最高で最強なふたり

麻木香豆

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みえる少年編

第九話

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「記憶にないのか」

うん、と美守は頷いた。すると彼は

「お母さん、お父さん……コウくんと由貴くんとお話ししたい」

と言うと美帆子夫婦は部屋を出た。

「コウくん、頼んだわ」

美帆子は心配な顔をしながらもマスターに背中を押されて部屋に出た。

「大丈夫か、まだ横になってろ。もう少し回復して一眠りしてほうがいい」

と虹雨に言われても美守は首を横に振る。

「今は寝てるよりかは座ってた方がいい」
「……いくつか聞くが無理だったら答えなくていい。由貴は手を握ってやってくれ」

由貴は頷いて美守の手を握るととても冷たかった。
虹雨は指を鳴らし、とある幽霊を呼び出した。それはあの仕立て屋で見た霊。美守にとっては血はつながらないが、親族でもある。

「美守くん、いまこのおじさんは見えるか」
「うん、見えるよ」
「わかった。おじさん、ありがとう」

え、それだけ? と言いかけたところで虹雨に消される。


「なるほど、まだみえる。一年前に市役所に花子さんを連れてきた自覚は」
「……はい。学校のトイレで啜り泣く声がすると噂が出てて。僕が一人乗り込んだら汚いトイレで辛そうにしていた花子さんがいたから……ちょうどその日は市役所見学だったから着いてきてもらったんだ」
「……そうやってやったことは他には?」
「何回か。コウくんはできる?」
「んー、さっきみたいに呼び寄せることはできるが、連れて行くか……それはしたことがなかった。霊の移住能力は美守くんの特権かもな」

美守はうつむいた。

「いけないことしちゃったかな」

虹雨は首を横に振った。

「花子さんは汚いところから出られたからよかったと言ってた。まぁ……奥のトイレだったけどもさ。今回のあの口裂け女みたいなやつは君のことを悪用してた、だから悪くないから」
「……あの口裂け女さんも助けてくれって叫んでた……だから助けてあげたんだ」
虹雨はそれを聞いて由貴を見た。

「もしかしたら本当に救いを求めていた人間が死んで恨みに恨んで口裂け女に化けてもっと悪霊化したんじゃないか?」
「かもしれんな……厄介なことだ。にしてもあの力はすごい強力だった……俺らが退治せずあのまま市役所にいたらたいへんなことに……」
「まぁ取り壊されるからそのまま置いといてもよかったんやない?」
「でと新しい建物作る時に地鎮祭で成仏できんかったらたいへんやぞ」

二人はぶつぶつと考えていると、美守が言った。

「ねぇ、僕を運んできたのは二人?」
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