最高で最強なふたり

麻木香豆

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ようこそ、さっそくですが

第七話

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 朝、依頼先に行く前に天狗様のいる山の下の寺に行く。2人の坊主たちが朝の掃除をしていた。
 そのうちの一人が虹雨と由貴に気づいてすぐ倉田を呼びに行った。

「おやおや、朝も早いですな。お互い」
「めっちゃ眠い」

 虹雨はサングラスをとって目を擦った。昨日のミツオの口から出た女王蜂のことを口にすると苦笑いしていた倉田の顔がハッと変わった。

「まだ幼虫が残っていたのか……天狗様が捨て身で成敗したのだが」
「……まだ社会における女性への待遇が良くならない、とのことでしようか。彼女たちを救うためにという名目で女性たちの恨みつらみを吸い取りそれを養分としてまだ生き残ってたとか」

 女王蜂。

 〇〇県の山奥にある女性だけが住むとある施設。
 仕事や家庭での辛さ、苦しみに耐えきれず逃げ場がない人たちを救い出し共に生活しようという駆け込み寺的なものとして過去に存在していた。

 しかし救いとは裏腹に逃げてきた女性たちの恨み孕みを吸い取り、大きな憎悪を生み出して生き霊などになり人間界に恐怖を与え続けてきた。
 関係ない人たちまでもを巻き込み神隠し、事故死、病死など望まない結果を招き挙げ句の果てにはそんな罪深いことをしてしまったと追い込まれた女性たちは精神を壊していく。

 そしてその精神を壊された女性たちもまた恨みつらみを増長させてまたしも養分となり女王蜂のパワーとして吸い取られる。ボロボロになるまで使い果たされたら終わり。

 その施設には多数の大人の女性たちの遺体があった。

「あれは地獄だったな。直接は僕ら見とらんけど倉田さんげっそりやったわ」
「流石にあの倉田さんは子供の俺らが見たらあかん、て判断させてくれたおかげでトラウマにならんかったしな……」
「女性たちの中に子供連れてた人達おったけど子供は助かったのが救いだわ」

 倉田はふと二人の会話を遮った。

「ちょっとまて」
「なんすか」
「……やはりその子供たちは救うべきではなかった」
「まさか殺そうとしてた? 幽霊や怨念ではない、子供たちを」

 倉田の足元に無数の猫たちが板の間にか群がっていた。そのうちの一匹を倉田が掬い上げ頬擦りする。

「母親を殺された、亡くした恨み……それが残っていたのではないだろうか」

 と、倉田が言うと虹雨、由貴は声を合わせてあああ……と声がつい出てしまった。

 にゃー

 とあたりは猫だらけ。猫捨寺と呼ばれているこの寺。しかしここまで猫が集まる時は何か起きる、そういう時だと虹雨は察した。
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