最高で最強なふたり

麻木香豆

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生き霊編

第六話

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「では、始めさせていただきます」

 コウは両手を構え、念仏のようなものを唱えながら何度も組み替える。近藤にとってステレオタイプのアニメや架空出来事のようなものにしか見えない。本当にこんなもので効果はあるのだろうか、疑うしかない。

「近藤さん、この生き霊はとてつもなく大きいものです。よくもまぁ十年近く……耐えたものです」
「そうだ、ずっと苦しめられていた、最初は怪我の後遺症かと思ったんだが……全くもってよくならん。病院もどれだけ変えたことか。どれだけ医療費がかかったことか、待たされたことか……」

「並ならぬ生き霊だ。女性、取り憑くだけでもかなりの恨みと体力がないと……心当たりはありますか」
「心当たり……ある、ある、ある……絶縁した妻の家族だ」
「そのご家族は女性?」

「妻の弟夫妻だ、あと妻の独身の妹。妻の母親の遺産を勝手に猫ババしやがって。こっちが話をしたらそんなことするわけない、こっちは介護をしとって見合った金額を訳あったと言っていた。んなわけないだろ、不公平だ、こっちも何度も通っていたんだ。一時間以上かかって面倒を見にいったんだぞ、しかも妻は母親から虐待を受けていたのにそれでも自分の母親だからと心配して……」

 コウは首を振った。

「女性1人です、白髪の女性です。1人でこれだけのパワーを使えるなんてありえないです」

 近藤は首を捻った。

「だったらあれか……近所の竹本っていうばあさんか。町役員を一切引き受けず……独身の息子が家に居るのに全くやろうともせず、こっちがなぜやらないと言ってから毎日のように嫌がらせして来て、少し車を外にだしただけで……警察に通報しやがって。本当に良い迷惑だったんだよ」

 コウは首を横に振る。

「そんなに婆さんでもなさそうだ。きっと恨みのパワーが強すぎて白髪になってしまったんでしょう、他に心当たりは」
「そんなの知らんわ、さっさと退治してくれ」
「いや、正体がわかった方が……あなたもスッキリするんじゃないですか」

 近藤は机を叩いた。隣にいた妻は怯え震えた。それにはっとした近藤は我に返った。

「……すまん、でもいい加減にしてくれ。なんの生き霊がわしらを苦しめているんだ……ずっと苦しんでいたのに!!! 妻もこんな……こんなのになってしまった」

 と妻を指差す近藤。縮こまり、嗚咽を漏らしながら涙かよだれか何かわからないものを流し続ける。もはや老人でなくて人間でもない何にもない塊にしかすぎない。

「その生き霊も言っておりますよ……わたしも長い間苦しんできた、どこに助けを求めても誰も助けてくれなかった、たらい回しにされていたって」

 コウがそういうが近藤は見当がつかないが……。

「……もしかしたら……もしかして……」

 とその時だった。


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