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番外編
虹雨と焼き鳥屋台2
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それからとある夜。
「父がここの道で亡くなったんですね、ようやく見つかりました」
店主は
「数週間かかったな。ここは道がたくさんあってお父さんの幽霊を探すのは大変でしたね」
焼き鳥屋台に座っていたもう1人の客は黒い大きなコートを脱いでその下には上下黒スーツを着てブラックグローブをはめていている。そしてサングラスをクイっと上げた。
「父にも十年越しにようやく美味しいって言葉をもらえて良かったです」
「そやな、喜んでたで」
店主は十年前に自分の誕生日の夜に行方不明になっていた父は遠くの川で見つかった。なかなか捜査も進まず、犯人も捕まらなかった。
大人になった息子はやがて自分で生計を立てるために焼き鳥屋台を出すことになったのだが犯人探しと父親の最後の姿、そして父親に自分の焼き鳥が美味しいって言って欲しいと思っていた頃に、ネットで話題になっていた霊媒師コウという怪しい男の存在を知った。
いろんな怪奇現象を独自の視点で暴いたり、みえはしないが幽霊と対話して除霊するというもので、気になって連絡を取ってから話がトントンと進んで父親の帰り道であろう通りを一箇所ずつ探し出して屋台を出店していたのであった。
気が遠くなるものであったがようやく父親の霊と遭遇した。幽霊になった父親は息子の焼き鳥をむしゃむしゃ泣きながら食べてあの夜のことを思い出しながら語った。
轢いた男は代議士の息子、自動車整備工の友人もいた、柔道経験者もいた。それをらをコウは知り合いの刑事に情報を渡し、先日当時の代議士の息子で現在市長と、自動車修理店の店長と警察官の3人が捕まった。
「本当はあの時に成仏させたかったけどようやく犯人捕まったってことで報告するために待ってたで」
「すいません、僕のわがままで」
「そやで……まぁ霊界の方では早よせんかって言われてるが多めに見たるわ」
コウの前にはたくさんの焼き鳥。彼は焼き鳥が大好物なのだ。ハフハフ言いながら食べ尽くす。
「ありがとうございます。どうしても最後に一緒に酒を飲みたくて」
息子も酒を飲める歳になった。子供の頃に母親を亡くして親戚頼らずに仕事をバリバリして男手一つで自分を育ててくれた父。
大きくなったらビールを一緒に飲みたいなと子供の頃言われていたが叶わなかった。
事件解決のお祝いもだが、親子男2人の約束を……。
遠くから自転車の音がする。今日は20歳になった息子の誕生日、少し日が暮れる前に現れた父親、あの頃も息子の誕生日のために早く帰えろうとしていた。
「おう、焼き鳥食べにきたぞ。あとだし巻き卵もな」
店主は目を潤ませた。
「はい、ビールも一緒に飲みましょう」
店主と男がビールを一緒に飲んでお祝いしている横目で霊媒師のコウは2人にバレないように泣きながら焼き鳥を食べていた。
「う、う、う、うメェええええええ」
クールを売りにしているし、一々情を持ってはいけないとはわかってはいるが無理なコウであった。
「父がここの道で亡くなったんですね、ようやく見つかりました」
店主は
「数週間かかったな。ここは道がたくさんあってお父さんの幽霊を探すのは大変でしたね」
焼き鳥屋台に座っていたもう1人の客は黒い大きなコートを脱いでその下には上下黒スーツを着てブラックグローブをはめていている。そしてサングラスをクイっと上げた。
「父にも十年越しにようやく美味しいって言葉をもらえて良かったです」
「そやな、喜んでたで」
店主は十年前に自分の誕生日の夜に行方不明になっていた父は遠くの川で見つかった。なかなか捜査も進まず、犯人も捕まらなかった。
大人になった息子はやがて自分で生計を立てるために焼き鳥屋台を出すことになったのだが犯人探しと父親の最後の姿、そして父親に自分の焼き鳥が美味しいって言って欲しいと思っていた頃に、ネットで話題になっていた霊媒師コウという怪しい男の存在を知った。
いろんな怪奇現象を独自の視点で暴いたり、みえはしないが幽霊と対話して除霊するというもので、気になって連絡を取ってから話がトントンと進んで父親の帰り道であろう通りを一箇所ずつ探し出して屋台を出店していたのであった。
気が遠くなるものであったがようやく父親の霊と遭遇した。幽霊になった父親は息子の焼き鳥をむしゃむしゃ泣きながら食べてあの夜のことを思い出しながら語った。
轢いた男は代議士の息子、自動車整備工の友人もいた、柔道経験者もいた。それをらをコウは知り合いの刑事に情報を渡し、先日当時の代議士の息子で現在市長と、自動車修理店の店長と警察官の3人が捕まった。
「本当はあの時に成仏させたかったけどようやく犯人捕まったってことで報告するために待ってたで」
「すいません、僕のわがままで」
「そやで……まぁ霊界の方では早よせんかって言われてるが多めに見たるわ」
コウの前にはたくさんの焼き鳥。彼は焼き鳥が大好物なのだ。ハフハフ言いながら食べ尽くす。
「ありがとうございます。どうしても最後に一緒に酒を飲みたくて」
息子も酒を飲める歳になった。子供の頃に母親を亡くして親戚頼らずに仕事をバリバリして男手一つで自分を育ててくれた父。
大きくなったらビールを一緒に飲みたいなと子供の頃言われていたが叶わなかった。
事件解決のお祝いもだが、親子男2人の約束を……。
遠くから自転車の音がする。今日は20歳になった息子の誕生日、少し日が暮れる前に現れた父親、あの頃も息子の誕生日のために早く帰えろうとしていた。
「おう、焼き鳥食べにきたぞ。あとだし巻き卵もな」
店主は目を潤ませた。
「はい、ビールも一緒に飲みましょう」
店主と男がビールを一緒に飲んでお祝いしている横目で霊媒師のコウは2人にバレないように泣きながら焼き鳥を食べていた。
「う、う、う、うメェええええええ」
クールを売りにしているし、一々情を持ってはいけないとはわかってはいるが無理なコウであった。
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