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みえる少年編
第六話
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「あなたは確か美帆子所長の元お……」
「あ、はい。美帆子さんの元夫の槻山です」
虹雨が言うよりも先に被されるかのように槻山が言う。
そう、この男・槻山は美帆子所長の元夫である。高校教師を退職し、しばらくは剣道指導員をしていたが、教師の経験を買われて人材不足になったこの市役所のこども課に採用されたのであった。
今回虹雨たちは槻山の元に行くようにいわれたのだが、もともと真津探偵事務所とも協力関係が昔からある。だから役所の人たちも美帆子のことはわかっているのはそういう理由なのである。
「ではあちらの個室で」
と案内された。
「御二方のご活躍は拝見させていただいております」
元教師ともあって口調がとても優しく丁寧さに由貴はもどかしく、そして緊張を感じる。
「所長から書類を預かっています」
「ありがとうございます。美帆子さんも忙しいんでしょうね。御二方みたいに心霊系のほうにも分野を広げて……すごいものですね」
「本当にその通りです。喫茶のプロデュースもしてますしね……彼女には不景気知らず。僕らもこちらで本格的にお世話になってからとても仕事は絶好調ですよ」
と虹雨は槻山に合わせて話し方も変える。由貴とは違ってすぐ人に合わせられる。
「なるほど……彼女の進めていきたい事業もこちらでも対応していきたいのですが。先日も色々とあって話し合いも進んでいるんですよ」
美帆子が先日の生き霊退治の件で暴力に悩む女性たちを救いたい、そういう手助けをしたいと言っていたが事務所だけでは難しく、市役所との連携もさらに密に取りたいとのことだった。
「我々も関われることが限られていますし、それを探偵事務所さんたちがやっていただき我々役所が橋渡しになればと」
「僕らがその行き先を失った人たちの最後の砦になれればと思っています」
と虹雨がいかにも探偵事務所の一員として話す姿を見て由貴は、自分もしっかりしなくてはと思うのであった。
「にしても高校の先生やめてまさか市役所で、なんて思わなかったですよね」
「教師としての経験が活かせるのではないでしょうか」
すこし槻山の顔が綻んだ。
「……そうかなぁ。僕は他人の子供さんを預かって育ててるけど自分の子供は育ててないからママさんたちの気持ちがわからないんですよね。まぁ自分の子育てしてるようでただの居候のような父親も多いですからねえ」
と彼が話している最中、また虹雨と由貴は何かを感じた。それはだんだん近づいてくる。
ドアがドン! と開いた。
「あ、ごめんなさい……」
小学生の男の子が立っていた。
「あ、はい。美帆子さんの元夫の槻山です」
虹雨が言うよりも先に被されるかのように槻山が言う。
そう、この男・槻山は美帆子所長の元夫である。高校教師を退職し、しばらくは剣道指導員をしていたが、教師の経験を買われて人材不足になったこの市役所のこども課に採用されたのであった。
今回虹雨たちは槻山の元に行くようにいわれたのだが、もともと真津探偵事務所とも協力関係が昔からある。だから役所の人たちも美帆子のことはわかっているのはそういう理由なのである。
「ではあちらの個室で」
と案内された。
「御二方のご活躍は拝見させていただいております」
元教師ともあって口調がとても優しく丁寧さに由貴はもどかしく、そして緊張を感じる。
「所長から書類を預かっています」
「ありがとうございます。美帆子さんも忙しいんでしょうね。御二方みたいに心霊系のほうにも分野を広げて……すごいものですね」
「本当にその通りです。喫茶のプロデュースもしてますしね……彼女には不景気知らず。僕らもこちらで本格的にお世話になってからとても仕事は絶好調ですよ」
と虹雨は槻山に合わせて話し方も変える。由貴とは違ってすぐ人に合わせられる。
「なるほど……彼女の進めていきたい事業もこちらでも対応していきたいのですが。先日も色々とあって話し合いも進んでいるんですよ」
美帆子が先日の生き霊退治の件で暴力に悩む女性たちを救いたい、そういう手助けをしたいと言っていたが事務所だけでは難しく、市役所との連携もさらに密に取りたいとのことだった。
「我々も関われることが限られていますし、それを探偵事務所さんたちがやっていただき我々役所が橋渡しになればと」
「僕らがその行き先を失った人たちの最後の砦になれればと思っています」
と虹雨がいかにも探偵事務所の一員として話す姿を見て由貴は、自分もしっかりしなくてはと思うのであった。
「にしても高校の先生やめてまさか市役所で、なんて思わなかったですよね」
「教師としての経験が活かせるのではないでしょうか」
すこし槻山の顔が綻んだ。
「……そうかなぁ。僕は他人の子供さんを預かって育ててるけど自分の子供は育ててないからママさんたちの気持ちがわからないんですよね。まぁ自分の子育てしてるようでただの居候のような父親も多いですからねえ」
と彼が話している最中、また虹雨と由貴は何かを感じた。それはだんだん近づいてくる。
ドアがドン! と開いた。
「あ、ごめんなさい……」
小学生の男の子が立っていた。
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