最高で最強なふたり

麻木香豆

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ようこそ、さっそくですが

第六話

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 消えた後、虹雨はこの家の管理している不動産に連絡、その間に由貴は早速編集作業をしている。

 電話を終えた虹雨はため息をついている。

「どした、やっぱ曰く付きだったか」
「……」

 虹雨はサッシの鍵の辺りを見る。何箇所も。そしてようやくわかった。

「一箇所だけ鍵の種類が違った」
「違った?」
 由貴は近くのサッシの鍵を見るが……。
「あのベランダのところだけここ最近、しかも本当にごく最近鍵を変えられている。ここは昭和に造られリフォームはされているものの、サッシとかは綺麗に掃除すれば使えた……だがあそこはサッシごと全部ここ最近変えられている」
「確かにあそこだけ綺麗やな」
「この家、一年近く空き家だったらしいがその間に人に入られている」
「え、それ聞いてない。事故物件扱いにならないんか」

 虹雨はうなずいた。

「管理人いわく、人がここのガラスを割って鍵を開けて一晩くらい過ごした形跡があると。ゴミとか落ちてたらしい」
「まー空き家とかは空き巣や侵入者とかあるって聞くけど誰も住んでなくてライフライン止まってるのによく入るよな」
「寒さ凌ぎとか、曰く付きのところだっなら肝試し、とかあるがここは事故物件ではないから寒さ凌ぎとか……子供たちの悪戯、犯罪やらあとは男女のあれやらこれやら」
 虹雨が言葉を濁す。

「男女のあれやらこれやらってさ、ラブホ目的で忍び込むってやつか。虹雨、濁さへんでもええんやで」
「……ん、まぁ。でな、そのあの二人が事故の二日前から大雨だった。そうとなると管理人さんが毎日掃除するにもいけなかった。ここに二人が現れたのも事故起こす直前までこの家で待機していたんじゃいかと。ネットニュース見てナナさんは数日行方不明の後に事故で見つかったようだし」
「二人はここでやったんかな」
 虹雨は首を傾げた。由貴は覗き込む。
「こういう話は苦手か、まぁ昔からやけどな」
「うん。にしてもさ……まだあいつらはいたんやな」

 由貴もうなずいた。

 そう、女王蜂。

 二人にとってはこの名前は恐ろしい名前である。だが多くのものが2人が子供の頃霊退治をして活躍していたのを忘れたのと同様に忘れ去られている。

 女王蜂によって悲惨な事件が起きたことも。

「あの時に天狗様が身を投げてまで破滅したはずなのに……」
「だよな。天狗様も奇跡的に回復したけど……しぶといやつやな」
「明日仕事の前に寺に行って報告するか。ってそういえば仕事の内容確認したか?」 
「しとらん」

 やれやれと虹雨が依頼の紙を封筒から出した。

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