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美佳子と虹雨
美佳子と虹雨3
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コウは美佳子お手製のプリンを食べながら話を聞くことにした。
「わたしはね、一応養鶏場継ぐっていうテイで農学校出身だったんだけどさ……やっぱりおしゃれ好きだし、都会に憧れて、ちょうど親とも仲悪くて逃げるように東京に来て、好きなブランドのお店で働いてたの。まぁ楽しいし、芸能人もたくさん見たし。でも何か物足りなかった」
美佳子は綺麗になったキラキラの爪をいじる。
「美佳子さんは倖田來未さんか浜崎あゆみさんといえば倖田來未さんの方が好きそうやな」
「うんうん! クゥちゃん大好きー!」
「姉ちゃんがよう聞いとった」
「そうなんだーんでさ、でさ」
美佳子は話を逸らされるのは嫌なようだ。
「仕事は楽しかったけど家は寝て帰るようなもん……ご飯もレトルトとかコンビニ弁当。抜く時もあったわ。あと友達もできなくて。そんな私を見かねた地元の友達からメールが来たの」
「ほぉ」
「招待制のWebサービス⚪︎ixiだったの」
コウはまたでた、⚪︎ixiと思うが彼女にとっては重要なコンテンツだったようだ。
「⚪︎ixiに招待されてから地元の友だちと交流するようになってすごく懐かしい気持ちになったし仕事もセーブしなきゃなぁって少し都心から離れたアパレル店に転職したんだ」
やっぱり話が長くなりそうだ、と思いながらも底にカラメルがあるかもしれないとか期待しながら奥を掘り進めても無いことに少しガッカリするコウ。でも普通にプリンは美味しい。
「転職してから余裕が出てから親とは何とか仲直りできてさ、うちからたくさん卵が定期的に送られてきて。食べることをおざなりにしていた私はおばあちゃんやお母さんが教えてくれた料理を思い出しながら毎日自炊するようになったんだよー」
「食は大事や。俺もできるだけ自炊しとるわ」
「すごいね! でも大変でしょ」
「大変だけど、健康のこと考えたら」
「私も、最初のころの不健康な生活が祟って病院通い……あのころの自分に叱ってやりたい!」
美佳子は見た目丸っとしていで、病気をしているようには感じ取れなかった。
「でもさ、彼氏はなかなかできなくってさ。たまたま⚪︎ixiのなかでのコミュニティで『農学校卒業した人』というのがあってそこでの集まりが近くであったから行ったの。そこで出会ったのがあっくんなのです!」
話のゴールが見えてきた、とホッとし底つきたプリンの容器を美佳子にご馳走様、とコウは渡した。
「まわりの中で派手すぎて浮いていた私に全く振り向いてくれなくて……一応お友達になったけどさ。で、あっくんが熱出して倒れた時に押しかけてたまご粥を作ってあげたら……そこで告白されたの」
「押しかけたまご粥!」
「押しかけとか言わないで……ついでに風邪もらっちゃったけどいい思い出」
美佳子は思い出に浸っていた。
「それから付き合い始めて半年、私の実家の養鶏場に行きたいって、あっくんが言ってくれたの」
「自分から彼女の実家に行きたいっていうのはなかなかおらんな」
「でしょー。ずっと料理作ってあげてたし、ふふふ」
「彼の家の実家の酪農場はお兄さんが継いでて、自分もなにかやりたかったって。だから実家の養鶏場見て僕に継がせてください! って私のプロポーズの前に言ったのよ……」
コウは笑ったが、少し怒った顔の美佳子を見てへこへこした。
「でも嬉しかった……ちゃんとあの後プロポーズし直してくれたし。だから私もあと半年仕事をして引き継いで退職なのよ」
「そか、ちゃんとしてるんやなぁ……あっくんは」
自分のラブロマンスを語って美佳子はスッキリしたようである。が。
「それにしてもコウくんはなんでここにいるの」
「わたしはね、一応養鶏場継ぐっていうテイで農学校出身だったんだけどさ……やっぱりおしゃれ好きだし、都会に憧れて、ちょうど親とも仲悪くて逃げるように東京に来て、好きなブランドのお店で働いてたの。まぁ楽しいし、芸能人もたくさん見たし。でも何か物足りなかった」
美佳子は綺麗になったキラキラの爪をいじる。
「美佳子さんは倖田來未さんか浜崎あゆみさんといえば倖田來未さんの方が好きそうやな」
「うんうん! クゥちゃん大好きー!」
「姉ちゃんがよう聞いとった」
「そうなんだーんでさ、でさ」
美佳子は話を逸らされるのは嫌なようだ。
「仕事は楽しかったけど家は寝て帰るようなもん……ご飯もレトルトとかコンビニ弁当。抜く時もあったわ。あと友達もできなくて。そんな私を見かねた地元の友達からメールが来たの」
「ほぉ」
「招待制のWebサービス⚪︎ixiだったの」
コウはまたでた、⚪︎ixiと思うが彼女にとっては重要なコンテンツだったようだ。
「⚪︎ixiに招待されてから地元の友だちと交流するようになってすごく懐かしい気持ちになったし仕事もセーブしなきゃなぁって少し都心から離れたアパレル店に転職したんだ」
やっぱり話が長くなりそうだ、と思いながらも底にカラメルがあるかもしれないとか期待しながら奥を掘り進めても無いことに少しガッカリするコウ。でも普通にプリンは美味しい。
「転職してから余裕が出てから親とは何とか仲直りできてさ、うちからたくさん卵が定期的に送られてきて。食べることをおざなりにしていた私はおばあちゃんやお母さんが教えてくれた料理を思い出しながら毎日自炊するようになったんだよー」
「食は大事や。俺もできるだけ自炊しとるわ」
「すごいね! でも大変でしょ」
「大変だけど、健康のこと考えたら」
「私も、最初のころの不健康な生活が祟って病院通い……あのころの自分に叱ってやりたい!」
美佳子は見た目丸っとしていで、病気をしているようには感じ取れなかった。
「でもさ、彼氏はなかなかできなくってさ。たまたま⚪︎ixiのなかでのコミュニティで『農学校卒業した人』というのがあってそこでの集まりが近くであったから行ったの。そこで出会ったのがあっくんなのです!」
話のゴールが見えてきた、とホッとし底つきたプリンの容器を美佳子にご馳走様、とコウは渡した。
「まわりの中で派手すぎて浮いていた私に全く振り向いてくれなくて……一応お友達になったけどさ。で、あっくんが熱出して倒れた時に押しかけてたまご粥を作ってあげたら……そこで告白されたの」
「押しかけたまご粥!」
「押しかけとか言わないで……ついでに風邪もらっちゃったけどいい思い出」
美佳子は思い出に浸っていた。
「それから付き合い始めて半年、私の実家の養鶏場に行きたいって、あっくんが言ってくれたの」
「自分から彼女の実家に行きたいっていうのはなかなかおらんな」
「でしょー。ずっと料理作ってあげてたし、ふふふ」
「彼の家の実家の酪農場はお兄さんが継いでて、自分もなにかやりたかったって。だから実家の養鶏場見て僕に継がせてください! って私のプロポーズの前に言ったのよ……」
コウは笑ったが、少し怒った顔の美佳子を見てへこへこした。
「でも嬉しかった……ちゃんとあの後プロポーズし直してくれたし。だから私もあと半年仕事をして引き継いで退職なのよ」
「そか、ちゃんとしてるんやなぁ……あっくんは」
自分のラブロマンスを語って美佳子はスッキリしたようである。が。
「それにしてもコウくんはなんでここにいるの」
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