤澤は筋肉質だ。登山のためにも筋力も必要だろう。だが一般的な男性よりかは体は大きい、それはコウは思っていた。
「筋肉好きだから筋肉、なかなかなものだなぁ……」
由貴も興味津々だ。ついカメラを回しながら話してしまった。
「しかもただの筋肉ではない、愛する人の筋肉に乗り移るというのはすごいことだ。亜美さんを愛するがあまり……自分の好きな筋肉に、亜美さんの筋肉に乗り移る。思いが強かったのだろう」
「でも……ありえない、こんなのありえない! 移植したわけでもないのに。それに乗り移るなら私の体全体に乗り移ればいいのに」
亜美は体を動かしながら狼狽えるが横で藤澤も同じように狼狽えてる姿はコウも由貴も面白く感じる。
「確かにね。でも即死した藤澤さんが意識不明になった亜美さんの筋肉にすぐ乗り移って体を動かし安全なところに……まぁ確率的には奇跡的なものでしょうね、救いたい一心に筋肉に……体全体に乗り移ってもよかったのにねぇ」
すると亜美は笑った。
「藤澤くんったら……本当あの人は早とちりで突拍子もない人なんです。筋肉に乗り移るって」
次第に涙が溢れた。すると由貴はあることに気づく。
「もし藤澤さんを亜美さんから除霊したら……」
すると遠くから声がした。
「亜美ー! お待たせぇー」
同じように登山の格好をして現れたこれまた体格の良い男。藤澤よりもでかいかもしれない。
「桐生さん!」
桐生は亜美の横に立った。
「すごい体格いいですよね」
「はい、山岳救助隊の方ですから」
すると桐生が頼んでもいないのにマッチョポーズをする。
「はい……あの落石事故の時に駆けつけたのです。亜美さんはすごい血だらけだったのにあの大きな岩を持ち上げて出てきたんですよ。ありえない」
「たしかにありえない……」
「慰霊碑も場から私たち山岳救助隊やボランティアの方で建てました」
なるほど、とコウ。
「結婚式前に藤澤くんに報告したくて……あ……」
亜美はコウに耳打ちする。横にいる藤澤も。
「藤澤くんが筋肉に乗り移ってることは内緒ですよ」
「かしこまりました。……除霊はせず、残しておきましょう」
「ありがとうございます、一生彼と共に……生きます」
桐生は不思議そうな顔をしていた。
「ん? 僕と?」
「そ、そうよ。桐生くんと、共に生きるって」
「当たり前だろ」
「ね、ふふふ」
コウと由貴はその2人の会話を見ていてヒヤリとしたが……たしかにこの時点で藤澤を除霊したら亜美は死ぬ。
筋肉は腕の筋肉だけでない。だからだ。
仲睦まじく笑う亜美と桐生。しかし桐生はコウを見ている。
「……今日はありがとうございました」
「いえ、僕らも山登りを滅多にしませんからこんな綺麗な景色見ることができてすごく嬉しいです。由貴、亜美さんと別のところで撮影しててくれ」
由貴は頷いて亜美を違うところに連れて行く。
慰霊碑の前で桐生とコウは2人きり。コウは全てを話した。なぜなら依頼者は桐生だからだ。
「……やはりダメでしたか」
「ですね。残念ながら」
「はぁ……」
桐生はうずくまる。そう、今回のご依頼は彼からのものであった。
事故に遭った亜美を第一発見した桐生。なんと彼は藤澤と親交があり、同じジムに通っていたのである。亜美もジムに入会していたがスケジュール上会うことはなかったがチラッと見た程度、そしてあの落石事故で偶然亜美を助けることになったのだ。
「藤澤くんらしい、確かにそうだけども。僕が早くここに辿り着いてたら……僕に乗り移ればよかったのになぁ」
桐生はがっかりしていた。
「……乗り移られる方もたまったもんじゃないですよ」
と、コウは笑った。桐生は首を横に振った。
「藤澤くんが僕の肉体に……ああ、僕の本望でした」
「えっ」
「だって、僕……藤澤くんが好きだったんです」
続
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